おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ、今回は「悪臭防止法」を解説します。工場や飲食店などの事業活動で発生する悪臭を規制する法律です。悪臭防止法において、事業者が守るべき義務は何でしょうか?
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悪臭防止法の概要
では悪臭防止法の概要を見ていきましょう。
まずは法の目的です。一言でいうと「においによる環境問題を防ぐための法律」です。工場や事業所が出すにおいが、周囲の住民に迷惑をかけないようにするために作られました。
この法律の対象は、「規制地域内で悪臭を発生させるすべての事業所」です。特定の業種に限らず、においを出す可能性のある事業所全般が対象になります。また、他の環境法令のように「特定の機械や設備を導入する際に事前に届け出が必要」という仕組みはありません。ただし、地方自治体の条例によって届出が求められることがあるため、自社が属する自治体のホームページなどを必ず確認してください。
悪臭の規制には2つの基準があり、特定悪臭物質(22種類)の排出濃度と臭気指数が用いられます。これらの基準については、後のスライドで詳しく解説します。どちらの基準が適用されるかは自治体によって異なり、都道府県や市町村ごとに具体的な基準や数値が決められています。詳細は自治体のホームページを確認するようにしましょう。
規制基準を超えた悪臭を発生させ、行政から改善命令を受けたにもかかわらず従わなかった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
「物質濃度規制」と「臭気指数規制」
悪臭防止法には、においを規制する方法が大きく2つあります。「物質濃度規制」と「臭気指数規制」です。どちらを採用するかは自治体ごとに異なります。
まず、「物質濃度規制」です。これは、アンモニアや硫化水素など、法律で決められた22物質の排出濃度を測定し、基準を超えないようにする方法です。この規制では、機器分析法を使って、においの成分を科学的に測定します。
一方、「臭気指数規制」は、特定の物質に限らず、全体的なにおいの強さで規制を行う方法です。この規制では、嗅覚測定法という手法を使い、人の嗅覚を基準ににおいの強さを数値化します。これにより、未規制の物質や複数の物質が混ざった複合臭も、規制の対象になります。
特に都市部では、飲食店などの悪臭に関する苦情が増えていることもあり、臭気指数規制を採用する自治体が増えています。ただし、全国的にみると、規制がない自治体も、3割弱は存在します。
次回は物質濃度規制と臭気指数規制についてもう少し詳しく説明をするとともに、企業が守るべき義務についても解説をします。