おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
11月19日、中小企業庁は先端設備等導入計画の認定件数が9月30日現在で14,272件となったことを発表しました。施策の運用開始から4ヶ月ほどで14,272件とは、2016年度から運用を開始した経営力向上計画を上回るペースです。少し分析をしたいと思います。
中小企業庁のプレスリリース
本件に関する中小企業庁のプレスリリースは下記のリンクから確認できます。肝心な部分も引用したいと思います。
平成30年6月6日に施行された「生産性向上特別措置法」に基づき、中小企業者が策定する「先端設備等導入計画」について、固定資産税をゼロとする措置を実現した自治体からの報告をとりまとめたところ、平成30年9月30日時点で、1,566自治体で、14,272件を認定しています。認定を受けた計画に盛り込まれた設備等の数量は合計で37,133台、約3,562億円の設備投資が見込まれます。
なお、平成30年10月31日時点で、条例制定及び基本計画の策定により、固定資産税ゼロの措置を実現した自治体は1,582になりました。
経営力向上計画と比べてもかなりのハイペース
先端設備等導入計画と似た施策に経営力向上計画というものがあります。これも先端設備等導入計画同様、一定の条件を満たす設備の導入について、固定資産税や法人税等の優遇措置などが受けられるという施策です。経営力向上計画は2016年7月から運用を開始しており、2018年9月末の時点では71,195者が認定されています。
経営力向上計画の認定数の推移を見てみましょう。(いくつかデータの欠落があります。ご容赦ください?)
経営力向上計画の運用開始4ヶ月の認定状況と、今回は発表された先端設備等導入計画の認定状況を比較しましょう。先端設備等導入計画の月別・都道府県別の認定状況は、中小企業庁のホームページから確認できます。
経営力向上計画と先端設備等導入計画それぞれについて、運用開始から4ヶ月間の認定件数(累積)を下記の表にまとめてみました。
経営力向上計画の認定スピードをはるかに上回るハイペースですね。経営力向上計画の場合、累積認定件数が10,000件を超えるのに6ヶ月かかっていますが、先端設備等導入計画はほぼその半分の期間で達成していることになります。
先端設備等導入計画はなぜこれほどまでにハイペースで認定されているか
先端設備等導入計画はなぜこれほどまでにハイペースで認定されているのでしょうか。もちろん、先端設備等導入計画のメリットである固定資産税の減免が魅力的だからというのはあるでしょうが、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などと抱き合わせで、補助率アップや加点要素となっていたことがかなり大きいと思います。特にものづくり補助金(1次公募)の場合、交付決定をうける7~8月までに先端設備等導入計画の認定をとる必要があったため、8月末までに10,000件弱の認定がおりるというロケットスタートになったものだと推察します。
ここからは個人的な見解になりますが、経済産業省・中小企業庁がこれに味をしめて、新施策の普及のために抱き合わせをする傾向が強まることを危惧します。もともと政治家や官僚のやり方として「Aという施策を普及させるために、より認知度の高いBという施策と抱き合わせる」ということをよくやります。経営力向上計画も運用当初からものづくり補助金の加点要素になっていましたし、最近では「マイナンバーカード所持者限定で消費増税の負担軽減」ということを自民党が検討したりしています。
こういうやり方は、必ずしもユーザーフレンドリーではありません。この度、先端設備等導入計画がものづくり補助金の補助率アップ・加点要素に組み込まれたことも、ものづくり補助金の公募期間には情報が少なくて、そのリスクの見積もりに企業側は苦慮しました。また、自治体によって先端設備等導入計画の運用開始日がバラバラであり、補助金の交付決定にかかる事務処理にも時間がかかったケースが見られました。施策の認知度を高めたいという行政側の意図は理解はできますが、そのために企業側に不安や負担をかけるというのは本末転倒だと思います。
先端設備等導入計画の立ち上がりが好調だったことを受けて、このような抱き合わせ方式が省庁によって積極的にとられることで、企業側に同じような不安や負担がないことを祈るばかりです。