おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
企業にはいろいろな活動(改善活動、5S活動、委員会活動、ISO)などがありますが、「なかなか継続しない」という嘆きの声をよく聴きます。なぜ継続が難しいのでしょうか?科学的実験の結果から考察してみます。
なぜ継続しないのか?それは「しんどいから」
まず結論を先に言うと、「しんどいことは継続しづらい」ということです。
新しく始めることが習慣になるまで、どの程度の時間がかかると思いますか? 習慣化するための「平均日数は66日」とする研究があります。
これはユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのフィリップ・ラリーさんが2009年に実験で明らかにしたことです。
ラリーさんは96人の参加者を集めて、ある実験を行いました。参加者は皆、何かを習慣化したいという思いを持っていました。例えば、毎日水を飲むとか、毎日腹筋を50回するなど)。その「習慣化したいこと」が定着し、自分に強いることなく、あまり考え込むことなく(=無意識的に)に実行できるまでにどの程度の時間がかかったかを調べました。
実験の結果は下記の通りです。習慣化(無意識的に行動できるようになる)までの平均日数は66日でしたが、その内容によって期間が18日から254日までばらつくことがわかったのです。でも当たり前のことですよね。「毎日水を飲む」といったことは楽なので習慣化しやすいでしょうけど、「腹筋を毎日50回する」といったことはしんどいのでもっと時間がかかります。
習慣化には最初が肝心
上のグラフを見てください。取り組み始めた初期の段階で、無意識性(自分に強いることなく、あまり考え込むことなく行動できること)が急激に伸びています。そして習慣化が進むにつれて、緩やかな伸びになるということがわかりました。これは初期の繰り返しが重要だということを示唆していますね。
「意志の力」は筋肉のようなもの。しんどいと消耗するし回復にも時間がかかると
フロリダ州立大学の心理学者にロイ・バウマイスターという人がいます。その人は「意志の力」について研究をしている人です。その人は「意志の力は筋肉のようなものだ」と述べています。筋トレで筋肉を酷使すると回復に時間がかかりますが、意志の力もそれと同じように、酷使すると消耗し、回復に時間がかかることを実験で証明しました。
フィリップ・ラリーの「習慣化実験」で、負担の軽い活動は習慣化しやすく、負担の重い活動は習慣化しにくいという結論になりましたが、これと「意志の力」は同じことだと言えるでしょう。しんどい習慣は意志の力の消耗が激しいので、継続しにくいのです。筋トレのように、軽い習慣から徐々に体を慣らして、それから段階的に習慣化したい活動のレベルをあげていくのが合理的でしょう。
これを企業の諸活動に置き換えると、どうすればよいか
この実験結果を企業の諸活動の習慣化に応用するとなると、どうすればよいでしょうか。まずは「最初からしんどい活動にはしない」ということが真っ先に挙げられるでしょう。「毎日腹筋50回」のようなきつくてしんどい活動ではなく、水を飲むだけのように簡単な活動にするということです。
例えば5S活動であれば、いきなり形跡管理や色別管理などのテクニックを導入するのではなく、毎日5分間の清掃から始めることや、使ったものを元に戻すということに集中してやるのです。改善活動であれば、いきなり難易度の高い不良対策やムダ取りではなく、もっと簡単なこと(それこそ5S活動でもよい)から始めるということですね。
そして次には「最初が肝心」ということです。最初は息苦しいかもしれませんが、簡単な活動が実行できたかどうかの確認・管理をしっかりやります。チェックシートへの記入を推奨するなどが具体策でしょうか。しかしそれもやみくもに導入すると、従業員のみなさんが「ただでさえ忙しいのに、余計なものが増える上、管理がきつくなる」と感じやすくなります。したがって、2カ月程度を目安にして定着したらチェックシートの類はやめることや、なにか他の制度を廃止して全体的な負荷を減らすことを、あらかじめ従業員のみなさんに周知をするという方法がありますね。
現代はただでさえ結果が出にくい時代なのです。本来業務で疲弊をしている上に、新しい活動を始めたところで、疲弊している「意志の力」の状態ではいつまでたっても活動の継続などできません。何も新しい活動をするなとは言いませんが、現場の実態に応じた負荷調整は必須です。