おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO42001各箇条解説シリーズ、今回は箇条7.1「資源」について解説をします。AIMSにおける資源とはなにか、それをどう管理すべきかの全体像がわかります。
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ISO42001 箇条7.1の位置づけ
箇条7.1の位置づけについて解説しましょう。箇条7.1は箇条7「支援」に位置づけられています。AIマネジメントシステムの活動に必要な資源を決定し、確保することが求められています。
ISO42001 箇条7.1の要求事項
箇条7.1の要求事項はたった一つです。AIマネジメントシステムに必要な資源(例えば人やモノ、情報など)を決め、提供しなさい」ということですので、理解も難しくはないと思います。なお、規格の附属書Aでは、資源の“文書化”が要求されています。これについても後で説明をします。
AIMSにおける資源の例
そもそも「資源」とは何でしょうか?AIマネジメントシステムにおける資源の例をかんたんに紹介しましょう。
一般的に資源とは、大きく、ヒト・モノ・カネ・情報の4つに分類されます。

まずヒト(つまり人的資源)です。ここは実際に手を動かす人たちです。エンジニア、プロジェクトマネージャー、法務や規制を担当する人、品質をチェックする人、そしてデータサイエンティストやセキュリティ・プライバシーの専門家などがあります。こうした人達はもちろん、ちゃんと仕事ができるだけの知識や経験・能力を備えている必要があります。
次にモノです。これも様々ありますが、規格の附属書Aに基づくと、大きく2つのカテゴリーがあります。1つ目はシステム・コンピューティングリソース。これはハードウェアやOS、ネットワークなど、AIを動かしたり利用したりする“土台”のことです。例えば学習用サーバや通信・ネットワークもここに入ります。2つ目はツールリソースです。これはAIを動かしたり利用したりするための道具のことで、コードを書いたり、実験したり、バージョンを管理したりするようなツールのことです。例えばGitHub、PyTorch(パイトーチ)、Dockerのようなツールがあります。
3つ目はカネです。プロジェクト予算ですね。サーバやクラウドの費用、データの準備やツールの費用などのことで、計画的なお金の配分は、プロジェクトには欠かせませんよね。
最後は情報です。ここも附属書Aに基づくと、データリソースというカテゴリーがあります。これはAIが学習に使うデータそのものです。それ以外にも、方針・手順書・法令・契約などの情報があります。
AIマネジメントシステムを運用するにあたり、こうしたもののうち、必要なものを特定し、提供をしなさいと規格は言っています。
資源管理プロセスを確立するべき
箇条7.1では「必要な資源を特定し、提供しなさい」とだけ言っていますが、ISOの基本はプロセスアプローチですので、資源管理プロセスというものを確立して、資源の特定と提供をするほうが合理的でしょう。つまり、資源をどうするかを行き当たりばったりで決めるのではなく、管理するための標準的な流れを決めて、そのとおりに管理をするということですね。
具体的にはどのようなプロセスになるでしょうか。一つの例をお見せします。

まず出発点になるのがインプットです。お客さまの要望や現場のニーズ、箇条6.2で定めたAI目標、そして事前に行ったリスク分析の結果などをもとにして、最初のステップ「資源の特定」を行います。例えば、どんな人が何名必要かとか、どの機材やソフト、どのデータが要るのかなどを具体的に洗い出します。
次に、その内容の妥当性を検討して投資の判断をし、妥当だと決まったものを予算に組み込みます。お金の段取りがついたら、機材を手配したり人を採用したりして、現場に投入します。新しい資源を導入するということは、それに伴って作業方法や担当者などが変更になりますので、変更によって不具合が生じないように管理をします。そして定期的に、使われ方や性能などに問題がないかを確認し、必要に応じて見直します。
この一連の活動の結果として、資源台帳や教育訓練の記録、調達や変更の承認記録、点検・メンテナンスの記録、発注書や契約書といった証拠がアウトプットとして残る、という具合ですね。
ちなみに箇条7.1自体には書いていませんが、附属書A4.2で、資源に関する文書化が要求されています。 この図で示しているアウトプットのようなものを文書化する必要がありますね。
最後に、この資源管理は誰が主に責任を持つかというと、これはトップマネジメントだと思います。箇条5.1で明確に、資源が利用できるようにすることはトップマネジメントの責任だと書いていますね。
