おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
3S・5Sでも、ISOでも、目標管理でもなんでも同じですが、会社ぐるみで何かの活動を始めると「やる人とやらない人」が明確になります。どうしてこんなことが起きるのでしょうか?どうすれば「やらない人もやる」ようになっていくのでしょうか。
スポンサーリンク
他人の行動に影響を受けて自分の行動を決めるという傾向
1969年に心理学者のスタンレー・ミルグラムらが、ニューヨークで行った実験があります。ニューヨークの街角で4人の実験者が立ち止まって空を見上げると、通行人の40%が同じように立ち止まったのです。一方で、立ち止まって空を見上げた実験者が1人だった楊合、同じように立ち止まった通行人の割合は4%だったそうです。つまり、同じ行動をとる人が多ければ多いほど、それを見た人はいっそう大きな影響を受ける、ということがこの実験から分かりました。
このように、僕たちには、他人の行動を見て自分の行動を決めるという傾向があります。しかも、その行動をとる人が多いほど、周囲の人の行動と同調した考えをいっそう持ちやすくなります。このような心理を「社会的証明」というそうです。
反対に「やりたくない」という気持ちに大義名分を与えてしまうこと
これと似たようなメカニズムですが、他人の「やらない」に影響を受けて、自分も「やらない」と決めてしまうことがあります。
例えばですが、5S活動に対して「めんどうくさいなあ」とか「なんで忙しいのにこんなことをやらなければならないのか?」などと否定的な意見を持っている人は、5S活動をやらない人の「やらない」という行動に影響を受けてしまいます。「あの人がやらないんだから、自分がやりたくないという気持ちは間違っていない」という具合に、やらない気持ちに大義名分を与えてしまうのです。
特に経営者や上司の「やらない」という行動は、集団に大きな影響を与えます。「経営者や上司がやらないんだから、自分たちもやる必要ないだろう」という大義名分になってしまうからですね。
そういうわけで、ある活動に対して「やる人とやらない人」が分かれるのは、それぞれの集団の力(大きさ、人数)が拮抗していて、お互いが引っ張り合いをしているからだ、と考えることができます。
全員をいきなり巻き込むのは無理。一人ずつ「やる派」を増やしていくのが定石
となると、どうすればいいでしょうか。全員を一気に巻き込むのは現実的には不可能です。同じ行動を取る人が周りに多いほど、それに同調した考えを持ちやすくなる傾向を我々は持っているのですから、ちょっとずつでも「やる人」の人数を増やしていく、というのが定石です。2-6-2の法則ではありませんが、どっちつかずの人というのは必ず集団の中にいます。そのどっちつかずの人を、一人ずつでも「やる人」のほうに変えていくしかありません。
一人ずつ増やしていく上での重要なポイントは2つあります。1つは、経営者が「全社的活動として、全員参加の〇〇活動をする」と会議や朝礼などで宣言し、そのとおりに全社を巻き込むことです。2つには、経営者と管理職が率先垂範することです。社員は他人の様子をうかがいながら活動をします。特に経営者や上司の行動は厳しくチェックされます。なぜなら、経営者や上司がやらなければ、自分たちもやらなくてよいという大義名分を与えてしまうからです。ですから、経営者と上司も「自分たちは管理する側なので、活動にプレイヤーとして参加する必要はないだろう」などと思わず、率先して活動に取り組み、揚げ足をとられるスキを与えないことが重要です。
そして、全員で参加するイベント的なこと(3Sや5Sであれば、決められた時間に全員で工場周辺などの同じ場所を清掃する、目標管理であれば、成果発表会を行うなど)を定期的に開催することです。一人ひとりと面談をして、根気よく「一緒にやろうよ」と説得をしていくことも有効だと思いますよ。