おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
手帳の整理をしていたら、ある経営者の方に「右腕社員を育てるにはどうすればいいか」というテーマについてインタビューしたメモがでてきました。その経営者の方は、僕が敬愛する経営者のおひとりなのですが、昨年末に若くして病気で亡くなくなりました。メモを見て改めて「素晴らしいお考えだな」と思ったので、その人の足跡を伝えていく意味でも、ここでご紹介したいと思います。
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「中小企業の社長30人に聞いた 右腕社員の育て方」
3年半ほど前(僕が独立する前)ですが、ある専門誌に「中小企業の社長30人に聞いた 右腕社員の育て方」というテーマで執筆したことがありました。その記事を書くために、知り合いの経営者30人にインタビューをしたのでした。
(記事そのものではありませんが、下記の雑誌です)
くだんの経営者さんとは、銀行から紹介をされて知り合いました。補助金の支援をしただけなのですが、なぜか僕と非常にウマがあったというか、会った瞬間から「あっ、この人はすごいな」と思ったことを覚えています。高校を中退し、印刷業の会社に就職されたのですが、その会社もいろいろあって解散。そして自分で会社を立ち上げたというご苦労を経験された方です。
「人は育てようと思っても育たない」
僕がその方のお考えで賛同するのは、「人は育てようと思っても育たない」ということです。人を育てることが経営者やコンサルの役割ではないか?と思われるかもしれません。もう少し正確に言うと「人は育てようと思っても、こちらが思うように育ってくれるかどうかはわからない」というべきでしょうか。
いくら経営者と従業員という関係であるとはいえ、別個の人格と経験を持った異なる人間ですから、経営者の思い通りに育つ保証はない、ということですね。(これは親子関係にも当てはまることだと思います)
僕のメモから、この経営者の言葉を少し拾っていきたいと思います。
- 育てようと思っても育たない。トップが期待して育ったためしがない
- チャンスを公平に与える。そこに反応する人を見出す。そういう人が結果的に右腕になる
- 人を育てるには長い目で見て、すぐに結果を求めない。短期的な損得勘定で人のことを判断するとうまくいかない。経営も短期の損得だけを考えてはうまくいかないのと同じ
- 人を採用したら必ずその人の親に会うようにしている。親を見れば、ざっくりとその人となりはわかる。また、従業員の親に会うことで自分も覚悟ができる
- 怒れば怒るほど、従業員は社長の顔を見るようになる。社長の顔を見て仕事をするのではなく、顧客のことを考えなければならない
- それに気づいてから、クレーム対応などには(何も話さなくていい、黙っていればいいからと事前に説明して)必ず社員を同席させるようにした。漠然と顧客の重要性を言うよりも、クレーム対応の場に連れ出すことは効果的
人が育てられると思うのは驕りである。できることは育つ環境を整備することだけ
あたらめてこの経営者の方の発言を読んでいて思うことは「人が人を育てられる」と思うことは、ある意味驕りではないかということです。人間はあくまでも自分の意志と能力で自ら育つのであって、他人の思い通りに育てられるものではありません。
この経営者の方もそれをよくわかっておられて、やっていることは育つ環境を整備することだけです。「クレーム対応の席に同席させる」ということが顕著な例ですね。「漠然と顧客の重要性を説く」というのはその経営者の働きかけですが、それではうまくいかなかったので、顧客のところに連れていくという策をとったのですね。クレーム対応の席に出てどう感じるかまでは、この経営者の方は関知しないというか、その場にでた従業員に任せています。そのやり方を継続しているところからも、結果的には顧客の重要性を感じ取れる人が現れたのだと思います。
もっともっとこの経営者の方からはいろいろなお話を聞きたかったと残念に思います。でも、その方のお考えは、従業員の皆さんはもちろんのこと、確実に僕の中にも生きています。
あらためてご冥福をお祈りしたいと思います。