おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
EUのAI規制法案である"EU AI Act"に関して、4/14時点での最新情報を、かいつまんでお伝えします。(情報源は、The EU AI Act Newsletter #75です)。
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ヨーロッパのAI政策に向けて、委員会が進む道を決める
ヨーロッパの「ヨーロッパ委員会(European Commission)」は、AIコンチネント・アクション・プランという新しい計画を発表しました。
この計画では、ヨーロッパがもっている強み(たとえば、すぐれた人材や伝統的な工業の力)を活かして、AIをもっと発展させようとしています。
この計画には、5つの大きな目標(柱)があります。
- AIに必要な**大規模なデータや計算の仕組み(インフラ)**を作ること
- たくさんの質の高いデータを手に入れられるようにすること
- AIを使うための**計算のルール(アルゴリズム)**を発展させ、大事な分野でAIを取り入れること
- AIのスキルや人材を育てること
- 法律などの手続きを簡単にすること
EU AI Actによって、ヨーロッパの中でAIのやりとりがスムーズにできるようになります。そして、この法律によって、ヨーロッパで開発・使用されるAIは、安全で、人権を守り、質が高いことが求められます。
この法律をうまく使えるかどうかは、ルールが実際に役立つかどうかにかかっています。そこで「AI法サービス窓口(AI Act Service Desk)」という、質問に答えてくれる場所ができます。特に、小さい会社やチームにとって役立つ案内をしてくれるそうです。
また、どんなサポートが必要かを知るために、「Apply AI Strategy」という国民の意見募集も行われています。
EUの議員たちが、「オープンソースAI」の定義に厳しい意見
【筆者注】オープンソースAIとは…中身が公開されていて、誰でも自由に使ったり改良できるAIのこと。例えばStable Diffusionという画像生成AIはオープンソース化されている。
EUの進歩的な考えをもつ国会議員30人が、「オープンソースAI」の定義をゆるくしてはいけないとEUに意見を送りました。
彼らは、「ライセンス(使い方のルール)が厳しいAIモデルを“オープンソース”としてしまうと、この法律の意味が弱くなってしまい、人々の権利やヨーロッパの競争力が危なくなる」と心配しています。
特に、アメリカの「Meta(メタ)」社が出している「Llama(ラマ)」というAIについて批判しています。メタは自社のLlamaモデルを“オープン”としながらも、他のAIの訓練に使うのは禁止し、しかもそれを使って成果を出すには特別な許可が必要だとしているのです。
議員たちは「競争相手が現れるまでは「オープン」と言い張っていますが、実際にはビジネス上の脅威になると制限をかけてきます。これは本当のオープンソースじゃない」と述べ、EUの法律ではMetaのAIをオープンソースとは認めないように求めています。
また、「Open Source Initiative(オープンソース・イニシアティブ)」という団体の定義を参考にするべきだ、と提案しています。
「AIリテラシー(知識)」の取り組みを集める新しいアンケート
【筆者注】AIリテラシーとは、AIを正しく理解し、使いこなす力のこと。
AIに関する知識を広げるために、「AIオフィス」というEUの機関が「AIリテラシーに関する取り組みを参照できる場所(リポジトリ)」を作っています。すでに、AI Pact(AIを正しく使う団体)から20件以上の取り組みが集まっています。
さらに多くの取り組みを知るために、新しいアンケート調査が始まりました。どんな団体でも応募できますが、とくにAI法の第4条(AIを使う前にやるべきこと)に関係する内容を歓迎しています。
AIオフィスは、寄せられた情報がちゃんと正しく、信頼できるかを確認してから、公開されている集まりに加えます。
このリポジトリは、AIを作る人や使う人たちが、お互いに学び合える場所になることを目指しています。
ただし、この中にある取り組みをマネしただけでは、法律に完全に合っているとは限りません。また、EUがその取り組みを「すごい!」と認めているわけでもありません。
このリポジトリは、第4条の実行を助けるための取り組みの一つで、AIの知識とスキルを広げる活動の一環です。今後は専用のウェブサイトも公開される予定です。