おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO42001各箇条解説シリーズ、今回は箇条6.2「AI目標とそれを達成するための計画策定」について解説をします。AIシステムの開発や運用、もしくは利用にあたって定めるべき目標をどのように扱えばよいのか、具体例を使って解説します。
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ISO42001 箇条6.2の位置づけ
まず、今日説明する箇条6.2の位置づけについて解説しましょう。
箇条6.2は箇条6「計画」に位置づけられており、組織がAIに関する目標を定め、それを達成するための計画を立てることを求めています。
箇条6.2では3つの要求事項があります。これを説明する前に具体的な目標の例を見ておくと、理解がしやすくなります。

AI目標の具体例
AI目標の具体例として「自社Webサイトに導入するチャットボットの透明性確保」という目標を立ててみました。最近よく見かけるチャットボットを例にした目標です。

AI目標は、AI方針やリスク評価の結果を基に設定します。例えば、このチャットボットの場合、ユーザーがAIをオペレーターと誤認したり、回答に不満を持ったりするリスクが考えられます。こうしたリスクを回避するために、チャットボットの機能や挙動を改善するというのがこの目標です。
目標が達成されたかどうかを判断するためには、明確な基準が必要です。ここでは「顧客調査で透明性に関する満足度80%以上」という達成基準を設定し、目標が具体的に測定できるようにしています。この達成基準は、定量的な数値でも、定性的なものでも構いませんが、何をもって目標達成とするかを明確にすることが重要です。
目標達成に必要なリソースも明確にしましょう。この例では、プロジェクト管理者(PM)、AIエンジニア、UXデザイナー、データ分析者といった担当者が関与することを示しています。
実施事項には、チャットボット上での注意喚起や、回答の参照元情報へのリンク表示など、透明性を高めるための具体的な施策を記載します。このように、目標シートでは「何を、誰が、いつ」実行するのかを明確にします。
このように、AI目標を設定する際には、目標を明確にし、達成基準、必要なリソース、実施事項、担当者、スケジュールなどを定めて管理することが重要です。
ISO42001 箇条6.2 要求事項
ではこういう目標のイメージをもって、箇条6.2の3つの要求事項を一つずつ確認していきましょう。
まずは1つめの「関連する機能・階層で目標を立てる」というものです。要は、AIシステムの開発や運用・利用に関わる部署や役職で、AI目標を設定しなさいということですね。反対に、AI開発や運用・利用に直接関わらない部署や役職では、無理に目標を立てる必要はありません。
続いての要求事項です。「適切に管理・共有」する、という要求事項ですが、具体的にはAI方針と一貫していること、測定可能であること、利害関係者の要求事項を考慮に入れていること、目標の進捗を監視すること、関係者に伝達すること、必要に応じて見直しされること、そして、文書化することなどが求められています。ですので、先程の目標例のような目標管理シートのようなものを作って、それをもとに進捗管理やコミュニケーションをする必要がありそうですね。
ここでの大きなポイントの一つは「測定可能である」という点です。さきほどの目標例でも「顧客調査で透明性に関する満足度80%以上」という達成基準が書かれていますが、これが「測定可能である」という要求事項に対応している箇所です。目標が達成したかどうかを判断できる基準を明確にしなければなりません。
最後の要求事項です。「達成計画を具体的に策定」するというものですが、これも先程の目標例で見たように、具体的に何をするか、どんなリソースを使って取り組むか、誰がやるか、いつまでにやるか、取り組みの結果をどのように評価するか、といったことを決めておくことが求められています。
「取り組みの結果をどのように評価するか」というのは少し説明が必要です。例えばこの目標だと、達成基準が「顧客調査で透明性に関する満足度80%以上」でしたよね。これをクリアしたかどうかをどう評価するかというやり方を決める、ということですね。例えばどういう顧客調査の項目を用意するのかとか、いつ、どのタイミングで、誰に対して、どのようなサンプリングをして、回答をどのように集計して…という、結果の評価のやり方を明確にしておく、というのが「取り組みの結果をどのように評価するか」という要求事項の意味ですね。こうしたことも目標を立てる段階であらかじめ決めておき、文書化しておくといいでしょうね。
ISO42001 箇条6.2 まとめ
はい、というわけでISO42001箇条6.2「AI目標とそれを達成するための計画策定」について解説をしましたがいかがだったでしょうか。今回のポイントは「目標は細かく決めて文書化して共有する」ということですね。曖昧な目標では、目標達成が困難になるからですね。これはAIガバナンスに限らず、ビジネスやプロジェクト管理の基本的な考え方だとして覚えておいていただくといいかなと思います。
