おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ、今回は「ボイラー」に関係する環境法令を横断的に解説していきたいと思います。どういうときにどういう環境に関する義務を追うのかについて、ざっくりした全体像をおわかりいただけると思います。
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ボイラーとは何か
ボイラーとは、簡単にいうと、水を熱して蒸気やお湯を作る機械のことです。お風呂の給湯器や、やかんの大型版のようなものなんですが、工場などで、ものづくりやサービス提供に欠かせないお湯や蒸気を作っているんですね。しかし、とても高温になったり、高い圧力を使いますので、使い方を間違えると事故につながることもありますし、排ガスや排水が出るので環境に悪影響を及ぼす可能性があります。ということで、ボイラーには様々な法律・ルールがあるんですね
ケースバイケースで他の法律も関連する場合がありますが、これがボイラーに関する代表的な法律の例です。今日はこのうち、環境に関連する法律である右の3つの法律について解説をしたいと思います。

ボイラーと大気汚染防止法
まずは大気汚染防止法です。油だきやガス焚きのボイラーを使うと、ばい煙と呼ばれる排ガスがでます。このばい煙には、硫黄酸化物(Sox)、窒素酸化物(Nox)、すすなどのばいじんが含まれています。ばい煙は、空気を汚しますし、人がその汚れた空気を吸うと、健康に被害を及ぼす可能性があります。ですので、法律でこれを規制しようというのが、大気汚染防止法ですね。

大気汚染防止法では、すべてのボイラーが規制されているわけではありません。「規模要件」といって、ボイラーの規模で規制の対象かどうかが変わります。規制対象になるかどうか、ポイントになる軸が二つあります。

ひとつは横軸の「燃料の燃焼能力」です。これはボイラーが一時間に燃やす燃料の量を、重油に換算したものです。「50L/h」が一つの基準で、ここより右側にあたるボイラーは「ばい煙発生施設としての規制対象」になります。もうひとつは縦軸の「伝熱面積」です。実際に熱をやりとりしている面の広さのことですが、規制対象となる設備の伝熱面積が「10㎡」より下側が小型ボイラーで、上側がそれ以外のボイラーになるというイメージです。これらの要件に該当するボイラーかどうかは、メーカーに確認するのが確実だと思いますなお、この要件は、自治体の条例によって変わる場合がありますので、必ずご自身の自治体のホームページ等でも要件を確認してください。
ボイラーを持っている工場は、大気汚染防止法においてどんな義務があるのでしょうか。

一つ目は、「届出の義務」です。ばい煙発生施設に該当するボイラーを新しく設置したり、大きさや構造を変えたり、逆にやめたりする場合には、役所に届け出をしなければなりません。
二つ目は、「ばい煙を測って記録する義務」です。ボイラーから出てくる排ガスについて、決められた方法・決められた回数で測定しなさい、というルールがあります。測ったデータは、ちゃんと記録として残しておく必要があります。どれくらいの頻度で測定するかはケースバイケースですし、測定の方法などについては細かい規程がありますので、必ず役所の文書などを確認してください。
三つ目は、「排出基準を守る義務」です。測定した結果として、排ガスの中に含まれる硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんの濃さが、国や自治体が決めた排出基準の値より低くなるように、運転や設備の管理をしなければなりません。
四つ目は、「公害防止管理者を選ぶ義務」です。排出ガスの量が、1時間あたり1万立方メートル以上のような、比較的大きな工場では、資格を持った人の中から「公害防止管理者(大気関係)」という担当者を選任しなければなりません。
そして、ここには書いていませんが、このほかにも、例えばボイラーで事故やトラブルが起きて異常なばい煙が出たときには、すぐに原因を調べて対策をとること、必要に応じて行政に届け出ること、また、自治体から改善命令などが出た場合にはそれに従うこと、といった義務も定められています。
ボイラーと下水道・水質汚濁防止法
続いて、ボイラーと下水道・水質汚濁防止法について見ていきましょう。ボイラーは水を沸騰させる機械なので、水を使います。その水にはサビやスケールを防ぐ薬品が入っています。そのまま沸かし続けると、薬品や汚れがだんだん濃くなって、ボイラーの中にたまります。そこで、時々ボイラーの中の水を一部入れ替えます。この操作を「ブロー」と呼び、この時出てくる水を「ブロー水」といいます。このブロー水には薬品や不純物が入っていて、アルカリ性に偏っていることが多いので、そのまま流すと下水道や川の水をよごす心配があります。そのため工場では、ブロー水の pHが、法律などのルールで決められた範囲に入るように、中和処理をしてから流すことが一般的です。

では、ボイラーのブロー水にはどういう法律が適用されるでしょうか。どこにブロー水を流すかによって、適用される法律が変わります。
まず、下水道に流す場合です。このときは下水道法と、市町村の下水道条例が関係します。

下水道を使う工場は、特定施設(めっき槽や洗浄施設のような、水を汚す可能性のある施設)があるかどうかに関わらず、下水道法や条例で決められた「下水の排除基準」を守って、処理してから流さなければなりません。
一方で、工場内にめっき槽や洗浄施設などの「特定施設」が1つでもあると、その工場は「特定事業場」と呼ばれ、特定施設の設置届出や、水質の測定・記録、事故時の届出など、より重い義務が課されます。この場合は、ボイラーのブロー水も含めて、工場から出ていく排水全体が排除基準の対象になります。
特定施設がない工場でも、下水に流す以上は同じ排除基準を守る必要があり、基準を超えるおそれがあれば除害施設を設けて処理することが求められます。多くの自治体では、国の基準に加えて、より細かく厳しい基準を条例で定めていますので、実務的にはその自治体の排除基準に従うことになります。
つぎに、ブロー水を用水路や川、海といった公共用水域に直接流す場合は、水質汚濁防止法が関係します。こちらは、工場の中に水濁法上の「特定施設」が1つでもあれば、その工場は特定事業場となり、工場から出る排水全体に、法律の排水基準と、あれば自治体独自の基準がかかります。
逆に、特定施設がなく、自治体の上乗せ基準もない場合には、水質汚濁防止法の排水基準は形式的には適用されません。ただし、周辺住民や農業・漁業への影響なども考えると、実務上は水濁法の基準などを目安に中和処理を行ってから排水するべきでしょう。
ボイラーと省エネ法・温対法
最後に、省エネ法・温対法とボイラーの関係についてお話します。ボイラーを動かすためには、いろいろなエネルギーを使います。たとえば重油などの「油」、都市ガスやLPガスなどの「ガス」、それから「電気」、最近話題の「水素」などです。種類は違いますが、すべてボイラーを動かすためのエネルギー源です。

油やガスは、ボイラーの中で実際に燃えて熱を出します。これが「設備利用時の燃料燃焼」です。電気はボイラーの中では燃えませんが、多くの場合は、どこかの発電所で石油やガスなどを燃やして作られています。これが「発電時の燃料燃焼」です。そして水素は燃やすと二酸化炭素は出ませんが、水素そのものを製造するときに、やはりどこかで燃料が燃えていることが多いので、「製造時に燃料が燃焼します」。どこで燃えているかは違っても、結局どこかで燃料が燃えている、というのがポイントです。一番下の緑の「排熱回収」は、燃料そのものではなく、燃料を減らすための工夫です。本来なら捨ててしまうはずの熱を回収して、別の用途に使うことで、ボイラーに入れる燃料や電気の量を減らすことができます。
このように、燃料を燃やしてボイラーを動しているので、ボイラーの使用は、結果として「エネルギー消費」と「温室効果ガスの排出」につながります。
工場や会社全体で使っているエネルギーをすべて足し算して、原油に換算した量が、年間でおよそ1,500キロリットルをこえてくると、その事業者は、省エネ法や温対法の本格的な規制の対象になってきます。細かい区分はいろいろありますが、「たくさんエネルギーを使う大口事業者は、しっかり計画を立てて、省エネや温室効果ガスの削減に取り組んでください」というのが、これらの法律の基本的な考え方です。
では、省エネ法や温対法の対象になる会社にどんな義務があるのかを、ざっくり見ていきます。

まず「省エネ法」からです。1つ目が「エネルギー管理者などの専任義務」です。エネルギー消費設備の維持管理や、エネルギー使用方法の改善などに取り組む責任者を置きなさい、という決まりです。
2つ目が「エネルギー使用状況などの定期報告義務」です。1年間にどれだけ燃料や電気を使ったのか、その結果エネルギー原単位はどうなったのか、といった情報をまとめて、毎年国に報告する義務です。
3つ目が「中長期計画の提出義務」です。ただ結果を報告するだけでなく、「今後数年間でどのくらいエネルギー効率を良くしていくのか」といった計画も、原則として毎年出すことになっています。
次に「温対法」です。ここでの大きな義務は、「温室効果ガス算定排出量報告義務」です。さきほどはエネルギーの量を報告していましたが、こちらでは、そのエネルギーの使用によって最終的にどれだけ二酸化炭素などの温室効果ガスを出したのかを、自分たちで計算して、毎年国に報告します。
「たくさんエネルギーを使っている事業者」は、エネルギーの使い方や温室効果ガスの排出に対して、しっかり責任を持ってくださいね、というのが、これらの法律のねらいになります。
ボイラーと環境法令まとめ
はい、というわけで「ボイラー」に関係する環境法令を横断的に解説しましたがいかがだったでしょうか。今日の動画を一言でいうと、ボイラーは安全運転だけでなく、環境と省エネ基準の両方を守るマネジメントが必要だ、というお話でした。法に違反すると罰則だけではなく、会社の評判を落とすことにもなりかねませんので、しっかりとマネジメントしていただきたいと思います。
