おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
久しぶりに僕の失敗談について書こうと思います。4年ほど前になりますが、取引先の社長に「詐欺だ。訴えてやる」と言われたことがあります。僕もかなりへこんだ一件だったのですが、その時の教訓は今でも活きています。
ホームページからの問い合わせに舞い上がって
その取引先は、ホームページを見て「補助金の支援をしてほしいんだけど」という問い合わせをしてきてくれました。当時、ホームページを見て問い合わせをしてくれるお客さんってほとんどありませんでした。というのも、4年ほど前はまだまだ補助金支援の仕事は、僕も(前職も)それほど力を入れていなかったからです。
当時の僕は、製造業の目標管理や5S活動などの制度導入や推進支援という仕事の割合が多かったのです。補助金の仕事は、そういった目標管理の支援先から「ついでにもらう」仕事に過ぎなかったのですね。ですので、補助金だけの問い合わせというのは珍しく、正直に言うとこちらも舞い上がってしまいました。
重要な要件を読み落としてしまう
もともとは製造業支援ばっかりやっていた僕ですが、この取引先の企業は建材の卸売業でした。僕の得意分野ではないので、いろいろと勝手が違うんですね。例えば補助金についていうと、製造業の場合は機械装置を1台申請したらおしまい、というところがほとんどです。しかし卸売業にはそんな高額な機械装置は必要ありません。ですので、外注費やら委託費やら人件費やら、細かい費目を積み重ねていく必要がありました。
補助金では、こういった細かい費目に様々な制限がつけられていることがあります。例えばものづくり補助金では、外注費は補助対象経費総額の1/2を超えてはならない、といった制限です。慣れない業種の慣れない内容だったので、制限があったことを読み落としてしまったのです。
不採択になって怒鳴られて……
制限を読み落としたまま申請をすると、当然ですが事務局から「これは条件を満たしていません」と突き返されます。突き返されると、お客さんは不信感を当然に持ちます。そういうことが何度か続くと、お客さんもイライラしていることがこちらに伝わってくるようになりました。
それでも終わりが良ければすべてよしだろう……と思っていたのですが、結果は不採択。この時点でお客さんは怒りが頂点に達したようで、呼び出されて怒鳴られて「詐欺だ。訴えてやる」と言われたというわけです。もう少し細かく言うと「公募条件も知らないくせに着手金をとった」ことを詐欺だと言うことです。もちろん、結果がでなかったことが火に油を注いだ形になりました。
情けない気持ちで弁護士にも相談に行く
「訴えてやる」と言われたら、そりゃ穏やかじゃいられません。知り合いの弁護士に相談に行き、善後策を練りました。弁護士の見解としては、①故意ではなく過失なので詐欺には当たらない、②損害も発生はしていないので賠償の責任もない、ということでした。しかし気持ちは晴れません。結局、お詫びとして着手金を返金して、それっきりお互い連絡を取ることはなくなりました。
なぜこんなことが起きたのか?
クレームが起きたら再発防止に努めなければなりません。品質の基本ですね。こういうことが起きた原因はいくつかありますが
- 慣れない、知らない業種を安請け合いしてしまったこと
- お互いの責任分界点が不明確であったこと(僕も認識不足であったことには違いありませんが、これは企業が提出する申請なので、本来であれば企業の側も公募の内容は理解しておく必要がある。そのあたりの説明を怠り、責任を分担することをしていなかった)
といったところでしょうか。根本原因としては、僕のほうに仕事を引き受けるかどうかを決めるにあたっての明確な基準や仕組みがなかった、ということにたどり着くかと思います。あとは「契約書」です。この時の僕は、顧問契約先(目標管理のコンサルティング先)から「ついでに」補助金を受注していました。そういう取引先とは既に関係性ができていたこともあり、悪く言うと「なあなあ」で受注をしており、契約書を交わしていなかったのです。
社会人としての常識なので、ここに文章として書くのは恥ずかしいのですが、この一件でわかったことは、知らない会社、知らないサービスを提供するのに「なあなあ」で契約書も交わさず、責任分担も決めずに仕事を引き受けてはならない、というごく当たり前のことだったのです。(ホントにアホです?)
そこからはちゃんと契約書を事前にかわすことや、責任分担についての説明を書面ですることを、自分のサービス提供プロセスに組み込みました。その上で得意分野以外の仕事は基本的には受けないことで、自分の身を守るだけではなく、取引先を失望させないようにしています(というわけで、補助金の仕事は、製造業以外はお引き受けしておりません)。参考までに、本日現在で当社で利用している説明書きをお見せします。もめそうなポイントがどこか知っているというのもノウハウの一つなのですが、コンサルとクライアントでもめることなくビジネスがうまくいくのがみんなハッピー(僕もハッピー)なので、包み隠さず公開したいと思います。
これが是正処置として有効だったのか、その後は「訴えてやる」と言われることも、今のところありません。しかし自分の甘い対応が取引先を失望し、怒らせる可能性は忘れていません。この一件は僕にとっては思い出したくない一件で、「このお客さんには感謝している」とまで言えるほど僕は人間ができていませんが、それでも教訓として得るものは大きかった一件でした。