おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
中小企業向けの法人税率軽減措置について、政府は2025年度税制改正において、特例措置そのものは延長する一方、適用条件の厳格化を検討していると報じられています。この報道を考察します。
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時事通信『税率軽減の特例、要件厳格化 高所得の中小企業除外―政府検討』
中⼩企業者等の法⼈税率の特例見直しの背景
現行の法人税率は23.2%ですが、中小企業には19%の軽減税率が適用されています。さらに、年間所得800万円以下の部分については特例措置として15%まで引き下げられており、これが中小企業の税負担を大きく軽減してきました。しかしこの特例制度は、中小企業の成長投資や収益性向上に寄与していないとの評価が背景にあります。具体的には、政府税制調査会や総務省の租税特別措置等に係る政策評価の点検結果において、この特例措置が中小企業の成長投資や研究開発の促進といった効果を実現できていないとの指摘が相次いでいます。
賃上げや中小企業の規模拡大を促進したいという思惑も?
これはぼくの推測ですが、中⼩企業者等の法⼈税率の特例見直しの背景には、賃上げや中小企業の規模拡大を促進したいという政府の思惑もあるのではないかと思います。
法人税率と賃上げにはどのような関係があるでしょうか。法人税率が低いと、企業の税負担が軽減されるため、企業はより多くのキャッシュを手にする事ができます。企業はリスク回避の観点から、このキャッシュを再投資や従業員への分配ではなく、貯蓄(内部留保)として保持することを優先する場合があります。その結果、従業員への賃金アップやボーナスの増額、あるいは新たな雇用創出に回る資金が減少する恐れがあります。一方、法人税率が高まると「税金に取られるくらいなら、賃上げをしよう」というインセンティブが働く可能性があります。
また近年政府は、中小企業の規模拡大を推し進め、中堅企業へと成長をさせたいと考えています。一部の中小企業は、軽減税率の恩恵を維持するために、拡大や成長を避けるケースがあります。そこで中小企業への優遇策を減らすことで、中小企業にとどまりたいというインセンティブをなくすことを期待している可能性もあるでしょう。
いずれにしても、政府としては中⼩企業者等の法⼈税率の特例を現状通り維持するという動機はあまりなさそうだ、というのが今の状況です。
条件厳格化の可能性とその方向性
時事通信の報道によれば、所得が高い企業を特例適用対象から外す案が浮上しています。具体的には、所得額の上限を設けることで恩恵を受けられる企業を制限する可能性があるとされています。具体的にどのような制限がかけられるかは、今の段階では明らかにはなっていません。毎年12月に税制改正大綱が公表されますが、その中で明らかにされるものと思われます。