おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO42001各箇条解説シリーズ、今回は箇条9.3「マネジメントレビュー」について解説をします。トップマネジメント(経営層)がAIマネジメントシステムをどのように見直し、どのような意思決定を下すべきかを解説します。
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ISO42001 箇条9.3の位置づけ
まず、今日説明する箇条9.3の位置づけです。箇条9.3は「パフォーマンス評価」に位置づけられています。箇条9「パフォーマンス評価」は、これまで計画し実施してきたAIマネジメントシステムについて、チェックをする部分でしたね。今回説明する箇条9.3は、運用の結果をまとめてトップがチェックし、今後の方針や改善の指示を決める場です。「経営会議」や「最終報告会」のような位置づけと思っていただいたらいいと思います。
マネジメントレビューの目的
まずはマネジメントレビューの目的から押さえておきましょう。マネジメントレビューの目的は、AIマネジメントシステムが適切か(状況や目的に合っているか)、妥当か(仕組みや資源がじゅうぶんか)、有効か(狙いどおりの結果につながっているか)をトップが確認することです。

ISO42001 箇条9.3の要求事項
では箇条9.3の要求事項を見てみましょう。要求事項は4つあります。

1つ目の要求事項です。「トップマネジメントは、あらかじめ定めた間隔で、AIマネジメントシステムをレビューしなければならない」としています。例えば「半期に1回」や「年に1回」のように決めて、定期的に開催してください、ということです。AIを取り巻く環境は変化が激しいので、それなりの頻度でやるのがいいんじゃないかという気はしますね。
次の要求事項は「マネジメントレビューへのインプット」です。これは、その経営会議で「どんなトピックを経営者に報告するか」というリストです。規格では a) から e) まで、5つのトピックが指定されています。

具体例として「顧客対応用のAIチャットボット」を運用しているケースで、この5つの報告項目を解説してみましょう。
まず a) は、前回のマネジメントレビューで決まった宿題の進捗です。例えば「前回決めた安全対策は完了したか」「教育計画は実施できたか」など、決めたことが実行されているかを報告します。
次に b) は、外部・内部の状況の変化です。例えば「政府から生成AIに関する新しいガイドラインが出た」という外部の変化や、「担当者の配置が変わった」「運用範囲が広がった」といった内部の変化など、AIマネジメントシステムに影響する変化を報告します。
次の c) は、利害関係者のニーズや期待の変化です。例えば「顧客が回答の根拠提示をより強く求めるようになった」とか「取引先が説明責任やログ保存を重視するようになった」など、関係者の要求の変化ポイントを報告します。
d) は、AIマネジメントシステムのパフォーマンス情報です。パフォーマンスというのは、何かの実施結果・測定結果などを指します。そうした結果のトレンド、例えば増えているのか減っているのかとか、改善しているのか悪化しているのかを報告します。例えばチャットボットの例で言うとす。「回答精度が目標の95%から90%に低下傾向」とか「ハルシネーションによるクレームが先月3件発生」といったことの報告ですね。規格では、少なくとも3つのトレンドを報告することを求めています。それは、不適合と是正処置、監視・測定の結果(9.1の結果)、そして内部監査の結果(9.2の結果)です。
最後の e) は、継続的改善の機会です。例えば「評価方法を改善できないか」とか「教育を追加すべきではないか」「運用ルールを簡素化できないか」など、今よりももっと良くする余地を、トップに報告します。
次の要求事項は「マネジメントレビューの結果」です。これは会議のアウトプット、つまりトップによる「決定事項」です。トップは、インプットについての報告を受けたあと、少なくとも次の2つに関する決定を下さなければなりません。
1つ目は「継続的改善の機会」に関する決定。2つ目は「AIマネジメントシステムを変更する必要があるかどうか」です。先ほどのチャットボットの例で言えば、精度の低下という報告を受けて、トップが「来期の予算を増やして、データセットを追加購入する」とか「リスクが高まっているから、AIの利用ルールを見直す」といったような、指示を出すイメージです。
最後の要求事項です。これらの結果は必ず、議事録など結果を示す文書化した情報として残さなければなりません。「トップがどんな決定をしたか」を証拠として残してくれ、ということですね。
まとめ
はい、というわけで、ISO42001箇条9.3「マネジメントレビュー」について解説をしましたがいかがだったでしょうか。今日の解説を一言でまとめると、「現場の実態をトップが定期的にレビューし、改善の意思決定を行い、その結果を記録として残す」ということでしたね。現場は現場でAIに関する仕事のやり方を見直す必要はありますが、投資が関係することや、大きく仕組みを変えるようなことは、トップによる判断が不可欠です。そうした「大きな改善」をするために、定期的にトップを巻きこんでください。
