おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
事業再構築補助金の審査項目は全部で13あります。一つずつ解説をします。今回は再構築点①について解説します。
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事業再構築補助金審査項目 再構築点①
事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。
「事業再構築指針に沿った取組みであるか」の意味
事業再構築指針とは、この補助金に申請する上での「最低条件」のことです。5つの類型(新分野展開、業種転換、事業転換、業態転換、事業再編)のうち、どれかに該当しなければ申請すらできないという必須項目です。5つの類型ごとに要件が複数あるのですが、求められているものは原則として全て満たしていなければなりません。
一方、今日解説をしている審査項目は、必須項目ではないが満たしている項目が多いほど採択可能性がアップするという位置づけの項目です。しかしこの審査項目の中に、必須項目である事業再構築指針について言及されているというややこしい構図になっています。事業再構築指針を満たしていなければ申請さえできないのですから、わざわざ審査項目に入れる必要もないは思うかもしれません。しかし事業計画書の中では、申請する事業再構築の類型について、事業再構築指針との関連性を説明することが求められており(公募要領P23)、その説明が、納得感・妥当性の高いものであればあるほど、評価の点数が高くなる可能性があるのかもしれません。
事業再構築指針に沿った取組であるかどうかは、指針本文、指針の手引き、および事業再構築指針Q&Aを熟読して、事業計画書の中で説明ができるようにしてください。
「全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか」の意味
審査項目の「全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか」という一文を素直に読むと、「あっ、業種転換での申請だと加点されるのかな?」という気がしてきます。当社も最初はそうなのかと思っていました。
ところが4月6日に公開された事業再構築指針Q&Aには、次のような記述があります。
Q4.新分野展開、業態転換などの事業再構築の5つの類型のうち、採択されやすいものはあるか。
A.特定の類型が他の類型に比べ、一律に高く評価されることや加点されることはありません。審査は公募要領PDFファイルに記載している「表2:審査項目」に沿って、5つの類型について平等に行われます。
ここには「特定の類型が他の類型に比べ、一律に高く評価されることや加点されることはありません」とハッキリ書いていますので、業種転換での申請だと加点されるということはなさそうです。ではいったい「リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか」というのは、どういう基準で評価されるのでしょうか。それは残念ながら審査項目からは読み取れません。審査員個人の判断に委ねられているのではないかと推察します。
「審査員次第ですね」と言い切ってしまうのも無責任なので、当社が勝手に想像する「リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築」とは何かをお話したいと思います。
経営学の古典的な考え方・フレームワークのひとつとして、イゴール・アンゾフによる「成長マトリックス」というものがあります。企業の成長戦略を下記のような4つの象限にする手法なのですが、この度行われる事業再構築補助金の制度は、このアンゾフの「成長マトリックス」が下敷きにあると当社では勝手に考えています。根拠はありませんが、事業再構築指針を読むと、原則として「新製品」を「新市場」に投入することを求めています。製品と市場という2次元的な切り口ですので、「成長マトリックス」を意識しているのではないかと思います。
事業再構築指針で原則として求めている「新製品」を「新市場」に投入することは、「成長マトリックス」では「多角化」と呼ばれます。「多角化」は、既存事業とのシナジー効果が薄いため、高リスク・高リターンだといわれますが、このフレームワークを考案したアンゾフは「多角化は最も重要な成長戦略」と位置づけています。アンゾフは1960年代に、アメリカ国内でみられた多角化事例を詳細に検証するという研究をおこなっており、多角化戦略の有用性と困難さを明確に指摘したと言われています。
邪推が続きますが、こうした制度設計をした中小企業庁の意図としては、中小企業に多角化をやってほしいのだと思います。しかしそれには大きなリスクが伴うので、補助金で下支えをするという考えなのではないかと勝手に考えています。
話を本題に戻しますが、再構築点①で求められている「リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築」とは、市場浸透戦略よりも新製品開発戦略・新市場開拓戦略のほうが評価が高くなる可能性が高いし、なんなら多角化が最も評価が高くなる、ということなのではないかと、根拠もなく当社では推測しています。