おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です、
ハラスメント企業との取引についての解説シリーズの4回目です。今回は、ハラスメントを起こしている取引先に対してはどう対応すればいいか説明します。
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ハラスメントを起こしている取引先に対してはどう対応すればいいか
もしハラスメントを起こしている企業が取引先だったら、どう対応すればいいのでしょうか?今、日本でもハラスメントを起こした企業との取引に関して注目されていますよね。今話題の一件では、例えばキリンやアサヒは、ジャニーズ事務所のタレントを今後の広告には使わないと発表しました。一方で、ジャニーズとの取引関係を継続すると表明している企業もありました。報道だけを見ていると、ジャニーズとの関係を続けるかどうかだけが、論点になっているような気がしますよね。
確かに、ハラスメント企業との取引関係を見直すのは一つの方法ですが、それだけではないかなと思います。アップルのケースを見ると、問題のあるサプライヤーが見つかったとき、アップルはそのサプライヤーと一緒に改善計画を立てています。そして、その計画が実際に実施されているかどうかまで、アップルがチェックしています。場合によっては、アップルから問題のあったサプライヤーとその従業員に対して教育訓練を提供することもあるようですね。
アップルは、問題のあるサプライヤーをただ切り捨てるのではなく、一緒に問題解決を目指しているんですね。そこまでやって、それでも問題が続く場合や、改善の意思がない場合に、そこでようやく取引関係を断つという判断をしているようです。アップルとしても、何の手も打たずに、ハラスメントを起こした企業を野に放つのは無責任だろ、ということなんだと思います。つまり、取引先を切るというのは、アップルにしてみれば、最後の手段だということですね。(まあ、侵略とか虐殺とかが行われるような、よほど深刻な人権侵害の場合は、即排除なんでしょうけどね)
取引停止だけではなく、ハラスメントの解決が発注者の責任でもある
取引先を切るのが最後の手段というのは、何もアップルが親切だからそうしているのではありません。国連が定めた「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」というガイドラインにも、いきなり取引を止めるのではなく、ハラスメント問題を解決するためのアクションを取ることが推奨されています。(ビジネスと人権に関する指導原則19)
仮に取引を継続する場合も「我が社は、取引先のハラスメントを止めるためにこんな努力をしているんだよ」ということを言えるようにしなさい。とガイドラインには書いています。
こう聞くと「そういう措置は手ぬるいんじゃないか?一気呵成に制裁を与えるべきだ」という意見も聞こえてきそうですけど、ハラスメント即取引停止、ということが当たり前の社会になると、ハラスメントを起こした企業は、事件を隠そうとしてしまいますよね。そうなるとかえってハラスメントが水面下ではびこるということになってしまうので、寛容さと厳しさをうまく使い分けていくということなんだと思いますね。
もしかすると、ジャニーズとの取引を止めると発表した企業も、実際にはジャニーズとの間で色々な調整や交渉をしていたのかもしれません。報道ではその部分が伝えられていないので、我々には具体的なことはわからないですが、国際基準に照らし合わせると、どのような交渉や調整を取引先としてきたのかも、もっと公開するべきなのかもしれませんね。
日本は日本、欧米は欧米と割り切ってもよいのか
以上のように、4回にわけてハラスメント企業との取引について説明をしてきました。結論としては、ハラスメント問題を解決するためのアクションを取ることがまず推奨されている、というお話でした。
ところで「日本には日本の事情があるから、欧米の基準がなんぼのもんやねん?」という見解もあろうかと思います。しかし、最近は日本市場だけで企業が成長をしていくという絵が書きづらくなってきています。企業が成長を続けているためには、何かしらの形で海外展開をしていかなければならない時代が来ると想像できますので、こうした人権やハラスメントに関する取引慣行というものに、我々も馴染んでいかないといけないんでしょうね。