おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001:2015各箇条解説シリーズ、今日は箇条9.3「マネジメントレビュー」について、何回かにわけて解説をします。1回目の今回は9.3.1~9.3.2の規格要求事項の解説を中心にお話します。
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箇条9.3「マネジメントレビュー」の位置付け
まずは箇条9.3「マネジメントレビュー」の位置付けを見てみましょう。
箇条9は、品質マネジメントシステムが、本当に成果を生んでいるか、うまく機能しているかを評価する部分です。この箇条9の最後の項目であるマネジメントレビューは、品質マネジメントシステムがうまく機能しているかを監視したり測定したり、内部監査などをして調べた結果などをトップに報告し、もっと成果があがるように品質マネジメントシステムを継続的に見直しすることを定めています。
9.3.1「一般」の規格要求事項
9.3.1の規格要求事項ですが、ここは「マネジメントレビューをやりなさい」と言っているだけですね。しいていうとポイントは1つだけで、内部監査と同様に「あらかじめ定めた間隔で」と書いています。いつ、どのくらいのスパンでやるかは企業が決めるなさいということですね。一般的には、その会社の年度末・もしくは年度初めに行うというケースが多いのではないかと思います。
9.3.2「マネジメントレビューへのインプット」
続いて箇条9.3.2の規格要求事項をまとめて解説します。ここでは、マネジメントレビューのインプットを定めています。9.3.3の「マネジメントレビューのアウトプット」とあわせて、9.3.2~9.3.3に書いていることは、マネジメントレビューの議題のようなものと思ってもらうとわかりやすいと思います。つまりここに書いていることをマネジメントレビューのなかで、一つ一つ確認し、話し合い、対応を考えていくことが求められています。
インプット項目を一つずつ解説していきましょう。まずはa)前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況です。前回のアウトプット、つまり「こうしよう」と前回決めたことが、ちゃんと実行されたか、定着しているかについて確認をします。
b)は品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化ですね。たとえばこの1年間を振り返ってみて、どんな課題があるかを総括します。最近は人手が足りないとか、関連する法律が変わった/変わる予定があるとか、こんな新しい技術が最近あるようだとか、他社ではこんなことになっているようだ、みたいなことですかね。こうした課題の変化を材料にして、新しい打ち手を経営層が経営判断をします。現場で困っていることなどが、経営層に届くように課題の変化を明確にするのが効果的でしょうね。
c)については細かく1)から7)まで項目があります。
c)の1番目は顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバックです。これは箇条9.1.2で監視しレビューした「顧客満足」に関する情報をまずは思い浮かべましょう。顧客満足を監視するために、顧客アンケートを取るというような会社があると思いますが、そのアンケートの分析結果をトップに報告する、みたいなことですね。ここで気をつけないといけないのは、アンケートの生データではなく、ちゃんと分析をした結果をトップに報告しないといけませんね。したがって、マネジメントレビューに先立って、データの分析がきちんとできていないと、マネジメントレビューは効果的にはならないでしょうね。
2番めは品質目標が満たされている程度です。たてた品質目標がどの程度達成できたかについての報告ですね。達成したとしても達成できなかったとしても、なぜそういう結果になったかという分析がやはり重要ですので、ここも単に品質目標の結果をインプットするだけではなく、そういう結果がでた理由や背景、そして今後の見通しなども説明することがポイントでしょう。
3番めはプロセスのパフォーマンス、製品・サービスの適合です。プロセスのパフォーマンスというのは、各プロセスのKPI(重要業績評価指標)のことと言ってもよいでしょう。例えば、○○工程の工程内不良率、作業のやり直し回数、在庫数量、1時間あたりの平均出来高、設計ミスの数などなど、会社にはいろんなプロセス(作業)があると思いますが、それらの良し悪しを判断するための指標のことですね。この指標について、この1年間どうだったか(よくなっているか、悪くなっているか、現状維持か)を報告します。製品及びサービスの適合というのは、流出した不良の数やクレームの数などのことと考えると良いでしょう。これも生データではなく、ちゃんと分析された資料として報告をするほうが、経営判断がしやすくなりますね。
4番目は不適合及び是正処置で、不良やクレームだけではなく、内部監査や外部審査で指摘のあった不適合と、その是正処置の内容について報告をします。
5番目は監視及び測定の結果です。箇条9.1で、何を監視し、測定するかということを決めましたが、その結果のことですね。プロセスのパフォーマンスと重複している部分もあろうかと思います。
6番目の監査結果は、内部監査、外部審査、そして顧客から直接監査を受けるなどがあった場合は、不適合や指摘事項、推奨事項、監査の所見などについて報告をします。
7番目の外部提供者のパフォーマンスは、箇条8.4などで行った供給者の評価結果の報告などです。重要なサプライヤーに絞った報告でもよいでしょう。
つづいてd)です。資源の妥当性です。資源というのは人、モノ、金のことですが、いまのわが社には人、モノ、金がじゅうぶんかどうか、必要な部署に行き届いているか等について報告をします。人手が足りないとか設備が古くなって作業性が悪い、みたいな現場の実態を報告すると、効果的な経営判断ができそうです。
e)はリスク及び機会への取組みの有効性ですね。箇条6.1でリスクや機会を洗い出しましたが、リスクや機会は変わっていくものです。去年の今頃はウクライナ危機などありませんでしたし、コロナもこの1年でワクチンが普及して状況が変わりました。リスクや機会に変化が生じているはずですね。そうした変化の中で、今の取組は本当に効果を生んでいるのか、他の取組が必要ではないかなどレビューします。状況が変わっているのに、いつまでも同じことを続けないために、こうしたインプットが必要です。
f)は改善の機会ですね。内部監査や外部監査での推奨事項や、その他現場からの改善提案などを報告するのが望ましいでしょう。
以上がインプットですが、現場の実態を正直にトップに伝える、というのが、効果的なマネジメントレビューの考え方の一つでしょうね。