ISO/DIS 9001 品質文化・倫理的行動とは何か?

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

ISO/DIS9001の新しいポイントの一つ「品質文化と倫理的行動」について解説をします。これはこれまでのISO9001にない新しい考え方なんですが、品質文化と倫理的行動の考え方と実務でのポイントをざっくり解説します。

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DISで「品質文化と倫理的行動の促進」がトップの責任として追加

ISO/DIS9001で大きく変わったことの一つに、トップが品質文化と倫理的行動を“促進”すること、という要求事項が追加されたことがあります。

これに関連して、従業員が品質文化と倫理的行動を理解している状態を作ることも要求されています。

また、規格要求事項ではありませんが、附属書Aでは、顧客とのコミュニケーションの時に、できない約束はしないことや、誤解を生むような営業はしない、ということが指針として書かれるようになりました。

DISで述べられる「品質文化」と「倫理的行動」とはなにか

品質文化と倫理的行動とは何のことでしょうか。実はDISでは、その定義は書かれていないのですが、私なりに「品質文化」と「倫理的行動」が何であって・何でないのかを、考えてみました。

1つ目、「品質文化」と「倫理的行動」とは、疑問があれば手を止めて相談できることです。

2つ目として、手順・記録・データという“根拠”で判断することです。

3つ目は、顧客と正直にコミュニケーションすることで、4つ目は不適合やクレームから原因を学び、仕組みを直すこと、です。

では反対に、「品質文化」と「倫理的行動」は何でないか、ということを考えてみましょう。

1つ目は、納期や利益を優先して、顧客との約束をないがしろにするということではありませんね。もちろん納期や利益は大事ですが、それを全てにしてはいけない、ということですね。

次に、記録やデータを確認せず憶測で判断ことでもありません。記録やデータを見ずに「たぶん大丈夫だろう」とするのは、あとで大きな問題を起こす可能性があります。

3つ目です。受注欲しさに過剰な約束をすることも、違います。できない納期や仕様を安請け合いすると、あとあと、クレームになったり、コストが跳ね上がったりしますもんね。

最後に、個人のせいにして仕組みを変えない、というのも違います。現場のミスの裏には、教育・手順・設備・負荷など“仕組みの上での原因”が必ずあるはずです。そういうのを無視して、個人を責めるようなマネジメントは違う、ということですね。

世の中で起きる、検査不正や検査データの改ざんといった品質不正事件の多くが、利益や効率重視の考え方に端を発しています。利益や効率を重視することが悪いとは言いませんが、その代償として品質を犠牲にするということがあってはならない、とも言えるでしょうか。

こういう考えを、日常の当たり前にするのが、DISが言っている「品質文化と倫理的行動の促進」ということです。

こういう考えをトップマネジメントが率先して、組織の中で浸透するように働きかけなさい、ということを求めているわけですね。

「品質文化」と「倫理的行動」を実務でどう実践するか(例)

ではこうした品質文化や倫理的行動を、実務ではどう実践すればいいのでしょうか?一つの例をお見せしたいと思います。

まずはトップの姿勢ですね。スローガンを掲げるだけで終わるのではなく、トップ自身がこの考え方を信じて、行動で示すことです。トップが心の底から信じていないことは、部下も信じることはできませんからね。ここが原点にして最も重要な点だと思います。

次に、この考え方を伝達する仕組みを作ることです。例えば新入社員のオリエンテーションで社長自ら伝えるとか、定期的な教育訓練のメニューに組み込むとか、この考え方にそった行動をしているかどうかを評価制度に組み込む、といったような仕組み化ですね。

次に重要なのが管理職への浸透です。社長が信じていても、管理職が納期や利益を優先するような行動を取っていると、現場第一線の人たちは、品質重視の行動を取ることができません。管理職に対して社長自らが語りかけるような場を設けたり、管理職自身の評価項目の一つに加えるといった策が考えられます。

次は止める権限と通報ルートを整備することです。利益や納期を優先して品質や顧客要求をおろそかにしそうな状況が発生したときに、それを止める権限を現場に付与することです。といっても、上下関係や職場の空気があって止められないこともあるでしょうから、そうした状況をしかるべき立場の人に通報するようなルートを整備することですね。そうした通報が途中で握りつぶされたり、報復されないようにする必要もあります。

そして最後です。この考えが浸透しているかを測って見直しをすることが必要ですよね。この品質文化と倫理的行動の浸透に対してもPDCAを回す、ということです。この測定結果がマネジメントレビューにインプットされ、社長自らがチェックして対応を考え、改善をしていくという仕組みができるとよいでしょう。

「品質文化」と「倫理的行動」まとめ

「品質文化」と「倫理的行動」とは、つまり、「品質をないがしろにしない文化を作って定着させる」ということですが、そうした風土を作るというのは、言葉でいうのはかんたんなんですが、実際は相当難しいことなんですよね。

それを審査で確認するのも並大抵のことではないと思うんですが、規格がそう求めているので、できる限りのことをやっていくしかないんでしょうね。これは終わりのない改善をしていくことになるという、非常にシビアな要求事項ではないかという気がします。

この記事を書いた人
代表取締役 今村 敦剛

中小企業診断士/審査員(ISO9001, 14001, 45001)/日本心理学会認定心理士