おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
12月13日、令和元年度補正予算案が閣議決定されました。これをうけ、経済産業省は令和元年度関係資料を公表しました。ものづくり補助金は、基金制度の再導入のほか、成果目標も見直される上、補助金返還措置や減点措置の導入など、制度が大幅に変更される見通しです。
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令和元年度経済産業省関連補正予算案の概要はこちらをご覧ください
令和元年度補正(2020年実施)中小企業生産性革命推進事業について
令和元年度補正(2020年実施)中小企業生産性革命推進事業については、下記の資料が公開されました。
大きなポイントと思われる点を、箇条書きにします。
- 基金化(中小機構に運営費交付金を交付し、そこから民間団体――おそらく中小企業団体中央会――に補助)
- 基金化により、複数年にわたって事業が可能に?
- 基金化により、通年で公募し、複数の締切を設けて審査・採択される
- 事業計画期間において、「給与⽀給総額が年率平均1.5%以上向上」、「事業場内最低賃⾦が地域別最低賃⾦+30円以上」を満たすことが申請要件。要件が未達の場合は事業者に対して、特別な事情がある場合を除き、補助⾦額の⼀部返還を求める
- 被用者保険の任意適用に取り組む事業者は優先採択?(加点?)
- 成果目標が変更(補助事業者全体の付加価値額が9%以上向上、補助事業者全体の給与⽀給総額が4.5%以上向上)
- 過去3年以内に同じ補助⾦を受給している事業者には、審査にて減点措置を講じる
基金化によるキーワードは「複数年」「通年公募」「複数の締切」
報道でも触れられていましたが、事業実施のスキームが基金形式となります。PR資料に見るスキームについて、従来のものと今回のものを比べてみます。
中小機構にいったんは交付金を支給し、そこから民間団体等(事務局公募はまだですが、おそらく中小企業団体中央会)を通じて中小企業へ交付するという仕組みです。この仕組みをとることで、予算の単年度主義にしばられず、「複数年」の事業実施が可能となります。
「複数年」と「通年公募」「通年締切」のイメージですが、下記のような運用になるのではないかと推察されます。(現時点での推察ですので正しい情報ではありません)
「中小企業基盤整備機構が複数年にわたって中小企業の生産性向上を継続的に支援する」という表現が、経済産業省の資料に書かれています。「複数年」の意味合いは二通りの可能性がありそうです。一つは事業実施期間(発注、納品、支払いを行う期間)が従来の2~5ヶ月程度から、複数年にわたるものとなる可能性です。もう一つは、公募そのものが2020年以降も、年度をまたいで複数年にわたり継続して行われるという可能性です。今回の3,600億円の予算規模から見て、この二通りの可能性の、両方が適用される可能性もあるではないかと推察します。
この変更は、中小企業にとっては大きなメリットが感じられる変更点でしょう。
給与支給総額に申請要件化、および目標未達時の返還
そして厳しくなったといえるのが、給与支給総額が申請要件化されることです。経済産業省の資料には次のように記述されています。
当該事業を通じて、賃上げにも取り組んでいただきます。なお、積極的な賃上げや被用者保険の任意適用に取り組む事業者は優先的に支援します。
※事業計画期間において、「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」、「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすこと等を申請要件とします。(持続化補助金及びIT導入補助金の⼀部事業者は加点要件)
※要件が未達の事業者に対して、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合や、付加価値額が向上せず賃上げが困難な場合を除き、補助金額の⼀部返還を求めます。
(赤線強調筆者)
事業計画期間において、「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」、「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすこと等を申請要件化されます。つまり、これを行うことを約束しなければ申請ができない、ということでしょう。事業計画期間は、3~5年の計画期間のことでしょう。事業実施期間(発注、納品、支払いを行う期間)とは異なると思われますので、中長期に渡って賃上げと最賃+30円を約束する必要があります。
そして要件が未達の場合は、補助金額の一部返還がありうるということです。「一部」がどの程度なのかは現時点では不明です。また、適用除外事項として「天災など事業者の責めに負わない理由がある場合」「付加価値額が向上せず賃上げが困難な場合」と書かれています。
「天災の場合」とは、おそらく激甚災害指定された場合などでしょう。そしてあいまいなのが「付加価値額が向上せず賃上げが困難な場合」です。付加価値額は「営業利益」+「人件費」+「減価償却費」で計算されます。この公式から見ると、例えばですが売上が伸びずに営業利益ベースで赤字となった場合は賃上げが行われなくても補助金の返還は免除される、と読むことも不可能ではありません。このあたりは続報を待ちたいところです。
成果目標が変更
経済産業省資料における成果目標が変更となっています。ここでいう成果目標とは、この施策を通じて経済産業省・中小企業庁が目指している目標のことです。ただし、経済産業省・中小企業庁の目標といっても、申請する中小企業にとって無関係ではありません。これを達成することが行政の目的なのですから、審査の場では、この目標達成に資する計画であるかどうかを厳しく評価されることでしょう。
従来(H30年度)の成果目標と、今年度補正における成果目標を比較しましょう。
H30補正 | R元年補正 |
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ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業により、事業終了後5年以内に事業化を達成した事業が半数を超えることを目指します。 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業により、事業終了後3年以内に、以下の達成を目指します。 ・補助事業者全体の付加価値額が9%以上向上 ・補助事業者全体の給与支給総額が4.5%以上向上 ・付加価値額年率平均3%以上向上及び給与支給総額年率平均1.5% 以上向上の目標を達成している事業者割合65%以上 |
「目標を達成している事業者割合65%以上」となっていますね。従来の「半数」に比べて目標値も厳しくなっていますから、その分、審査でも厳しく見られるものと考えたほうがよさそうです。(鉛筆をなめた計画であるかどうかは、案外すぐにわかるものです)
この変更の背景には、財務省から「生産性向上との関係が不明確な成果目標や、客観的な政策効果を測定できない成果目標が設定されているものが存在している」と指摘されたことに関係があるものと思われます。財務省はかねてから「事業化」の定義に疑義を投げかけていましたので、今回からは「事業化」が目標から外されています。
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「ものづくり補助金」見直し?成果目標不明確のため厳格化の意向 財務省
おはようございます。マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 10月23日の財政制度等審議会で、財務省は「ものづくり補助金」の見直しについて触れました。補助の基準や成果の評価を厳密にするようにとの ...
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過去3年以内に同じ補助⾦を受給している事業者には、審査にて減点措置を講じる
小規模事業者持続化補助金では、リピーターの減点措置はすでに行われていますが、それがものづくり補助金やIT導入補助金にも適用されるのだと思われます。これはものづくり補助金のリピーターにとっては悲報ですね。
過去3年以内に同じ補助⾦を受給している事業者には、審査にて減点措置を講じることで、初めて補助⾦申請される⽅でも採択されやすくなります
さらに詳しい情報は、年末年始に「事前予告」として提供されるはずです。続報を待ちたいと思います。