おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
6月30日に、2020年実施ものづくり補助金2次締切(通常枠・特別枠)の採択結果が発表となりました。トータルでの採択率は57.1%でした。今回の募集に関する客観的な数字を追ってみました。
スポンサーリンク
トータルの採択率は57.1%。通常枠は62.3%、特別枠は53.4%
今回から特別枠の結果も一緒に発表されるようになったね。
そうだね。
中小機構のプレスリリースによると、申請数5,721 者 (うち特別枠 3,321 者、通常枠 2,400 者)に対して、採択数3,267 者 (うち特別枠 1,773 者、通常枠 1,494 者(特別枠での申請者を含む))だそうだよ。
通常枠の採択率は、1次締切(62.5%)と2次締切(62.3%)でほぼ一緒だね。3次締切の結果も踏まえて判断しなければわかりませんが、ひょっとすると意図的にこの採択率になるような基準を設けているのかもしれませんね。
特別枠のほうが補助率が高いので、それを考慮してこの程度の採択率になるように設定している可能性があるかもしれませんね。
公募期間1日あたりの応募数も最低レベルを維持
今回はコロナ禍の影響もあって、申請者数が少なかったんじゃない?
それはあるだろうね。下記の表は、応募総数を公募期間日数で割った「公募期間1日あたりの応募数」のデータです。今回の2次締切の通常枠では48申請/日、特別枠でも66申請/日と、過去最低レベルを維持していますね。
通常枠と特別枠をあわせても114申請/日ですね。公募期間日数の短かった1次締切からほとんど増えてないね。
そうだね。これまでの傾向だと、公募期間が長くなれば申請数も伸びるのがお約束だったんだけど(下記の図を参照)、この2次締切ではほとんど伸びていないので、やはりコロナ禍の影響が色濃いんだろうね。もちろん、昨秋ごろからの設備投資抑制や消費増税の影響などもあるんだろうけど。
2019年実施1次公募までの公募期間と応募総数の相関(当社調べ)
予算はどの程度消化されたか
今回の2次締切の採択で、どの程度の予算が消化されたんだろうね
良い質問だね。過去の公募のデータを見ると、採択企業1社あたりの予算ってだいたい800万円程度なんだよ(1社あたりの交付額ではない)。ちょっと過去のデータを見てみようか。
じゃあ、1社あたり800万円と仮定すると、今回の2次締切の採択が1,494件だから、だいたい115億円くらいだね。
1次締切とあわせても230億円くらいじゃないかな。
今年はコロナ対策もあって結構複雑で、3,600億円+700億円+1,000億円なんだけど、小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金も足してこの予算だからね。
おそろ7割程度をものづくり補助金だと乱暴に仮定した場合、3,710億円の想定予算に対して230億円の消費なので、消化率は6.2%くらいだね。
そのくらいかもしれないね。いまのところ、通常枠も特別枠も5次締切までを想定しているようだけど、それだと予算が余る可能性もありそうですね。
ものづくり補助金総合サイトの分析「データポータル」での採択状況分析
また、本補助金の申請者の属性や過去の成果等のデータ等をまとめ、公開しました。申請者の傾向と採択率の関係性等が分かるように整理しています。幅広い業種、様々な規模、初めて申請する方等にも幅広く採択の機会があることがご覧いただけます。
いくつか興味がひかれるデータがあったので、見てみましょうか。
申請者の規模(従業員数)別の採択数、採択率
申請者の規模別の採択数、採択率のデータが公開されています。今年実施の1次締切と2次締切のデータだけですけどね。
規模が大きくなるにしたがって、採択率が下がっているように見えますね。
そうだね。これまでの実感とは異なる感じがしますね。審査項目には財務体質や体制の有無などがあるので、大きいほど有利という実感があったけど、今年の公募ではそうではないかもしれません。(もっとも規模の大きな層はデータが少ないので、たまたまこの値が出ている可能性も否定はできませんが)。
どうして規模が大きくなるにしたがって、採択率が下がるのかな?
真っ先に考えられるのは、小規模事業者への加点が大きく効いているということだろうね。あとは、比較的規模が大きく、従来この補助金のリピーターだった層(採択ノウハウをたくさん持った層)が、リピーター減点制度や賃上げ要件のために、この補助金から撤退しているということもあるかな。(つまり、ものづくり補助金に慣れ親しんでいる中堅規模の常連がごっそり抜けた可能性)
業種別の採択数、採択率
想像どおりというか、製造業がダントツですね。数も多いし、採択率も高いですね。
すべての業種にオープンにされているとはいえ、やはりこの補助金は製造業向けという色がいまだに濃いですね。(まあ1,000万円規模の設備投資の需要がある業界が限られるっていうのもあるだろうでしょうけど)
おそらく歯科医だと思われますけど、歯科医は①小規模で加点されやすい、②財務状況も他業種と比べて比較的良好、③小規模とは言え衛生士や事務等含めるとそれなりの体制がある、という点で、今回の公募の要件を満たしやすかったのかもしれません。
過去3年間の「ものづくり補助金」交付回数別の採択数、採択率
今年からリピーターは減点措置が取られるようになったけど、その影響も分析されていますね。
グラフだけ見れば顕著ですね。採択回数に応じた減点が行われているということがわかります。
でも減点措置の影響だけじゃないかもですね。今回の減点措置で、リピーター(採択ノウハウをたくさん持った層)ははなから応募を諦めてしまっているから、という可能性も否定できませんからね。
そうだね。現場の実感としては、リピーターは中堅規模の企業が多い印象だから、賃上げ要件を嫌って公募を避けた可能性は大ですね。まあそれでもやはり採択回数に応じた減点は、それなりの影響を与えているんだろうけどね。
過去1回交付の層と、過去交付なしの層の採択率はほとんどかわりませんね。減点措置があるとはいえ、過去に採択の経験があると、この補助金に取り組みやすくなるというる可能性は、やっぱりちょっとはあるでしょうね。