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株式会社マネジメントオフィスいまむら

今年2月に国会に提出されるAI法案に関する情報まとめ

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

今年2月の通常国会で、AI法案が提出される見込みです。様々な報道がなされていますが、報道内容や現在パブコメ中の「中間とりまとめ案」(AI制度研究会)に基づいて、法で定められる見込みのものについてまとめました。なお国会提出前の情報ですので、内容は変更となる可能性があります。ご注意ください。

政府の基本的な考え方は「ゆるい規制でやりたい」

政府は、基本的には法律で縛るのではなく、法定拘束力のないガイドラインと、既存法によってAI開発者やAI提供者、AI利用者を管理したいと思っています。というのも、あまり厳しく法律で縛ると、開発者たちの間では「日本ではAIの法律が厳しいので、他の国で開発しよう」というスタンスになり、日本がAI開発で遅れを取ることを恐れているからですね。昨年、罰則付きの法律が施行されたEUでは、実際にそのようなこと(開発者のEU離れ)が起きつつあります。

ところが世界各国の方向性は、どちらかというと「ある程度は政府が厳しく規制せざるを得ないのではないか」というスタンスです。アメリカも日本と同様に「ゆるい規制派」だったのですが、2023年にバイデン政権が「AI の安全な開発及び利用に関する大統領令」というものを発して、政府が規制を強める方向性を打ち出しました。また、「中間とりまとめ案」(AI制度研究会)の中でも、政府に規制を求める声が多数あったことが示されています。こうしたことが背景となり、日本でもAIに特化した法律を定めて、ある程度の法規制をかけていこうということになりました。法規制を明確に定めることは、AIに関連する事業者等に対し、ガイドラインの遵守などの実効性を高める効果があります。

(余談ですが、トランプ政権に代わったその日に、「AI の安全な開発及び利用に関する大統領令」は撤回されてしまいました)

法では何が定められるのか①政府による状況把握や調査

ではそんなAI法案では、どういうことが定められるのでしょうか。一つは政府による状況等の把握です。

AIに関する事故が起きた場合、もしくは事故が起きそうだと思われる場合に、政府が事業者の状況を把握し、その結果を踏まえて関係者に指導や助言を行ったり、国民に周知をすることを検討しています。例えばですが、車の自動運転AIに重大な欠陥が見つかり、事故の可能性が高いとわかった時は、自動運転AIの開発者や自動車メーカーに対して、政府が状況調査や原因究明を行います。そして自動運転AIによって引き起こされる事故の再発防止や予防処置を国が命じ、そうした対処をとったことを国民に周知をするというイメージですかね。この時、国がどういう調査や状況把握をするのかはわかりませんが、その根拠となることが法案に盛り込まれるのだろうと想像出来ます。

また、事故などの調査以外にも、政府が事業者の状況を把握して、それを踏まえてサポートをするという、一般的な状況把握や調査も含まれるようです。

法では何が定められるのか②AI戦略本部の設置

報道や、AI制度研究会の中間とりまとめ案から読み取れるのは、AI戦略本部の設置です。これは「司令塔的な役割」と報じられているのですが、その具体的な役割がよくわかりません。中間取りまとめ案には「AIの司令塔機能の強化や、司令塔による関係行政機関に対し協力を求めることができる等の権限」と書いていますが、どういうシチュエーションで何をするのかがよくわからないのが正直なところです。

よくわからないので憶測に過ぎませんが、EU AI規制法におけるAIオフィスの日本版のようなイメージなのかもしれません。EUのAIオフィスは、加盟国間の連携の調整をしたり、必要なガイドラインやツールを提供して、事業者や加盟国がAI法に準拠できるように支援したり、AIシステムの運用に問題がある場合、その調査を行い、事業者に是正を求めるような役割があります。そういう役割や機能を担うのかもしれませんが、今のところ詳細は不明です。

罰則や行政命令はあるのか?

罰則や改善命令などの措置は盛り込まないと報じられていますね。ただし、事故等の調査結果を踏まえ、政府が事業者に直接指導や助言した上で、事業者名を公表できることが法で定められる予定だそうです。

法的拘束力のある法律を作るものの、罰則や命令の権限はないとのことです。規制の実効性がどのようになるかは、今後の報道等で確認したいポイントです。

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