おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
日経 xTECHで『IT導入補助金が400億円余る、経産省の誤算』という記事が掲載されました。もともと500億円の予算で、13万社以上に交付することを目指していた今年度(平成29年度補正)のIT導入補助金ですが、大幅に予算が余ることが確実視されています。
『IT導入補助金が400億円余る、経産省の誤算』
記事は下記のリンクから読むことができます。
この記事は有料記事であり、途中までしか読めないのですが、今年の8月の時点で予算の消化率が2割程度と書かれています。当社の過去のブログでも分析をしましたが、1次公募と2次公募の採択事業者数が2万社強です。1社あたり最大50万円の補助金交付額ですから、掛け算すると100億円となり、予算総額の2割程度となりますね。今行われている3次公募もありますし、事務局の運営経費も必要ですから、最終的には150億円くらいは消化するのではないかと思われます。一方で今年8月29日、中部経済産業局の担当者は「IT導入補助金の予算は、まだ半分くらい残っている」と、愛知県中小企業診断士協会が主催した理論政策更新研修の場で発言をしていました。
いずれにせよ、500億円の予算を完全消化できないのは確実でしょう。
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IT導入補助金はなぜ普及しなかったのか?
もともと本事業のために確保された予算は500億円ですが、昨年度は100億円の予算でした。今年は、全国で約13万社に交付することを目的として、予算が5倍に増えました。この背景としては、政府が推し進める「生産性革命」への対応があります。広く補助金を交付し、中小企業の生産性向上をIT投資の側面から支援したいという意図だったのでしょう。しかしふたを開けてみると、予算は不消化な上、13万社どころか2~3万社程度への交付にとどまりそうです。当初の目的が達成できなかったという点では、今年度のIT導入補助金は、失敗だったと言わざるを得ません。
どうしてIT導入補助金は普及しなかったのでしょう。それは中小企業から見た際の「費用対効果」にあると思います。ありていに言えば「手続きの手間に比べると、50万円の補助金じゃ少ないな」という印象を持たれたのでしょう。実際、僕の取引先の中小企業の社長も、生産管理ソフトの導入にあたり補助金活用も検討していたのですが、「50万円くらいなら、補助金をもらわずに、ふつうに値引き交渉すれば実現できそうだしね」と話していました。
IT導入補助金に限りませんが、経産省の補助金は手続きが複雑で面倒です。IT導入補助金にもいろいろなルールがありますが、3次公募に当たって大幅な要件緩和(報告義務の緩和等)に踏み切ったことからも、行政側としても手続きの煩雑さが普及を妨げている要因であることは理解をしているのかもしれません。
補助金額が50万円と少ないということは、成功報酬で儲けようとたくらむ補助金コンサルは旨味を感じないので、この市場に参入しません。そうすると事務処理を肩代わりする事業者も少なくなります。ITベンダーで事務処理まで代行するというところは私もあまり聞きません。結局は企業が自身で複雑な手続きに取り組まざるを得ません。この人手不足の時代、わずか50万円のために、3年間の縛りのある事業に足を突っ込んでまでやり遂げようという中小企業がどの程度あるかというという話になります。こうなると、ITベンダー自身も、複雑な手続きをしてまでも、自らが登録事業者になるため動機を失うという悪循環にもなります。
予算が大幅に余るとして、今後のIT導入補助金はどうなるか
どうやら予算が大幅に余りそうなIT導入補助金ですが、今後はどうなるでしょうか。まず、国の予算は単年度会計が原則なので、そのまま翌年に持ち越すということはありません。そもそも来年度の当初予算もまだ(10月5日の時点では)概算要求の時点であり、審議さえされていませんからね。今後は会計検査などで問題になるでしょうし、次年度の国会の予算審議においても、野党などから「予算見積もりが甘く、制度に問題があるのではないか?」という追及を受ける可能性もあります。野党だけではなく、与党からも追及をうけてもおかしくないほどの執行率の低さだと思います。
そのように政策そのものが問題視される可能性は否定できず、おそらく次年度以降は予算の大幅な減額の可能性も含めて、制度が大きく見直されると思われます。場合によっては、この施策は今年度をもって廃止ということも、絶対にないとは言えないでしょう。
これは個人的な考えですが、補助金を交付するというよりも、ITソフトウェアの購入に対して相当額の税額控除を認めるなど、税制優遇措置を手厚くするほうが、中小企業にとっては使い勝手が良いのではないかと思います。報告義務もいりませんし、税務申告自体は税理士さんが行ってくれますからね。「補助金屋のお前が言うな」と言われそうですが、複雑であり数々の義務が生じる現行の補助金制度の在り方が中小企業のためになっているとは思えません。慢性的な人手不足であり、大手企業ほどの事務処理能力のない中小企業の生産性を本当に高めたいと思うならば、行政側はもっとシンプルな制度を構築すべきです。