おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
AIリスク・規制の超基礎というテーマで連載します。AIは私たちの生活を便利にしてくれる一方で、様々なリスクも抱えています。今回は、日本におけるAI規制の動向をお話します。
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【最新AI法案解説!】【AIリスク・規制超基礎】 AIの何が問題で 企業は何をすべき?(1)
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おことわり
この記事の内容は、2025年1月時点の情報です。AIの世界は変化がめちゃめちゃ早いので、この情報はたぶんすぐに陳腐化します
日本におけるAI規制の基本的考え
日本におけるAI規制の基本的な考えを、もう少し詳しく見てみましょう。日本は「競争力強化」と「リスクへの対応」の2つをバランスよく両立させようとしています。簡単に言えば、AIを使ってイノベーションをどんどん進めつつも、その結果として起こり得る問題にもきちんと対応しよう、というスタンスです。良くない言い方かもしれませんが、二兎を追う、というスタンスでしょうかね。
これを目指すために、具体的に何をしようとしているのでしょうか。1つ目が、「ガイドライン」を整備する方法です。ガイドラインって、企業が自主的に参考にするための指針みたいなものです。法律みたいに罰則はありません。ただ、法律と違って、内容を素早く、柔軟に変えられるのがポイントです。技術の進化や国際的な動きに合わせてすぐに見直せるので、最新の状況に対応しやすいというメリットがあります。ガイドラインについては、2024年に経済産業省が新しく作った「AI事業者ガイドライン」があります。これには、AIを作る人(開発者)、それを提供する人(提供者)、そして実際に使う人(利用者)が、それぞれどんなことに注意して取り組むべきかがまとめられています。AI事業者ガイドラインについては、この後もう少し解説をします。
2つ目が、「法整備」です。法律で規制をするということですが、これは大きく分けて、今ある法律を活用する方法と、新しい法律を作る方法があります。例えば、著作権法や個人情報保護法など、既存の法律にAI利用時の注意点を追加して整理する取り組みが進んでいます。さらに、2025年2月「AI法案」と呼ばれる新しい法律が国会に提出される予定です。特に既存の法律には罰則があるので、AIに関するルールをしっかり守らせる力がありますが、法律の制定には時間がかかるという弱点もあります。技術の進化にスピード感を持って対応するには、ガイドラインと法律、両方をうまく組み合わせようというのが、日本政府のスタンスですね。
さて、もう一つ重要な視点があります。それは、「国際的な連携と協調」です。AIサービスはインターネットを通じて世界中で利用されるので、各国がバラバラに規制をしてしまうと混乱が起きる可能性があります。例えば、規制が緩い国を拠点にしたサービスがあると、そのサービスを使う私たちの個人情報や機密情報が守られない、なんてことも起こり得ますよね。
そのため、AIに関する取り決めは、ある程度世界中で共通のルールを作ろうという流れになっています。日本もこのスタンスを取っていて、国際的な指針やガイドラインを参考にしてルールを整備しています。
AI事業者ガイドラインとは
AI事業者ガイドラインがどのようなものかを、簡単に説明しておきます。
AI事業者ガイドラインは、ガイドライン本編と、別添(付属資料)の2部からなります。ガイドライン本編では、主に2つのことが書かれています。一つは、AIによりどのような社会を目指すのかという理念です。ざっくりいうと、人の尊厳が尊重される社会、多様な人々が多様な幸せを追求できる社会、そして持続可能な社会の3つを、AIの発展によってめざしています。
そのために何をやらなければならないかがこのガイドラインに書かれているのですが、一言でいうと、AIを開発したり、提供したり、利用する企業に対して「AIガバナンスを実践しましょう」と言っています。AIガバナンスというのは、AIのリスクを認識し、必要な対策を取るための組織的な仕組みのことです。そうした仕組みを作り、実践するためにやるべきことをガイドラインでは示しています。
ただ、ガイドライン本編では、抽象的な話が多いので、ガイドラインの別添(付属資料)で、具体的にどのようなAIガバナンスを作り、実践するかを、事例などを用いて詳細に説明しています。
日本のAI法案について(2025年1月時点の情報)
今年2月の通常国会で、AI法案が提出される見込みです。この法案について、いろいろな報道が出ていますが、現時点でわかっている内容を4つにまとめてみました。ただ、国会提出前なので、内容が変わる可能性がある点にはご注意くださいね。
最初に挙げられているのは、「国際規範に則した指針の整備」です。これは、既に発表されている「AI事業者ガイドライン」をはじめとする、国が定める各種指針のことを指していると考えられます。
2つ目は、「調査・情報収集と指導、情報提供」です。これ、けっこう重要なポイントですね。例えばですが、もし自動運転AIに重大な欠陥が見つかって「事故の可能性が高い」とわかった場合、政府が関係事業者に対して調査を行い、原因を究明します。そして必要に応じて再発防止の指導を行い、その対応を国民に広く周知する、というイメージです。こうした仕組みが法案に盛り込まれることで、AIに起因するトラブルへの対応力が強化するのを狙っているのだろうと思います。
次に、「AI戦略本部の設置」です。「司令塔的な役割を果たす」と報じられていますが、これが具体的に何をする組織なのかは、まだよくわかっていません。もしかするとEUの「AIオフィス」に近い機能を持つのかもしれません。EUのAIオフィスは、加盟国間の連携調整やAI法に準拠するための支援を行っています。日本のAI戦略本部も、事業者のサポートや規制の調整、AIの安全な利用促進など、似た役割を担うのではないかと推測されますが、これからの情報に注目です。
最後は、「基本計画の策定」です。これもまだ詳細が明らかになっていませんが、AIの研究開発や活用を進めて、国際競争力を高めるための計画が作られるようです。要はリスク管理に重点を置いた計画というよりも、「イノベーション促進」を目的としている基本計画を作る、ということなのでしょうね。