ものづくり経営革新等支援機関

2023年事業再構築補助金についての続報(1)

https://imamura-net.com

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

12月14日、中小企業庁は「事業再構築補助⾦令和4年度第⼆次補正予算の概要」という資料を公開しました。来年(2023年)からの事業再構築補助金に関する詳細がこの資料に記されています。2回にわたって資料を完全解説します。

中小企業庁資料「事業再構築補助⾦令和4年度第⼆次補正予算の概要」はこちら

2023年事業再構築補助金 PR資料(再掲)(P1)

公開された資料の1ページ目は、11月10日に公開された経産省の『経済産業省関係令和4年度第2次補正予算案の事業概要(PR資料)』という資料の再掲です。

このスライドは2023年事業再構築補助金のおおざっぱな概略を示したものです。この資料の中でおさえておきたいポイントとしては、

  1. 現行(2022年)の事業再構築補助金から、事業目的が若干変更に(コロナ対策だけではなく、コロナ+物価高騰対策+賃上げが目的に)
  2. 申請類型(申込みプラン)が再編成

という2点です。申請類型(申込みプラン)の再編成については、この次のスライドで解説をします。

2023年事業再構築補助金「事業再構築補助金(令和4年度第⼆次補正予算)の全体像」(P2)

2023年の事業再構築補助金の申請類型(申込みプラン)が示されています。それぞれの申込みプランの詳細はこの後で説明をしますが、全体的なコメントしては、2023年の事業再構築補助金ではおおまかに、業況が厳しい事業者向けのプラン(最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠)と、成長分野への軸足移行や衰退産業からの撤退を目的としたプランに分けられるようです。「コロナや物価高の影響を受けている企業を救済する」という立ち位置から、「役所が期待する分野にチャレンジする企業を支援する」という立ち位置へと変わろうとしている印象があります。

それぞれの申請類型(申込みプラン)の詳細は、今回の2回にわたる記事の中で解説をします。

2023年事業再構築補助金「事業再構築補助金の見直し・拡充」(P3)

続いてのスライドは、2023年以降の事業再構築補助金が、現行の制度とどう変わるかとい点について触れています。主な変更点は7点あるようです。

まず「1.成長枠の創設」ですが、成長分野へのチャレンジを⽀援する類型です。対象となる業種・業態は、事務局が指定をするようです。また売上高減少要件も撤廃されるようですね。

「2.グリーン成長枠の拡充」では、要件を緩和した類型「エントリー」が創設されます。ただし要件が緩和される分、エントリーでは補助上限額はスタンダードよりも下げられます。(それでも上限が8,000万円ですが)

「3.⼤幅賃上げ・規模拡⼤へのインセンティブ」は、⼤胆な賃上げや、規模の拡大に取り組む場合、補助率・補助上限が引き上げられます。

「4.産業構造転換枠の創設」では、市場規模の縮⼩により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を重点的に⽀援するようです。

「5.サプライチェーン強靱化枠の創設」ですが、海外で製造する製品・部品等の国内回帰を進める製造業向けの支援です。これも対象となる業種・業態は、事務局が指定をするようです。

「6.業況が厳しい事業者への⽀援」は、コロナや物価高の影響を受けている企業への支援です。

最後は「7.⼀部申請類型における複数回採択」です。これまでの事業再構築補助金では、グリーン成長枠に限って2回めの申請が可能でした。その2回めのチャレンジが、産業構造転換枠とサプライチェーン強靱化枠でも可能になるようです。

2023年事業再構築補助金「1.成⻑枠(旧通常枠)の創設」(P4~P5)

これまで「通常枠」と呼ばれていた申込みプランが、新たに「成長枠」に衣替えをします。いわゆる「成長分野」(例えばバイオとか半導体とかロボット等)を新規進出分野とする場合に限定した申請類型だと思われます。売上減少要件が撤廃される代わりに、①付加価値額が年率平均4%以上増加すること、②市場規模が10%以上拡⼤する業種・業態であること(基本的には事務局が指定した業種・業態)、③事業終了後3~5年で給与⽀給総額を年率平均2%以上増加させること、の3つを新たに満たさなければなりません。給与支給総額の向上についての要件がありますので、毎年賃金台帳等の提出が求められる上、最終的に賃上げが未達であることが判明したら、補助金の返還が求められる可能性が高いです。

基本的には事務局が指定した業種・業態が対象です。指定された業種・業態でなくても、自らデータを提出し、認められた場合には、対象となり得るらしいです。こうした例外はあるものの、そもそも役所が「これは成長分野ではないな」と除外したものを再度認めさせるようなデータを出さないといけないわけですから、これはかなりハードルが高いと言えるでしょう。都合の良いデータだけを出しても、認められる可能性は低いでしょう。

そしてこちらが成長枠の補助上限額、補助率です。旧通常枠と比べると、補助上限額も補助率も低下しています。上乗せしてほしければ、大規模な賃上げをするか、中小企業を卒業するかしなさいということなんだろうと思いますね。

2023年事業再構築補助金「2.グリーン成⻑枠の拡充」(P6~P7)

グリーン成長枠の拡充についてのスライドです。現行のグリーン成長枠は「スタンダード」という呼び名になります。ただ「スタンダード」も昨年同様の要件ではなく、新たに給与支給総額年率平均2%以上増加という要件がつきます。

「エントリー」は、「スタンダード」の要件のうち、研究開発期間と教育訓練の対象従業員数が若干緩和をされます。しかし「スタンダード」と同様、給与支給総額年率平均2%以上増加を満たさないといけません。賃上げが未達の場合は、補助金の返還が求められる可能性が高いです。

なお、どちらの申込みプランでも、グリーン成⻑戦略「実⾏計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組でないと対象にはなりません。

そしてこちらがグリーン成長枠の補助上限額、補助率です。「スタンダード」は、従来のグリーン成長枠の補助率・補助額と変わりがありませんね。グリーン成長枠もまた、大規模な賃上げや中小企業を卒業することで、補助額・補助率の上乗せの対象になっています。

2023年事業再構築補助金「3.⼤幅賃上げ・規模拡⼤へのインセンティブ」(P8~P9)

成長枠・グリーン成長枠での上乗せ要件であった大規模賃上げと規模拡大についての要件が、ここで詳しく説明されています。

まずは卒業促進枠ですが、中小企業基本法における中小企業の定義を超えるくらいの規模にまで成長することをコミットした場合は、補助率と補助額を上乗せするという要件です。ただし左下の記述を見ると、要件達成後に報告を提出して、認められたらようやく補助金が支払われるようです(これはたぶん、上乗せ分のことを言っているのだと思われます)。

賃上げについてのインセンティブの説明ですが、賃上げインセンティブは2種類あるようです。まずは大規模賃金引上促進枠ですが、これは要件を満たせば補助金額を3,000万円上乗せするというものです。大規模賃金引上促進枠の要件は、事業場内最低賃金を年額45円以上引き上げと、従業員数を年率平均1.5%以上増員の2つをどちらも満たす必要があります。この上乗せも、要件達成後に報告を提出して、認められたらようやく上乗せ分の補助金が支払われる仕組みのようです。

もう一つのインセンティブは、賃上げによる補助率の引き上げです。これも要件が2つあって、給与⽀給総額を年平均6%増加して、さらに事業場内最低賃⾦を年額45円以上の⽔準で引上げた場合にのみ、補助率が1/2から2/3にアップするようです。赤字のところで「事業終了後3〜5年で給与⽀給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合、差額分(補助率1/6分)の返還を求めます。」と書いていますが、これはちょっと不可解ですね。もともと年率平均2%向上は、成長枠やグリーン成長枠の必須要件のはずです。上乗せ分は6%の増加なので、上乗せ分の差額を返還するのであれば、年率平均6%増加できなかったときが対象でないと筋が通らないように思えます。

「4.産業構造転換枠の創設」以降の資料は、明日解説します。

  • B!

最近の人気記事

1

「事業再構築補助金」は制度開始から3年目を迎えました。多くの中小企業に知られるようになった事業再構築補助金ですが、このページでは2023年の制度の全容を10分でわかるようにまとめて解説します。 「事業 ...

2

「ものづくり補助金」は制度開始から11年目を迎えました。中小企業政策で最もよく知られているといってもいい「ものづくり補助金」ですが、このページでは2023年の制度の全容を10分でわかるようにまとめて解 ...

3

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 先日、納税地の所轄税務署から「消費税課税事業者届出書の提出について」という文書がきました。個人事業主は、ある期間の課税売上高が1,00 ...