おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
週末のエモブロです。うつの症状を持つ人って、必要以上にものごとをネガティブに捉えるように思いません?でも、そうした人こそが、現実世界を正しく見ている可能性があると言われているらしいんですよ。
うつ症状を持つ人とそうでない人を比べる実験
この可能性はアロイとエイブラムソン(1979)という人たちの実験に基づいているんですよ。
アロイさんとエイブラムソンさんは、大学生を集め、「自分が物事をどの程度コントロールできている実感があるか」という調査をすることにしました。
アロイさんとエイブラムソンさんは、集めた大学生を「うつ症状を持つ人」と「うつ症状を持たない人」にわけました。実験方法は、これらの2つのグループの大学生にボタンを押させるというかんたんなもの。実験開始前に大学生には「ボタンを押すと、緑のライトが点灯するかもよ」という説明をしたんだそうです。
ところが実際は、ライトはボタン操作とは無関係に点灯することになっていて、被験者の大学生にはそれを隠して実験を行ったそうなんですよ。
で、うつ症状を持つ人と持たない人とで、「物事をどの程度コントロールできている実感があるか」というアンケートをとったらしいんですけど、うつ症状を持たない人は、ライトの点灯を自分がある程度コントロールできたとする傾向が認められたんだそうです。一方でうつ症状を持つ人は、自分の操作は点灯に効果がないことを、比較的正しく評価する傾向が認められたんだそうです。
実際のところ、ライトはボタン操作とは無関係に点灯をするので、「コントロールできた」と思うのは錯覚なんですよね。だからうつ症状を持つ人のほうが状況を正しく認識していて、うつ症状を持たない人は自分が行った統制を過大評価したという結果になりました。
うつ症状を持つ人はネガティブなのか?
この実験結果だけを見ると「うつ症状を持つ人は、状況を正しく認識できるんじゃなくて、単にネガティブだけじゃないの?」という気もしてきますよね。アロイさんとエイブラムソンさんもそう思ったらしい。
で、アロイさんとエイブラムソンさんは、別の実験もしたそうです。それは、5~6名で1グループを作り、自己紹介やディスカッションを行うという実験。この時も、発言が適切にできたかどうかを、自己評価と他者評価の2つの方法で調べたのだけれども、うつ症状を持つ人は、自己評価と他者評価がおおむね一致したんだそうです。一方で、うつ症状を持たない人は、自己評価のほうが他者評価よりも高かったそうで。
というわけで、アロイさんとエイブラムソンさんはこう結論づけました。
「うつ症状を持つ人が自己をネガティブにゆがめているというよりも、うつ症状を持たない人のうほうが自己をポジティブにゆがめているんじゃないか」
これと似たような実験はいたるところで行われているそうだけど、だいたい同じような結果になるんだそうです。この傾向は「抑うつの現実主義」と呼ばれており、うつ症状を持つ人こそが現実世界を正しく見ている可能性を示唆するものとして知られているのだそうな。
(もちろん「抑うつの現実主義」を否定する研究結果や反証もあります。だから「可能性」どまりなわけなんですけどね)
何が病気で何が病気でないのか
「抑うつの現実主義」がありうるものだと仮定して、自己評価と他者評価がほぼ一致するって、結構すごいことだと思いません?うつ症状の人は、それを自然とやってのけているというのだから、これはある意味「超能力」なんじゃないかとさえ思えますよね。
一般に「ポジティブ」と呼ばれる、うつ症状を持たない人たちが自己を過大に評価し、現実的な評価からずれた世界を生きているかもしれないといわれると、うつ症状は本当に「病気」と言えるのか?という気がしてくるどころか、「ポジティブな人のほうがおかしいんじゃない?」という気さえもしてきますよね。
うつの最中って本当に苦しいので、こうした研究結果をとりあげて「うつも天の恵みなのだ!」などという気はさらさらありません。うつの最中にはそんなポジティブになれないですからね。でも苦しいながらも生きていく意味があってほしいなあとは思いますね。