僕は5年ほど前から、臨床心理士さんによるカウンセリングを月に1度のペースで受けています。一口に言うと「よいコンサルタント」になることを目的にカウンセリングを受けているのですが、それはどういうことなのかをお話したいと思います。
コンサルティングの現場で重要な「心理的な支援」
僕はコンサルタントとして、企業の経営者や管理者に対して支援をします。それは、技術的な支援(例えば制度を導入したり、計画を作ったり)はもちろんあるのですが、心理的な支援も大きなウエイトを占めます。
様々な知識や経験、メソッド、理論を駆使して、どんなに素晴らしい計画を立てたとしても、それを実行するのは現場の従業員の皆さんです。現場の従業員の皆さんが「この計画をやり遂げたい」という気持ちにならなければ、素晴らしい計画は絵に描いた餅に過ぎません。ですからコンサルタントは計画を作るだけではなく、従業員の皆さんが「やり遂げたい」という気持ちを起こすサポートもしなければなりません。計画に批判的な人がいるのであれば、その人の気持ちを汲みとり、場合によっては計画を変える必要もあります。これが「心理的な支援」です。
心理的支援をしていると、自分の気持ちが揺さぶられる
この「心理的な支援」をしていると、僕自身にもいろいろな気持ちが湧き上がることがあります。一度、ある会社の管理職に対して、一対一でヒアリングをしていた時のことです。ヒアリングが終わった後、その管理職の方は僕に笑顔でこう言いました。
「話を聞いてくれてありがとうございます。こんなに話を聞いてもらって、気持ちよかったです」
それを聞いた時に、未熟な僕は正直なところ「うらやましい」と思いました。僕は仕事柄、他人の話を聞くことは多いのですけど、僕自身が誰かからしっかりと話を聴いてもらうということはほとんどなかったからです。「うらやましい」という気持ちがモヤモヤした気持ちに変わり、やがて「自分は他人の話をいつも聞いているのに、どうして他人は自分の話を聞いてくれないのか」という恨めしい気持ちが湧いてきたのです。恨めしい気持ちと同時に「自分の中になにかのわだかまりがある」と感じ、カウンセリングへ行くことを決めたのでした。
僕も人間なので「誰かに自分のことをわかってほしい」という気持ちはもちろんあります。その気持ちを我慢しながら、他人のことをわかることはできない、というのが僕の考えです。他人(つまり支援先の企業の人の気持ち)をわかることなく、よいコンサルティングというのはできません。だから、よいコンサルティングをするためには、まずは僕自身のわだかまりを癒やされなければならないのですね。
伴走者がいるから、夢が実現できる
コンサルタントに限りませんが、「何かの役に立ちたい」「感謝されたい」という動機で仕事をやっている人がほとんどだと思います。そう信じて仕事をしているのに、感謝されなかったり、役に立っている実感がなかったり、時には誤解されたり恨まれたりするのが仕事というものです。そういう時は心が折れそうになります。そうなると、どんなに素晴らしい計画や制度、仕組みがその会社の中にあったとしても、うまくいきません。
そんな心が折れそうな時には、伴走してくれる人が必要です。僕にとってはカウンセラーがその一人です。そして僕の支援先の皆さんにとっては、僕自身が伴走者の一人になって、支援先の皆さんの夢の実現に役立てたら……と思っています。