おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
8月7日に、ものづくり補助金公募要領(一般型・グローバル展開型)1.0版が公開されました。今日はグローバル展開型で求められる4類型のうち、②類型:海外市場開拓について、公募要領を読み解きます。
スポンサーリンク
②類型:海外市場開拓について
②類型の「海外市場開拓」は、①類型の「海外直接投資」とはどう違うの?
端的に言うと、①類型は海外に工場などを作るケースで、②類型は日本にいながら海外に商品・製品を輸出するというイメージかな。
②類型:海外市場開拓の2つの条件
②類型では下記の2つの条件が指定されています。これは全部満たす必要があります。
- 国内に補助事業実施場所を有し、製品等の販売先の2分の1以上が海外顧客となり、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
- 応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書、実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を追加提出すること
①類型の4つの条件に比べると楽そうなイメージがありますね(実際に楽かどうかはわかりませんが)
条件ひとつめ
国内に補助事業実施場所を有し、製品等の販売先の2分の1以上が海外顧客となり、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること。
「国内に補助事業実施場所を有し」ってあるので、導入する機械装置等は日本国内に設置するということだね。だからこの②類型は「輸出」のケースなんだね。
そうだね。そのうえで①製品等の販売先の2分の1以上が海外顧客となり、②計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有しているの2つの条件をどちらも満たす必要があるね。
製品等の販売先の2分の1以上が海外顧客
「製品等の販売先の2分の1以上が海外顧客」って、どうやって証明するんだろうね。
ふたつめの条件のところで「具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書」の提出が求められているので、この中でわかるようにするんだろうね。
そうだね。例えば航空機用部品では、日本国内の重工業メーカー(三菱重工や川重、IHI等)に納めることもあれば、海外メーカー(P&Wやロールスロイス等)に直接納める場合もあるね。「製品等の販売先の2分の1以上が海外顧客」なので、海外の航空機エンジンメーカー等の依頼が2分の1以上見込まれていて、そのために部品の新生産プロセスを整える、みたいなストーリーかな。海外顧客からの生産見込み数値などをもとに主張できればベストかな。(まあ航空機分野ではそんな簡単に工程変更できないんですけどね)
「販売先が2分の1」って、具体的にはなんなんだろうね。販売先数で測るのか、売上で測るのか、販売先ごとの販売数量で測るのか、いくつも考え方があると思うんだけど。
このあたりもあいまいですよね。もっと明確に条件を示してほしいですね。
計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画
計画期間中というのは、補助事業の実施期間(3~5年)のことだね。この3~5年の間の売上累計額が、補助額(1,000万~3,000万)を上回るというものだね。あくまでも売上累計額というところがポイントだね。
つまり3,000万円の補助金交付を受けたとすれば、3年~5年トータルで3,000万円以上の売上があればいいと。
そうだね。これは推測だけど、その2のなかで売上見込を書いて主張するんじゃないかな。
会社全体の売上の累計額となると、簡単に補助額(1,000万~3,000万)を上回ってしまうだろうからね。
結果として達成しなかった場合はどうなるんだろうね。
どうなるんだろうね。あくまでも「計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有している」と書いているので、計画さえあれば結果は問われないんじゃないかな。(この後の情報を待ちたいところです)
条件ふたつめ
応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書、実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を追加提出すること
「応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書」と言われても、どんな報告書が必要なんだろうね。
悩ましいところだね。さきほどは航空機部品製造の例を上げたけど、航空機分野であればエンジン完成品メーカーや航空機完成品メーカー、その下請け(Tier1やTier2,3など)はプレイヤーが明確だし、将来展望などの資料も豊富だから、そういった資料をまとめるといいんだろうね。反対に、ニッチな分野でデータや資料があまりない分野だと、報告書の作成はかなり困難だろうね。
「実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を追加提出」っていうのも、なかなか大変そうだよね。
そうだよね。性能評価報告書を出させるということは、BtoC商品というより、BtoB製品をイメージしているっぽいね。
「性能評価報告書」ってくらいだから、納入先の検査では寸法と外観と員数だけ見てます、みたいな評価結果じゃダメなんだろうね。
ダメなんだろうね。性能評価だから、まあ少なくとも「強度」「耐久性」あたりの試験をするというのが前提なんだろうね。場合によっては防爆試験とか、環境試験(大型恒温恒湿槽での試験など)なんかも該当するのかな。
あくまでも「想定顧客による報告書」なんだね。輸出品の場合は、その国の規制や規格に準拠していれば輸出が可能になることもあって(例えば欧州向けの輸出品はREACHやRoHS、WEEEなどの欧州指令への適合が必須)、そういうのは民間の第三者認証機関などが検証してくれるんだけど、この要件には「想定顧客による報告書」とあるので、厳密に解釈すると第三者による適合性評価とか、公設試の評価とかはダメということになるよね。
そうだね。あまり柔軟性のない条件だと思うよ。なにか特定の業種をイメージしているのかなと感じるね。まあこのあたりもコールセンターに確認が必要かな。
非製造業は対象になるのか?
製造業を前提にして解説しているけど、非製造業は対象にはなるの?
理屈の上では応募は可能だけど、対象となりうる非製造業や、評価されうる非製造業がどの程度あるかはちょっとわからないね。非製造業で輸出が関係する業種といえば商社がまっさきに思い当たるけど、1,500万円ないし2,000万円の投資(それも機械装置・システム構築費中心)が必要となる商社でなければ対象外だしね。
例えば在庫管理システムを構築して、大幅に生産性を上げるとかはどう?
「実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を追加提出すること」という要件をどう満たすか?というのがあるかな。基本的にこの②類型は、新製品を強くイメージしているように思えるよね。
BtoBならばなんとかいけるかな。繰り返しになるけど「実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を追加提出すること」という要件は、BtoBを前提にしているっぽいもんね。
BtoB向けで、1,500万円~2,000万円以上の投資が必要な新サービスね……。
そう考えると、かなりストライクゾーンが狭そうだよね(新製品でも同じだろうけど)。このグローバル展開型ではなく、一般型のほうがまだ可能性があるんじゃないかな。