おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今日は僕の、後輩の教育に関する失敗談をお話します?
自分の頭で考えろといいながら、後輩に仕事を丸投げする僕
部下や従業員に対して「もっと自分の頭で考えて、自分から行動してほしい」という思いを持つ上司や経営者の方はいらっしゃるでしょうか?僕もいまでこそ個人事業主として一人で仕事をしているのですが、かつて部下や後輩を持っているときにはそんな気持ちを抱いていました。
時期としては21世紀になった直後くらいでしょうか。私の部署に1人の新卒の新入社員が入ってきました。名前をA君としましょうかね。(イニシャルではなくて、ABCのAです)
当時の僕は営業係長でした。営業として、お客さんに提案書を書く機会がよくありました。新入社員のA君にも、いずれは提案書を書いてほしいと期待していたので、入社したてのA君にこう言いました。
不安げなA君をよそに、僕はA君にほとんど仕事を丸投げしつつも「自分の頭で考える機会を作ってやった」といわんばかりに得意げでした。
しかしA君は提案書が作れない
しかしいつまでたってもA君は提案書が作れないのです。A君に提案書作成を丸投げしてから1週間くらいたったころ、僕は相変わらずプレッシャーをかけます。
う~ん、今こうやって書きながら改めて思うのは、これは先輩によるパワハラに近いな……という思いですね。。
お客さんのところに提案書を持っていく期限がきたので、結局のところA君にまかせず、僕が提案書を全部作ってしまったのでした。
僕の何がいけなかったのか?
確かに「自分の頭で考えて行動してほしい」というのは、期待としてはそれほど間違っているものではありません。しかし物事には順序や段取りというものがあります。
A君は新卒で入社したばかりです。提案書を作ったことなどありません。そのうえ、僕から提案書の作り方も教わっていないのですし、そもそもまだ入社したてのA君は、当社のサービスのセールスポイントも熟知していないのですから、知識や経験の面から書けないのは当然のことと言えます。
さらに先輩としての僕の態度もよくありませんね。「自分の頭で考えるのがA君の仕事だろ」と突き放しています。先輩からこう言われたA君はプレッシャーに感じるはずです。先輩の期待に応えなければ、自分の評価は下がってしまうという恐れまでも抱いても不思議ではありません。人はこのように、自分の居場所や存在意義が危険にさらされたときには、よいパフォーマンスをあげることはできません。よく「背水の陣で臨む」とは言われますが、僕は20年以上社会人をやってきましたが、背水の陣を敷いてよい結果を残した人をほとんど知りません。退路を断って死ぬ気でやれば何でもできる、というのは精神論に過ぎないと思っています。
ですから、A君に「自分の頭で考えてほしい」を実現するためには、「知識や経験が少ない自分が考えても否定をされない、低い評価を受けない、安全な環境」も、先輩である僕が作ってあげないといけませんでした。つまり21世紀初頭の僕は、やり方もきちんと教えないし、プレッシャーで後輩を追い詰めるだけの無能な先輩だったいう訳です。
安全な環境をつくることがパフォーマンスを高める
近年の組織論研究で明らかとなった事実のひとつに、心理的に安全な環境が、その組織の生産性を高めるというものがあります。Google社が2012年から行った労働生産性向上プロジェクトである「プロジェクトアリストテレス」の結果として、チームの生産性には心理的安全性がカギであることがわかっています。
僕のような年配のビジネスマンは、適度なプレッシャーがよいパフォーマンスを生むと信じ切っているところがあると思います。それを僕も完全には否定はしません。ただ価値観が多様化していおり、必ずしも収入や昇給や雇用が約束されているわけではない現代で、果たしてプレッシャーだけでパフォーマンスが高まるのでしょうか。私たち自信が持っている「常識」を疑ってもよい時代になったのではないかと思います。
ちなみにこの話に出てくるA君は、その後お父様の仕事を継がれて、今では立派な経営者として頑張っています?