おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今回はEUが現在制定中の、AI規制法案(AI act)についてざっくりと解説をします。まずはこの法案が制定される背景について説明をします。
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参考資料
EUDRに関するEU公式ページ(英語)
EU官報に掲載された法案本文(英語)
※規制対象原材料・製品リスト(Annex1)も上記URLから参照可能
総務省による法案の仮訳(日本語)
JETRO記事(日本語)
EU AI ACTが制定される背景(AIにまつわる事件とリスク)
まずはEUでAIが規制されようとしている背景を説明しましょう。AIは我々の生活を便利にしてくれるツールですが、同時に問題も生じています。
例えばアメリカでは、ビジネス特化型のSNS「LinkedIn」が、AIを利用した、求職者と求人のマッチングシステムを運用しています。しかし、このシステムは男性求職者を女性よりも推薦しやすいという偏りを持っていたそうです。人が意図的にそう設定したわけではなく、AIが求人パターンを学習した結果、このような偏りが生じたそうです。
またイギリスではClearview AIという顔認識技術を使ったサービスを提供している会社があるんですが、FacebookやInstagramの投稿から数十億枚の顔写真を収集し、データベースを構築したんだそうです。すると、誰かの顔の写真をそのシステムにアップロードすれば、数十億枚の画像データベースの中から一致するものを見つけることができたんだそうです。それはプライバシー保護的にどうなんだ?ということで、イギリス政府はこの会社に対して750万ポンド以上の罰金を科して、イギリス居住者のデータの削除を命じました。
さらに、イタリアではChatGPTが一時的に使用禁止となりました。その理由としては、EUの規則(GDPR)に基づいて個人情報を保護していないという点と、未成年者に対して不適切な回答をする可能性があるため、だそうです。この結果、OpenAI社はChatGPTのシステムを改善する必要性に迫られました。
一方、日本では大きく報じられるようなAIによる事件はまだ聞きませんが、「AI戦略会議」という政府の有識者会議で、AIにまつわるリスクとして7つのポイントが挙げられました。こうしたリスクがあるから、注意しなきゃいけないと、日本でも言われ始めたということですね。
EUがAI規制の先駆的存在に
このような事件や議論があり、世界各国では、AIを法律で規制すべきかどうかの議論がいま盛んになっています。その中でも最も早い動きを見せているのが、EU(欧州連合)です。
EUにおけるAI規制法の法案は2021年4月に、欧州委員会から議会に提案されています。そして欧州議会はこの6月、委員会の提案に対して投票を行い、賛成多数となりました。まだ法律が成立したわけではありませんが、成立に向けて大きく前進した形ですね。このようにEUは、世界の中でもかなり早く、AIに関する規制を具体化しています。
EUは実際、2019年の時点で既に、AIに関する倫理ガイドラインを定めるなど、相当早い段階からAIに関連するリスクに対処してきています。そうした点からみても、このEUの「法律」は、今後、世界各国が同様の法律を作るにあたっての標準となる可能性があります。