おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
そろそろ今年の補助金の申請書の構想設計に着手しようかとお考えの方も多いと思います。しかし、どう書けばいいかって悩ましいですよね。今日は申請書を書く上での着眼点というかネタの一つとして「ボトルネックの解消」というものに焦点を当ててみたいと思います。
ボトルネックとは何か?
ボトルネックとは、一連の流れが最も滞る部分であり、その流れの最大のアウトプットを決定する要素、とでも言いましょうか。でも言葉で書くとややこしくてイメージ湧きにくいですよね?
ボトルネックとは、日本語に訳すと「ビンの首」のことです。わかりやすいように砂時計で例えてみましょう。
砂時計の中央、ガラスがくびれているところがボトルネックです。砂時計にはたくさん砂が入っていますが、ボトルネックの大きさの分しか、砂が下に落ちてきません。砂が落ちきるまで3分になるように、ここで落ちてくる砂の量を調整しているのですね。ボトルネックがもっと太ければ、もっと早く砂は下に落ちきるはずです。
このように、どのくらいのアウトプット(ここでいうと落ちる砂の量)になるのかは、ボトルネックの大きさによっています。
製造現場に例えるとどうか
これを製造現場に置き換えてみましょう。例えば下図のように、工程A、B、Cという3工程でものづくりをしている製造業があるとします。それぞれの工程の能力(1日に何個製造できるか)も、下図に書かれている通りです。これを見ると、工程Bの能力が最も低いですね。したがってこの場合、工程Bがボトルネックとなります。
工程Aや工程Cがフル稼働したとしても、この工場全体で完成させられるのは1日40個が限界です。特に工程Aはボトルネックを考えずに頑張りすぎると、ボトルネックである工程Bの前に大きな仕掛(=在庫)を残すことになります。これは経営的にもよろしくありません。
一方、お客さんが「1日60個納品してよ」と要望したらどうなるでしょうか?ボトルネック以上に生産ができないのですから、無理に残業や休日出勤で工程Bを動かすことになるでしょうし、場合によっては工程Bの能力不足を、外注でカバーしようということにもあるかもしれません。しかし残業や休日出勤はコストアップの要因になりますし(適正利益が確保しにくくなる)、外注に頼ると、外注起因の納期遅れや品質トラブルによる、かえって自社の工程が混乱する場合もあります。
補助金の申請上のテクニックとしての「ボトルネックの解消」
このようなボトルネックを解消するために先端設備を導入するのだ、というストーリーが、補助金の申請書を書く上でのテクニックの一つになりえます。ただしこれだけでは説得力に欠けます。したがって、次のような視点が当てはまらないかどうかを考慮します。
視点その1 顧客からの新たな要望
だいたいどんな補助金でも、顧客のニーズや市場の要望というものを明記しなければなりません。そこで、顧客から何か新しい要望をうけていないかどうかというのを思い出してください。
例えばですが、近年では建設業界は深刻な人手不足です。人手不足を補うために、作業性に優れた建機が次々に上市され、建設業はそれらを購入しています。したがって建機メーカーは忙しく、その部品加工の下請け業者にも、増産依頼や短納期要請が従来よりも強まっています。
このような、市場の動きを元にした顧客の要望(もっと増産してほしい、もっと短納期で納品してほしい)があるにもかかわらず、ボトルネックがあって要望に応えられない、というような状況でないかどうかが視点の一つです。
視点その2 革新的であるかどうか
ものづくり補助金では申請の内容に「革新性」が求められていていますし、小規模事業者持続化補助金でも「創意工夫」といった点が求められています。補助金をもらってやろうとしていることの内容が、一般的な内容ではない、ということを主張しないといけないわけですね。
ボトルネックの解消は、どのような主張ができるでしょうか。一番わかりやすいのは、導入する設備自体の先進性を主張することですが、これは個人的にはおススメをしません。例えば「これまで業界では工程Bの生産能力は40個/日なのが当たり前だったが、新しい設備は革新的で、なんと60個/日も作れるのです」と言う風に書けるように思えますが、これは競争優位性としては一時的なものです。他社もお金を出してその設備を買えば、自社と同じ生産能力になるのですから、競争力の源泉になりうるとまでは言えないでしょう。
ではどうするか?ということですが、自社の他の強みと絡めるということです。例えば「当社では工程AとCは独自の工法で加工を行っている。しかし工程Bがボトルネックとなっており、工程AとCの強みが活かしきれていない。ここで先端設備を導入し、工程Bの生産能力を80個/日まで高めることができれば、工場全体で80個/日まで作れるようになる。独自工法を採用していない他社では工程A、Cは60個/日が限界であろう。したがって、工場全体で80個/日の生産能力を確保できるのは、同業他社でも一般的でなことではない」と言えるようになります。
このような筋書きだと、他社がお金を出して工程Bの増強を図ったとしても、工場全体での生産能力を高めることはできませんよね。これが持続的な競争力というものであり、革新性と主張できるポイントになります。(ちょっと苦しさは残りますが)
ポイントは、単体の設備や単独の工程として見ない、ということ
単独の設備や単独の工程であるBだけにフォーカスすると革新性は訴求しにくいのですが、このように工場全体としてどうなるかという視点を持つと、突破口が見つかる場合があります。工場全体のアウトプットを決める制約条件が「ボトルネック」ですので、ボトルネックの解消により工場の全体最適が図れる、と持ち込むことができるかどうか、検討してみてくださいね。