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「新たな総合経済対策」と「補正予算」叩き台?=経済財政諮問会議資料を読む

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

9月14日に経済財政諮問会議が開かれました。この会議で話し合われたことが補正予算として政策化される可能性が大いにあります。この度の経済財政諮問会議における中小企業政策に関する部分を紹介します。

9月14日に開かれた経済財政諮問会議の資料はこちら

9月14日に開かれた経済財政諮問会議の議事要旨はこちらです

中小企業の収益力向上に政策資源をシフト

9月14日に開かれた経済財政諮問会議の議事要旨のP3には、下記のような記述があります。

資料2-1の「1.投資と雇用を動かす政策運営を」。今申し上げた官民連携の重点投資を前に進めるための具体的な政策パッケージ、これにより成長力強化にも資することが必要。経済を守る政策から、経済を動かして生産性を高める政策に今こそ大きく舵を切るべき。その際、しっかりと雇用を守ることも当然大事だが、成長分野への労働移動、スキルアップを促していくとともに、中小企業の収益力向上にしっかりと政策資源をシフトしていくべき

議事要旨より。赤字強調筆者)

会議で柳川範之委員(東京大学大学院経済学研究科教授)が上記の点を提案しています。資料2-1を読むと、雇用調整助成金の特例措置や実質無利子・無担保融資といった緊急措置を縮減して、成長分野への労働移動、スキルアップを促す施策、中小企業の収益力向上に力を入れるべきという提案です。

実際に雇用調整助成金の特例措置は上限引き下げの方向で進んでおり、この委員の提案通り、「中小企業が今を生き延びるための支援」が縮減されつつあります。「中小企業の収益力向上に力を入れる」というのも、いつもの中小企業政策のお約束ですね。

具体的には、中小企業生産性革命促進事業が、ことしで基金化予定の3年間を終了しますので、それの延長などが考えられるのではないかと思います(あくまでも推測です。延長されたとしても、大きく衣替えする可能性もあるでしょう)

中小企業の輸出力強化

9月14日に開かれた経済財政諮問会議の議事要旨のP3とP4には、中小企業の輸出力強化についての記述があります。P6にも輸出力強化についての記述がありますので、このあたりに力を入れてくる可能性は高いでしょう。

為替がかなり円安方向に動いているわけだが、これを大きなチャンスにしていかないといけない。これを大きなチャンスにするのは、やはり外需をしっかり取り込むことであり、インバウンド需要、中小企業の輸出力強化、更に対日直接投資の促進、こういうもので我が国の稼ぐ力をしっかり高めていく必要がある。

議事要旨より。赤字強調筆者)

中小企業については、直接海外に輸出をして稼いでいくことができる時代だが、現地でどう売ったら良いのか、どう営業したら良いのかというノウハウが不足している。ここを政策的にしっかり後押しする。あるいは、兼業・副業・リモートワークなどを利用して、例えば商社で働いた経験のある方がアドバイスができると、中小企業にとって非常に大きなチャンス拡大になるわけで、このような政策パッケージをやっていくことが重要。

議事要旨より。赤字強調筆者)

実現性や有効性があるかどうかはさておき、「円安なので中小企業の輸出力強化をしよう」と言っています。今でも中小企業庁はJETROなどと共同で、様々な中小企業の国際化支援策を実施していますが、こうした施策が拡充される可能性もあるでしょう。または越境EC関係の支援なども拡充されるかもしれません。

今が円安だからといって、今から動くの?仮に中小企業がその気になって、さあ輸出しようという段階になっても円安が続いているという保証はないんじゃないの?という気がしなくもないですけどね。

中小企業の賃上げ

9月14日に開かれた経済財政諮問会議の議事要旨のP6には、中小企業の賃上げについての記述があります。

雇用の7割が中小企業にあるということ。この方々の賃金をどうやって上げるか。何といっても最低賃金が、今回961円に決まったが、何としても、来年には一刻も早く1,000円にするべき。そして、その後の1,500円に向けてロードマップを描いていく。その中で重要なのは、人材の流動化を含めて、良い人材も動いていく枠組みを作ることで、中小企業が持つ雇用の7割の賃金を絶対に上げることをしっかりと実行していただきたい

議事要旨より。赤字強調筆者)

どうやって人材の流動化を図るかということについては、上記の記述に続いて「人材の流動化の受け皿として、いわゆるニューフロンティアを作って、そこに質の高い雇用を作るということが重要で、そのためにGXへの投資、そして、日本はヘルスケアにもまだまだ投資する余地がある。」と書いていることから、成長分野の創出を通じた雇用機会の拡大を政策として後押しするものと考えられます。その他、雇用維持政策から雇用移動政策への移行、同一労働同一賃金などの雇用環境の整備なども進めていくのだろうと推察できます。

ここに書かれているようなことが、この10月に「新しい経済対策」としてまとめられ、そしてその財政的な裏付けとして令和4年度第2次補正予算が編成されるものと想像できます。

  • B!

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