おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001:2015 各箇条解説シリーズ、今日は箇条8.6 「製品及びサービスのリリース」について解説をします。この箇条8.6は、製品・サービスを作り込んだ後の、検査やチェック、試験といったプロセスに関する要求事項です。
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箇条8.6の位置付けと全体像
では箇条8.6の位置付けと全体像を見てみましょう。
箇条8「運用」は、製品やサービスの作り込みの部分ですが、この箇条8.6は、製品・サービスを作り込んだ後の、検査やチェック、試験といったプロセスに関する要求事項です。
箇条8.6の規格要求事項
では箇条8.6の解説をします。
箇条8.6は「製品及びサービスのリリース」についての規格要求事項ですが、リリースという言葉はあまり馴染みがないかもしれません。リリースというのは、次のプロセスに進めることを認めることを指します。
例えば製品やサービスは、最終的にはお客さんに引き渡されますけど、その引き渡しの際に「これで引き渡してもOKだな」と確認することが、リリースという言葉の意味です。したがって、もう少し馴染みのある言葉でいうと、検査とかチェックとかテスト、試験とか、そういう言葉を使ったほうがわかりやすいかもしれません。
では規格要求事項を見ていきます。
まずは一行目に「製品及びサービスの要求事項を満たしていることを検証するために、適切な段階において、計画した取決めを実施しなければならない。」とあります。
これは箇条8.1と関連しますが、箇条8.1では、製品やサービスをどういう順序・プロセスで仕上げていくかという計画を作りましたよね。この中で、合否判定基準も定めていました。つまり8.1では、いつどんな検査をやるのかということを計画として定めていますので、その計画通りに検査をやりなさいよということですね。
そして二行目ですが、「計画した取決めが問題なく完了するまでは、顧客への製品及びサービスのリリースを行ってはならない。」とあります。当たり前のことですが、検査やチェックやテストの結果が良好でなければ、お客さんに引き渡してはいけません。不良品を出荷してしまうことになるかもしれないからですよね。ただし、「当該の権限をもつ者が承認し、かつ、顧客が承認したとき(該当する場合には、必ず)は、この限りではない。」ともあります。
不良品であっても、社内のしかるべき人とお客さんが認めたならば、出荷してもよいということなんですよね。これはどういうケースがあるかというと、めちゃくちゃわかりやすい例でいうと、お客さんは味噌ラーメンを頼んだのに、間違えて醤油ラーメンを作ってしまったみたいなことがありますよね。このときも、もしお客さんが「いいよいいよ、醤油でいいよ」と言ってくれたら、味噌ラーメンを作り直さず、醤油ラーメンを提供しますよね。
実際はそんなわかりやすい例はあまりなくて、例えば製造業だと、抜取検査である一定以上の不良品が見つかった時に、そのロットの製品はすべて不合格とすることがあります。これをロットアウトというんですけど、ロットの中にはもちろん良品が入っています。ですので、ルール上はロットアウトなんですが、ロットアウトされた製品を全数検査して、良品だけを出荷する、みたいなケースがポピュラーじゃないかなと思います。こういうケースを特別採用と言ったりもします。
そして3行目ですね。「製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を保持しなければならない。これには、次の事項を含まなければならない。」として、 a) 合否判定基準への適合の証拠とb) リリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティ、が挙げられています。つまり、検査結果がちゃんと合否判定基準を満たしていたとい記録を取りなさいというのがまず最初の点です。そして、リリースを正式に許可した人が誰なのかを、なにかあったときに追えるように記録をとっておきなさいということです。