おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ、最近話題の「カーボンニュートラル」について、2回にわけて解説をします。初回は「カーボンニュートラルとは何か?」を、初めての人にもわかりやすいよう解説をします。
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「カーボンニュートラル」が言われるようになった背景
今日のテーマは「カーボンニュートラル」ですが、これの背景から抑えておきましょう。
地球温暖化に手を打たなければならないという議論は、1990年代からあったんですが、2015年にパリ協定という気候変動に関する国際的な協定が採択されました。このパリ協定では、今世紀後半のカーボンニュートラルを実現するために、各国には温室効果ガスの削減目標を作りなさいという義務が課せられたんですね。
日本もパリ協定に基づいて削減目標を掲げていたんですが、2020年にちょっとした出来事がありました。それは、2020年10月26日に、当時の菅首相が、臨時国会の所信表明演説で「国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とするという方針を表明したんですね。つまり日本は、カーボンニュートラル実現に向けて厳しめの目標を設定して、世界にコミットしたということです。
こうした政府の方針を踏まえて、地球温暖化対策推進法が改正され、2022年4月から施行されています。
「カーボンニュートラル」とはいったい何か?
その問題のカーボンニュートラルとはいったいなにか?ということですが、これはCO2の排出量を実質ゼロにしよう、という取組のことです。
いや、CO2をゼロにするなんて出来ないだろ、息をしているだけでもCO2が出るんだから、と思う人もいるかも知れませんが、これは「実質ゼロ」を目指すということであって、本当にCO2排出量をゼロにするわけではありません。
どういうことかいうと、ガソリン車を使ったり、火力発電をしたりするときに、CO2がたくさん出ます。これが問題なんですが、一方でCO2は、森林で吸収されますよね。植物は光合成しますからね。
この、CO2の排出量とCO2の回収量を等しくしよう、というのが「実質ゼロ」ということです。排出量と回収量が等しい状態、つまり排出量が実質ゼロの状態を「カーボンニュートラル」というんですね。
「カーボンニュートラル」はどうやったら実現できるのか?
日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指そうということを首相が宣言したわけです。これをどうやってやるのか?というのは今まさに議論されているところなんですけれども、排出量と回収量をイコールにするためには、まずはCO2排出量を減らす必要がありますね。
それはどうやってやるかというと、省エネであったり、新しい技術、脱炭素技術というんですが、こうした技術を新たに開発することで実現をしようとしています。よくご存知の例でいうと、電気自動車や再生エネルギーの普及みたいなことなんですが、アンモニアを化石燃料の代替品として発電に使おうなんていう、これまでにない技術の開発なども進めていく必要があります。
もう一つの方向性があります。それはCO2の回収量を増やすことですね。最も分かり易いのは植林なんですが、それ以外にも新しい技術開発が行われています。例えば「DACCS」や「BECCS」っていうんですけど、大気中に存在する二酸化炭素を回収して貯める技術なんかも開発されているんですね。
日本はカーボンニュートラルにむけて厳しめの目標を設定したので、単に我々の努力や我慢だけでは実現ができないんですよね。だからこれまでにない「新しい技術」を開発して、実現しようという方向性で進んでいるわけですね。まあちょっと俗っぽい言い方をすると、日本がこうした脱炭素技術で世界をリードできれば、日本の産業が活性化するというような打算のようなものもきっとあるんだと思いますけれどもね。
「カーボンニュートラル」なんて無理だろうとか絵空事だろうという意見もありますが、前の首相が言い出したことでもあるので、政府はこの先10年かけて、様々な分野に150兆円ほどの投資をする予定です。どうやってその150兆円ものお金を用意するかということは、私たちの生活とも無関係ではありません。増税の可能性もありますし、一方で新たな補助金が設けられるチャンスもあります。
次回(明日)は、政府がカーボンニュートラル実現のために、どういう分野に投資をするのか、そしてそのためのお金はどうやって確保するのかということについて、現在行われている議論を解説します。