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ISO45001:2018 8.1.2 安全な職場を作るための優先順位はどう決める?(2)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

ISO45001:2018 各箇条解説シリーズ、箇条8.1.2「危険源の除去及び労働安全衛生リスクの低減」は安全で健康な職場を作るための対策を、どのような優先順位で検討すべきかを定めた重要な箇条です。2回にわたって解説します。

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ISO45001:2018 8.1.2 安全な職場を作るための優先順位はどう決める?(1)

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ISO45001:2018 各箇条解説シリーズ、箇条8.1.2「危険源の除去及び労働安全衛生リスクの低減」は安全で健康な職場を作るため ...

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個々の管理策の説明

以下の5つの管理策をそれぞれ解説していきます。

a) 危険源を除去する。

b) 危険性の低いプロセス、操作、材料又は設備に切り替える。

c) 工学的対策を行う及び作業構成を見直しする。

d) 教育訓練を含めた管理的対策を行う。

e) 適切な個人用保護具を使う。

まずa)「危険源の除去」は、危険源そのものを物理的になくすことです。例えば、フォークリフトを使わずに済むようにして、危険源そのものをなくそうというイメージです。これが最も効果的(つまり安全)な対策と言えますが、多くの場合、実務上かなり難しいでしょう。人型ロボットが代わりに作業してくれればいいですが、そうでなければフォークリフトをなくすことは難しいでしょう。

2番目に効果的なのはb)の「切り替え」です。危険性があるものを、危険性が低いものに切り替えるということです。例えば、周囲の作業者を検知するセンサー付きのフォークリフトに置き換えるというイメージです。

3番目はc)の「工学的対策」です。これは機械装置やレイアウト変更などを伴う物理的な対策をとるということです。今まで通りフォークリフトは使うけれども、安全性を高めるためにフォークリフトと歩行者の動線を分離するというイメージですね。

次にd)「管理的対策」です。これは物理的な対策ではなく、運用面での対策を行うことです。例えばフォークリフト操作に関する教育訓練を行うとか、フォークリフト作業者がミラーを見たり、直接後方を見たりして指差呼称をするというイメージです。

そして最後の手段がe)の「個人用保護具の使用」です。従業員が健康と安全に対するリスクを最小限に抑えるために、何かを使用・着用することを指します。例えばフォークリフト作業エリアに入る作業員には、安全ヘルメットや安全靴、反射ベストなどの個人用保護具を着用させるというイメージです。

保護具の支給が最後ということは非常に重要な意味があります。「保護具を使わせていたらそれでいいや」という考えではなく、あくまでも保護具は対策を検討しつくした結果の最後の防衛線であるべきだということですね。

なおこの5つの管理策は、一番上の「危険源の除去」が最も効果的ですが、導入の難易度も高いため、労働安全衛生に関する様々な情報(例えばリスク分析の結果、実現可能性、予算、法的要求事項、従業員からの意見や要望等)も考慮して決定する必要があります。

保護具は無償支給すべきか

最後に、箇条8.1.2の規格要求事項の注記も見てみましょう。

「多くの国で、法的要求事項及びその他の要求事項は、個人用保護具(PPE)が働く人に無償支給されるという要求事項を含んでいる。」ということですが、これはILO(国際労働機関)の主張によって注記として盛り込まれたものです。

ただし、日本の法律では、個人用保護具を無償で支給しないといけないとまでは言っていません。特に安全靴は、個人負担にしているケースが多いと思います。靴は衛生上、いろんな人が使いまわすのが難しいですからね。

ただ、保護具を個人負担にするときには注意が必要です。就業規則の相対的必要記載事項として、安全靴は個人負担ですよという旨を書いて、労働者に周知し、労基署に届出をする必要があります。また、採用時にも個人負担がありますよということを文書で明示しなければなりません。法律上はそうすることで個人負担にもできますが、ボロボロになった保護具を使われて事故が起こると、会社の安全配慮義務が問われるでしょうし、人材確保の点でも、無償で支給するほうが良いのではないかと思います。

  • B!

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