おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
2022年度ものづくり補助金から新たに設けられた「デジタル枠」の詳細解説の第2回目です。当社の見解としては、デジタル枠に申請するそれなりのメリットはあるものの、かなり面倒くさい作業が必要です。
デジタル枠に申請するための必須要件
デジタル枠に申請するには、基本要件(付加価値額や給与支給総額のアップ)を満たした上で、さらに下記の(1)~(3)をすべて満たす必要があります。
(1)次の①又は②に該当する事業であること。
①DXに資する革新的な製品・サービスの開発
(例:AI・IoT、センサー、デジタル技術等を活用した遠隔操作や自動制御、プロセスの可視化等の機能を有する製品・サービスの開発(部品、ソフトウェア開発を含む)等)
②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善
(例:AIやロボットシステムの導入によるプロセス改善、受発注業務のIT化、複数の店舗や施設にサービスを提供するオペレーションセンターの構築等)
(2)経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること。
(3)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行っていること。
それぞれの要件を見ていきましょう。
(1)①「DXに資する革新的な製品・サービスの開発」とは
ものづくり補助金は、革新的な新製品・新サービスを開発するか、もしくは革新的な生産プロセスを導入して生産性を抜本的に向上させる必要があります。この要件(1)①は、「革新的な新製品・新サービスを開発する」ことに該当します。しかも「DXに資する」ものでなければなりません。
ものづくり補助金における「革新的」とは、「自社にはなく、他社でも一般的ではない」という意味があります。『地域の先進事例』や『業種内での先進事例』に該当することが求められていますので、要は「世の中でも一般的ではない」ものでなければなりません。
どういうものがこれに該当するかは、例が挙げられています。
(例:AI・IoT、センサー、デジタル技術等を活用した遠隔操作や自動制御、プロセスの可視化等の機能を有する製品・サービスの開発(部品、ソフトウェア開発を含む)等)
また公募要領P10にはダメな例が挙げられています。ダメな例としては「電子書籍・デジタル卒業アルバムサービスの開発等」という例が挙げられています。確かに電子書籍やデジタルアルバムサービスは「世の中でも一般的ではない」とは言えませんし、単にアナログなものを電子化したに過ぎないものと言えます。こうしたものは対象にはなりません。
(1)②「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」
一方、(1)②は、革新的な新製品・新サービスではなく、革新的な生産プロセス・革新的なサービス提供プロセスの開発のことを指します。モノの作り方、サービスの提供のやり方が「世の中でも一般的ではない」ものであり、かつ、デジタル技術をものでなければなりません。
これについても例が挙げられています。
(例:AIやロボットシステムの導入によるプロセス改善、受発注業務のIT化、複数の店舗や施設にサービスを提供するオペレーションセンターの構築等)
またこちらも、公募要領P10にダメな例が挙げられています。ダメな例としては「帳票の電子保存システム・デジタルスキャナ・電子契約書サービスの導入等」という例があります。これらも単にデジタル製品の導入やアナログ・物理データの電子化にとどまり、既存の業務フローそのものの見直しを伴わないものですので、対象外でしょう。
(1)①「DXに資する革新的な製品・サービスの開発」「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」のイメージ
結局のところ、どのような取り組みのイメージなのでしょうか。これは当社の独断と偏見ですが、下記のようなことが実現できる新製品・新サービスの開発か、もしくは新生産プロセス等の導入のようなイメージではないでしょうか。
もちろんこれを全てやらなければならないということでもないでしょう。ただ、間違いなく言えるのは、従来は手作業やっていたもの、アナログデータの取得をしていたものを、単なるデジタル化・単なるIT化しただけではふじゅうぶんで、既存の業務フローそのものの見直しを伴うものでなければ「要件を満たさないので不採択」となる可能性が高いでしょう。
(2)「DX推進自己診断」の提出
DX推進自己診断とは、2019年7月に経済産業省が公開した「DX推進指標」というものがあるのですが、この指標に対して「自社はここまでできていますよ」という各企業の自己診断結果を、情報処理推進機構(IPA)のサイトに入力するというものです。詳しくはIPAの下記サイトをご覧ください。
提出方法ですが、まずはIPAのサイトで公開されている「DX推進指標自己診断フォーマット」というExcelファイルをダウンロードし、回答をこのExcelファイルに書き込みます。(この記事を書いている2022/2/22の時点では、自己診断フォーマットはver2.2です)
「DX推進指標自己診断」は67個もの質問に答える必要がある上、質問項目にあまり馴染みのないIT用語(もちろんカタカナ)が多用されているので、理解するにも一苦労ではないかと思います。これらの自己診断や自己宣言は、応募締切日までに確実に提出していることが求められていますので、ゆとりをもって、しかもITに詳しい社員さんと一緒になって作業をする必要があるでしょう。
その後、「DX推進ポータル」というサイトにGビスIDでログインし、回答済みのExcelファイルを添付するという流れです。
(3)SECURITY ACTION自己宣言
SECURITY ACTION自己宣言とは、2017年4月より始まった情報処理推進機構(IPA)の施策です。中小企業自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。自己宣言をすれば、ロゴマークが使えるようになります。
自己認証には「一つ星」と「二つ星」という2つのランクがあります。「★一つ星」ロゴマークを使用するには、中小企業の情報セキュリティガイドライン付録の「情報セキュリティ5か条」に取組んだ企業が申請し、使用できるそうです。「情報セキュリティ5か条は下記のリンクから閲覧してください。
「★★二つ星」ロゴマークを使用するには、中小企業の情報セキュリティガイドライン付録の「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で自社の状況を把握したうえで、情報セキュリティポリシー(基本方針)を定め、外部に公開することで、使用できるそうです。
自己診断シートはこちらです。
そして「情報セキュリティ基本方針」を定め、外部に公開する必要があります。基本方針はIPAが公開している「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン付録3ツールB(情報セキュリティポリシーサンプル)」の「1.情報セキュリティ基本方針」を参考にして策定すればよいようです。独自に策定も可能であり、提出の必要はないそうです。
あとは申請書を作成して、IPAにメールをすれば送信完了です。「デジタル枠」に申請するには、ここまでやる必要があるでしょう。