おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
9月25日、日本経済新聞記事で『レオパレス、債務超過100億円超 6月末』という記事がありました。債務超過100億円超と聞くとインパクトがありますね。こうなった原因や理由は何でしょうか。また、倒産の可能性はあるのでしょうか。報道記事をもとに検証してみました。
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日本経済新聞記事『レオパレス、債務超過100億円超 6月末』
該当する記事は下記の記事です。冒頭部分を引用します。
レオパレス21が2020年6月末に100億円超の債務超過となったことが25日分かった。20年4~6月期の最終損益は120億円を超える赤字(前年同期は57億円の赤字)となったもよう。施工不良問題による経営不振によって、3月末に自己資本が13億円まで減少していた。
(9月25日日本経済新聞記事より)
レオパレス21が2020年6月末現在で債務超過となるとの報道ですが、いったいどういう状態でしょうか。まずは、前期、前前期の決算結果とともに、貸借対照表で図示をしたいと思います。下記の図はレオパレス21のIRライブラリと9月25日、日本経済新聞記事の情報をもとに筆者が作成しました。
この度報道で債務超過とされた状態が、一番右の図ですね。資産、負債の細かい数字は記事にはないのでわかりませんが、「100億円超の債務超過」と報じられていました。債務超過とは、一般的には、赤字が累積して、純資産(上の図でいう緑の部分)の合計がマイナスになってしまった状態のことをいいます。こうなると資産合計が負債の合計を下回ってしまい、放っておくといずれ倒産してしまう危険な状態です。
100億円というとインパクトがありますが、レオパレス21社は資産が2千億円ほどあるので(2020年3月期の資産合計196,953百万円)、それと比較すると5%程度という割合ですね。だからまだまだ安心というわけではありません。誤解を恐れずに人間の体で例えると、ガンの初期段階といったところでしょうか。
レオパレス21の債務超過の原因・理由は、複合的な赤字にある
債務超過になる理由は、本当は単純に言えるものでははないのですが、直接的な原因・理由は赤字にあるでしょう。赤字が利益剰余金(これまでの利益の積み重ね)を食いつぶし、債務超過になるのですからね。(もちろん借入金に依存体質であったなどという理由もあります)
ここでレオパレス21の、過去3年分の損益計算書をわかりやすく図示したものを見てみましょう。下記の図はレオパレス21のIRライブラリの情報をもとに筆者が作成しました。
2017年度は当期純利益ベースで黒字でしたが、2018年度・2019年度と2期連続赤字です。この理由の一つには日本経済新聞記事に書かれていたように、施工不良問題があるでしょう。
レオパレスでは2018年4月に施工不良問題が発覚しました。これは、建築基準法違反の施工を経営者が指示していた問題で、物件の入居者には住み替え費用をレオパレスが負担し、物件所有者であるオーナーに対しても入居者が不在である期間中の賃料をレオパレス21が補償するというものでした(2019年2月7日日本経済新聞より)。こうした費用を計上したことに加えて、収入の減少も赤字の原因です。レオパレスの顧客の58%は法人顧客です(2019年2月17日日本経済新聞より)。法人従業員の社宅や寮としての利用のために法人が契約をしていたということですが、社員の安全を考慮してのことはもちろん、法令遵守の観点や企業イメージ保持の観点から利用を避けたものと思われます。
このほか、コロナウイルス感染症の影響で外国人の利用者が減少したことも、収入が減った要因のようです。個人契約に占める外国人の比率は11%を超えている言われ(2020年8月8日 Business Journal記事より)、法人のみならず個人からの売上を大きく落としたことが、2019年度の収入源につながっているのでしょう。
なお、レオパレスの損益分岐となる入居率は80%程度と言われています(2020年1月10日日本経済新聞記事より)。2020年5月以降、この損益分岐となる入居率を下回っているそうで、今後も赤字は拡大する可能性が濃厚でしょう。
レオパレス21はすぐに倒産するのか?
債務超過だからといって、すぐに倒産を意味するわけではありません。通常、倒産の直接的な原因は資金繰りの悪化にあります。お金が足りなくなって不渡りになったとか、借入金が期日どおりに返済できなくなったという場合に倒産することが一般的です。
2020年3月末の時点でレオパレス21は、現預金がおよそ600億円ほどあります(2020年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)より)。これは売上高の約1.7ヶ月分ですので、黄信号ではありますが、明日にでも倒産するという状況とは言えないでしょう。また、レオパレスには建物・構造物、土地、リース資産等、売却可能と思われる資産がおよそ1,000億円ほどあります。2019年度からこれらの資産のうち、自社保有物件の売却を行っているようで、例えばこのようなプレスリリースを出しています。こうした固定資産や有価証券の売却を行い、2019年度は約110億円の特別利益を計上しています。こうした資産の売却は今後もおこなわれることで、当面は延命が図れるでしょう。
しかしいつまでも資産を売り続けるわけにはいきません。ガンの初期とはいえ、手術を施さなければガンが進行していくのと同じです。事業の立て直しが必要ですが、債務超過であり赤字が続く企業(しかもコンプライアンス違反をしている)に積極的に融資をする金融機関はあまりないと思われます。そうなると、日本経済新聞で「資本増強につながるスポンサー探しが焦点になっている」と書かれているように、出資を募る、株式を売却することで資本を増強し、失われた信頼を回復するための取り組みを進めるほか、手立てはないでしょう。
スポンサーとしては、6月22日の週刊文春で『債務超過寸前のレオパレス21 救世主は「ヤマダ電機」 メリットはあるか?」という記事が掲載されました。真偽の程はわかりませんが、単独での再生が困難である以上、どこかメリットのある企業によって買収されるというシナリオは現実的なものではないかと思います。