おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
事業再構築補助金の審査項目は全部で13あります。一つずつ解説をします。今回は事業化点②で、ニーズや顧客、市場といったマーケティング的な取組に対する審査項目です。
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事業再構築補助金審査項目 事業化点②
事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。
新型コロナウイルス感染拡大下で見えてきた新たなニーズでなければならない
まず根本的な話しからしますが、ここで考慮すべき市場ニーズは、新型コロナウイルス感染拡大下で見えてきた新たなニーズでなければならないと当社では考えます。この補助金は、公募要領冒頭の「目的」のところでも書かれているように、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するための補助金です。したがって、コロナ以前からあるニーズに応えるものでは、制度の趣旨に明確に反します。
これは絶対に外せない観点です。これを踏まえた上で、審査項目・事業化点②を見ていきます。
「競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮する」の意味
求められているのは「競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮する」ということです。
競合他社とは、既存事業における競合他社のことも新分野・新業種・新事業における競合他社のことも、どちらも指すと解釈するほうが無難でしょう。審査対策上だけではなく、一般的に新規事業を行うにあたっては、どちらの競合他社の動きも考慮にいれなければなりません。
例えば指針の手引き(1.1版)では、日本料理店が、焼肉店を新たに開業するという事例が掲載されています。この場合は、既存事業の競合(たとえば近隣の日本料理店)がどういう動きをしてコロナ禍における市場ニーズを押さえようとしているのかを押さえる必要があります(例えば、近所の○○という日本料理店では、両隣の席との距離が十分あるお一人様専用ホールに改造するなどして、感染リスクが低い店舗で食事をしたいというコロナ禍で生まれた新たなニーズに応えようとしている、など)。
新事業における競合のことも意識をしないといけません。焼肉店は強力な換気システムが整備されていて確かに感染リスクは低いと言われています。実際に飲食店の中で焼肉店の売り上げは他よりも伸びており、しばらくはこの傾向が続くとみられます。そのため、焼肉店の出店や他事業からの転換が増えていくでしょうが、間違いなく競争過多になります。もっというとコロナ禍が終息したら、焼肉店以外の飲食店にも顧客が戻っていくと思われますので、増え過ぎた焼肉店の中には選ばれない店も出てくることは間違いありません。そんな焼肉店の中で、将来自社と競合するであろう店舗は、どういうニーズに対応しようとしているのかも分析する必要があります。
「補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確」の意味
これも難しい日本語です。まず「補助事業の成果の事業化」というのは、先程の例で言うと「補助金をもらって焼肉店を新たに開業して事業転換を図ること」と言い換えればよいでしょう。なのでここでいうユーザー、マーケットというのは、新分野・新業種・新事業における新しい顧客・市場のことを指すと理解できます。
ユーザーとマーケットは異なる概念です。ユーザーというのは、個々の顧客のことで、例えば焼肉店でいうと「ファミリー層」とか「カップル層」とか、もしくは「和牛にこだわりのある層」などと言えるでしょう。一方のマーケットというのはもう少し広い概念で、広い意味では外食市場、もう少し絞ると焼肉店市場などを指すと理解できます。
つまり自社が新分野・新業種・新事業において狙おうとしている新しい顧客・市場はどういう層であり、どのくらいの規模があるのかを押さえる必要があります。
新しい顧客・市場を明確にすることは、事業再構築指針における「市場の新規性要件」を満たすこと(≒既存製品等と新製品等の代替性が低いこと)を立証する上でも必要なことです。事業再構築指針における「市場の新規性要件」では、既存事業と需要の食い合いにならないような市場・顧客の選択をしなければなりません。日本料理店の顧客がそのまま焼肉店に移行しないよう、別の市場・顧客をターゲットにすることが求められています。
「市場ニーズの有無を検証できているか」の意味
「市場ニーズの有無の検証」というのも聞き慣れない言葉ですが、これは本当にニーズがあるかどうかを立証しなさいということなのだと思われます漠然としたニーズではなく、市場ニーズが確かにあると言えるような証拠、つまり数字などを使ってニーズが確実にあることを説明することが求められるでしょう。
ところで、事業再構築補助金の兄弟施策であるものづくり補助金でも、同じ審査項目があります。ものづくり補助金の審査項目では「クラウドファンディング等を活用して市場ニーズの有無を検証してください」と書いています。「クラウドファンディングで○百万円の資金調達に成功しました。目標達成率200%です」みたいな数字を使った説明をすれば、そういうニーズがたしかにあるかもしれないと納得させることができるでしょう。もちろん、絶対にクラウドファンディングをしなければならないという意味ではありません。この例のように、数字などを使った客観的な根拠であればよいと思います。