おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ちょっと出遅れましたが、4月25日に2025年版 中小企業白書が公開されました。白書は中小企業の現状を浮き彫りにするものですが、同時に、政策立案の根拠となるものでもあります。ざっくりと読んでいきたいと思います。まずは第1部です。
2025年版「中小企業白書」はこちら
前回までの記事はこちら
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2025年版 中小企業白書をざっと読む(第1部)(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ちょっと出遅れましたが、4月25日に2025年版 中小企業白書が公開されました。白書は中小企業の現状を浮き彫りにするものですが、同時に ...
労働生産性と設備投資の現状
要点は以下の通りです(NotebookLMによるAI要約です)
- 大企業の労働生産性は増加傾向にあるが、中規模企業・小規模企業ではおおむね横ばいであり、約30年前と比較して減少傾向にある。
- 中小企業における労働生産性の推移を業種別に見ると、多くの業種で横ばい傾向であり、特にサービス業の伸びが小さい。
- 設備投資額は大企業で増加している一方、中規模企業ではおおむね横ばい、小規模企業では減少傾向にある。
- 中小企業の設備投資計画は、前年度と比較して低い水準にある。
労働生産性についてはだいたい毎年このような記述なのですが、ここ数年は大企業との乖離が激しいです(過去30年で最大)。賃上げ状況が大企業と大きく違うことが大きな要因だと思いますね。
中小サービス業の労働生産性の低さも相変わらずのことです。中小のサービス業は、例えば理容、美容、クリーニングあたりが挙げられるのですが、やっぱり単価が低くて賃上げしづらいからではないかと思います。一方、最も労働生産性が高いのは建設業なのですが、これは建設業の作業のやり方にムダがないという意味ではなく、単に人が減っている(+需要と供給の関係で賃金も上がっている)ことが大きいと思いますね。
財務状況と資金繰り
要点は以下の通りです(NotebookLMによるAI要約です)
- 中小企業は、大企業と比較して借入金依存度が高い傾向にある。特に宿泊業・飲食サービス業でその差が大きく、中小企業では7割を超えている。
- 借入金利の上昇は、借入金依存度が高い業種で経常利益への影響が大きいと考えられる。
- 中小企業は、リーマン・ショック以降、現預金残高を増やす傾向にあり、感染症拡大時に借入金等が増加した時期と同期してその傾向が強まっている。これは経営の先行き不透明感や借入金返済原資確保の観点から現預金を増やしている可能性がある。
現預金残高を増やす傾向は、ここに書かれている要因がやっぱり大きいと思います。大企業も含めて明らかに潮目が変わったのがリーマン・ショックでしたからね。景気が悪くなると、溜め込みに走るというのは、人間の心理として自然なことですもんね。こうした「溜め込み」が投資や賃上げの抑制に繋がり、景気低迷を長びかせている、という構図ですね。
デジタル化の進展と課題
要点は以下の通りです(NotebookLMによるAI要約です)
- 「紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態」の事業者の割合が大きく減少しており、デジタル化は一定程度進んでいる。
- しかし、デジタル化に取り組めていない中小企業・小規模事業者も一定数存在しており、さらなるデジタル化の進展が期待される。
現場の実感としては、中小企業では、デジタル化したくてもできないという背景もありそうです。お金の話はもちろんですが、デジタル化というのは「フローを決める」ということでもあります。しかし例えば中小の製造業では、取引先の受発注フローに合わせざるを得ず、一つのフローに固定できないということがあるんですね。それをカスタマイズしようとすると莫大なお金がかかるので、「それなら今のまま、紙や口頭による業務でいいや」ってなっちゃうんですよ。
価格転嫁の状況と収益への影響
要点は以下の通りです(NotebookLMによるAI要約です)
- 原材料・商品仕入単価の上昇は落ち着いているものの高水準が続き、売上単価との差は埋まっておらず、採算はおおむね横ばいとなっている。
- コスト全般の転嫁率は直近で5割程度まで上昇しているが、更なる価格転嫁の実現が期待される。
- 「価格転嫁力指標」の分析によると、製造業の中小企業では大企業と比較して価格転嫁力指標が低く、一人当たり名目付加価値額の上昇率の押し下げに寄与している。非製造業では中小企業・大企業共に価格転嫁力指標が上昇している。
- マークアップ率の高い企業ほど、経常利益率、設備投資額(売上高比)、賃金/限界生産性が高い傾向が見られる。適切な価格設定は、利益率向上、投資、賃上げにつながる可能性がある。
価格転嫁の動向も、ここ数年は歴史的な伸びを見せていますよね。こういうのを見ると、価格転嫁に対する政府の取り組みって有効だったんだ、と思っちゃいますよね。(まあ政府の取組だけで価格転嫁がされているわけではないですが)
価格転嫁せざるをえない経営環境になってきたんでしょうね。
賃金の動向と賃上げ
要点は以下の通りです(NotebookLMによるAI要約です)
- 最低賃金は過去最高を更新した。
- 一人当たりの所定内給与額は、従業員規模が少ない企業ほど大企業との差が存在しており、その差は拡大傾向にある。
- 春季労使交渉による賃上げ率は、全体・中小共に約30年ぶりの水準となった。
中小企業・小規模事業者の労働分配率は約8割であり、大企業と比較して賃上げ余力が厳しい状況にある。ただし、一定数の中小企業は賃上げに意欲を示している。
中小の労働分配率はコロナのときに若干高めになったのですが(これは分母である付加価値額が下がった体と思われる)、コロナ禍からの回復とともに、また以前のような横ばい傾向になっています。
最賃が上がったり賃上げが進んでいるのに労働分配率が横ばいなのは、付加価値額もそれなりに上がっているからなんでしょうけど、ちょっとこのあたりの背景は白書からは読み取れないですね。まあ付加価値額の構成要素の多くは人件費なので、人件費が上がるということは労働分配率の分母も分子も増えるから、というテクニカルな理由なのかもしれません。