おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ「土壌汚染対策法」を解説をします。土壌汚染対策法の目的とその背景、そしてどういうケースで土壌調査が必要になるかの2点を具体的に解説します。
動画でも解説しています(無料・登録不要)
土壌汚染対策法の目的と成立の背景
土壌汚染対策法というと、少し難しい法律のように感じるかもしれませんが、簡単に言えば、人々の健康を守るために作られた法律です。
この法律は比較的新しく、2003年に施行されました。その背景には、工場の跡地が再開発されるケースが増え、再利用する土地が安全であるかを調査する必要性が高まったことがあります。
工場跡地では、有害物質が土壌や地下水を汚染している可能性があります。汚染された地下水が広がったり、汚れた土から発生する土壌ガスが地上に出てきたりすると、人々の健康に深刻な影響を与える恐れがあるからです。
土壌汚染対策法に基づいた調査等の事例
たとえば――これは土壌汚染対策法が成立した後の事例ですが――東京都の築地市場が豊洲に移転した際に、土壌汚染対策法に関して大きな話題となりました。
市場の移転先の土地は、かつて東京ガスの工場跡地でした。有害物質であるベンゼンが地下を汚染していたことがわかり、地下水汚染が拡大するリスクや土壌ガスが市場の建物内に侵入する可能性が懸念されました。市場は食材を扱う重要な施設ですので、安全性への不安が非常に大きな社会問題となりましたね。
こうしたリスクを未然に防ぐために、土壌汚染対策法では、土地が汚染されていないかを調査し、汚染が見つかった場合には適切な処置を行うことが義務付けられています。
この法律の目的は、汚染が広がる前に対応することで、被害を「未然に防止する」ことです。そのため、「有害物質が土にこぼれたらすぐに罰則」という性質ではなく、問題が発生しないよう早めの対応を促す仕組みになっています。
土壌汚染対策法における「調査」のタイミング
この法律では、土壌が汚染されていないかを調査するタイミングが決められており、主に4つのケースで調査が必要になります。
1つ目は、有害物質を使っていた施設を廃止する場合です。たとえば、六価クロムを使うメッキ施設などが該当します。これは法律の第3条に規定されているので「3条調査」と呼ばれます。
2つ目は、土地の形質変更を行う場合です。たとえば、大きな工事で土地を掘ったり埋めたりするときに該当します。これを「4条調査」と言います。再開発などで土地を大規模に掘り返す場合、もし汚染があれば、それが広がる可能性があるため調査が必要になります。
3つ目は、都道府県知事が「この土地は汚染されているかもしれない」と判断した場合です。これを「5条調査」と言います。このケースはめったに起こりませんが、豊洲市場移転の際、東京都知事がこの調査を命じた例があります。
4つ目は、土地所有者が自主的に行う調査です。土地を売買する前に、汚染の有無を確認するため、地主が自主的に調査を行うケースがこれに当たります。
次回は、こうした調査の結果、法が定める基準を超えていた場合にどうなるかについて解説をします。