おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO45001:2018年版各箇条解説、今回は箇条4.3「労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲の決定」について解説をします。適用範囲の決め方には考慮すべき点が結構あります。どんな点を考慮しないといけないのでしょうか。
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ISO45001:2018 4.3 労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲の決定(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ISO45001:2018年版各箇条解説、今回は箇条4.3「労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲の決定」について解説をします。初 ...
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適用範囲を決めることのは、労働安全衛生MSのルールを組織のどこに当てはめるのかを決めること
では箇条4.3の規格要求事項ですが、この箇条は結構難解で、日本語が頭に入ってきません。まずは理解しやすいように、簡単なイメージを使って説明してみたいと思います。
「適用範囲を決める」ということは、ISO45001のルールを、我が社のどこまでに当てはめるかという範囲を決める、ということです。会社のルールでも、場所や部署によって違う場合がありますよね。例えば工場は2交代のシフト制だけれども、管理部門はフレックスタイム制を取っているとか、そういうことがありますよね。それと同じで、労働安全衛生マネジメントシステムのルールを、どこに当てはめるか、ということが、適用範囲を決めるということです。
境界と適用可能性
適用範囲を決める時、境界と適用可能性を決めなさい、と規格は言っています。
境界というのは、物理的・組織的にどこで区切るか、というものです。例えば管理部門、研究所、倉庫、工場など、それぞれ物理的な拠点がありますよね。この物理的な拠点のどれとどれにルールを当てはめるのか、ということですね。物理的な境界だけではなく、組織的な境界というのもあります。例えば工場では、加工課、溶接課、組立課のように、作業ごとに組織が分かれていたりします。こういうのも、ルールを当てはめる境界になりえます。
一方、適用可能性というのは、規格が我が社に当てはまるかどうか、ということです。例えばISO45001規格の箇条8.1.4.3は外部委託に関する要求事項ですが、そもそも我が社が外部委託をしていないような場合は、この規格に書いてある外部委託についてのルールを当てはめようがないですよね。この2点を決めるということが、適用範囲を決めるということでもあります。
適用範囲を決める際に考慮すべき3つのこと
そして、適用範囲を決める場合に、考えなければならないことが3つあります。一つが、箇条4.1で検討をした「外部・内部の課題」です。例えば、内部の課題として「今度新しい製品を作るときに、ちょっとヤバイ化学物質を使うことになるんだよね」という課題があったとします。そういう課題があったのであれば、ヤバイ化学物質を使う生産プロセスは、やはり適用範囲に含めるべきですよね。
次に考えるべきことは、箇条4.2で検討をした「働く人や利害関係者のニーズ・期待」です。例えば、取引先のリンゴマークの会社が、労働安全衛生に関するサプライヤー監査を毎年1回しにいくぞ、というような要求をしているとします。すると、リンゴマークの会社に納めている製品の生産プロセスは、やはり適用範囲に含めるべきですよね。
そして考えるべき3つ目のポイントは「計画または実行した活動」です。これは要するに、今やっている作業と将来やる予定の作業を考えて、適用範囲を決めなさいということですね。
結局、どこまで適用範囲に含めるべきなのか?
適用範囲は自由に決めて良いとは言え、規格を読んでいると、結局のところ、全部の製品・サービスや拠点や活動を含めないとダメなんじゃないの?という気もします。確かに、よほど特別な事情がない限りは、基本的には全部入れないとダメなんでしょうね。
ただ実際は、工場単位とか、事業所単位で認証を取得しているケースもたくさんあるので、考え方としては、あるトップマネジメントの管理下にあるすべての製品・サービス、部門や部署、工場などは、マネジメントシステムの適用範囲に含まれるべき、という理解になるのかなと思います。
適用範囲は、皆さんがたが自由に決めて良いということにはなっていますが、楽をするために恣意的に適用範囲を決めることや、利害関係者が納得できないような適用範囲の決め方はできないんですね。皆さんの会社の適用範囲を適切に定義することが、労働安全衛生マネジメントシステムの成果を上げるうえでの最初の一歩になりますので、よく考えて適用範囲を決めていただけたらと思います。
適用範囲は文書化が必要
箇条4.3の最後には「労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲は、文書化した情報として利用可能な状態にしておかなければならない」とあります。要は適用範囲を文書化しなさいということですが、一般的にはマニュアルに書くパターンが多いかなと思います。ウェブで適用範囲を公開する、というのも良いと思います。