おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
公取委が中小企業の知財・生産データの「上納」の実態を調査し、独禁法上の禁止事例を示す指針に反映する予定があるそうです。わかりやすく解説します。
日経『中小の知財・データ「上納」、公取委が全産業4万社調査 AI普及念頭』
知的財産や生産設備データの提供を取引条件として強いる行為を独占禁止法で縛る
公正取引委員会は今月から、知的財産や生産設備データの提供を取引条件として強いる行為がないか、対象を中小企業中心に全産業へ広げて実態調査を始めるようです。公取委・中小企業庁・特許庁の合同で、業種の偏りを避けつつ約4万社に調査票を送り、今秋以降は当事者へのヒアリングも進める方針のようですね。
この背景には「成果物の権利が当然に発注側に帰属する」とか「二次利用ロイヤルティが支払われない」といったように、中小企業の知財やデータを軽く扱う取引先(大企業)がいることがあります。
独占禁止法では優越的地位の濫用を禁じていますが、従来の「営業秘密の開示強要」だけではカバーしきれない場面が増えているようで、公取委は未然防止のために類型の明確化と指針整備を強めていく、というのがこの記事の内容ですね。
具体的にどういう「上納」パターンがあるか?
具体的にどういう「上納」パターンがあるのでしょうか?ぼくがこれまで聞いたことのある話では、NCデータの提出を取引先の大企業に要求されたという話がありました。何に使うのかははっきり言わなかったようですが、最悪のケースだと、別のサプライヤー(この会社から見た競合他社)に渡される可能性などもありますので、経営上不利になる恐れもあります。
その他に想定される「上納」パターンは、たとえば、契約や検収条件に「成果物と派生物の一切の権利を将来分まで無償譲渡」といった包括条項を忍ばせ、対価や再利用範囲をぼかす型です。
また、共同研究・PoC(実証実験)を名目に、知財を一方的に相手方の帰属とし、無償・無期限・目的無限定での実施や二次利用を認めさせる型もあるでしょう。
ぼくが聞いたのは加工条件(NCデータ)でしたが、それ以外にも治具設計、原価見積ロジックといった製造関連のデータの提出を要求するという例もありそうです。
製造業だけではなく、SaaSやプラットフォームの規約で、アップロードした図面・画像・文章に広範な利用許諾や学習利用をデフォルト付与し、実質的にオプトアウトできない型や、クリエイティブ分野で二次利用ロイヤルティが支払われず、編集データやテンプレート一式の無償提供を迫られる型もありそうですね。
これらの共通点は「代替先が乏しい」「継続発注や支払いが人質」になりがちで、中小側が言われるがままにデータやノウハウを差し出してしまうことにありそうです。
なお、こうした事例は公取の調査結果がWebで公開されていますので、これを見るといろんな事例があることがわかります。
独禁法上の禁止事例を示す指針に反映
今後の公取委の対応としては、調査で得られた具体事例を整理し、独禁法上の禁止事例を示す指針に反映する検討が2026年度以降に進む見込みです。これにより、こうした「上納」が、より明確に“望ましくない取引慣行”として位置づけられる可能性が高いです。
中小企業としては、それを見越して備えるのが現実的です。具体的には、中小企業が保有しているデータを種類ごとに分類(誰のものか・何に使えるか等)を明確にして、「このデータは当社に帰属し、品質管理目的に限り相手方へ提供します。第三者提供・二次利用は禁止し、保存は○年までとします。」というように、契約で縛るような対応が必要ですね。
指針は追い風になりますが、結局は契約で守りを固めることが、いちばん確実な自衛策ですね。

