おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
5月28日の日本経済新聞記事で、ある信金においては事業再構築補助金1次公募の申請のうち、4割弱が製造業で、2割弱が飲食業だった、という記事がありました。この数字をどう読むべきでしょうか。
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事業再構築補助金1次公募に関する5月28日の日本経済新聞記事
大阪信用金庫の子会社のだいしん総合研究所(大阪市)では約80件の申請を支援した。4割弱が製造業で、自前の技術で燃料電池など将来性のある分野に挑戦する例が目立った。2割弱の飲食業はネットで販路拡大を目指すケースが多く、抜本的に事業を変えづらい点が悩ましいという。
(日本経済新聞より)
この記事にあるように、大阪の信金さんが約80件の支援をしたうち4割弱が製造業だったそうです。もちろんこれは特定の金融機関のデータであって、母集団を代表しているものとは言えません。大阪という中小製造業の多い土地柄なので、製造業が多く見えるだけなのかもしれませんが、現時点で見えるデータとしては、なかなか興味深いデータだと思いますね。
そして事業再構築補助金申請者の2割弱が飲食店だったとも書いています。飲食店が2割弱もあるというのは、僕の主観なんですけど、結構多いんじゃないかという気がします。
申請者の業種についてものづくり補助金と比較すると何が見えるか
ここでもう少し、製造業4割弱、飲食業2割弱のデータを幅広く解釈するために、比較要素をお見せします。下記のデータは、別の補助金……今公募中のものづくり補助金のデータです。ものづくり補助金は、昨年からはじまった1次公募から直近の5次公募まで、申請者の業種別のデータを公開しています。
ご覧のように、ものづくり補助金では製造業が特出しています。全体の申請の半数以上が製造業のものです。事業再構築補助金では、特定の金融機関だけのデータしかわからないのですが、製造業は4割弱という一つのデータが見えていて、これとものづくり補助金のデータを単純に比べると、事業再構築補助金における製造業の申請のほうが、ものづくり補助金よりも少ないかも?という一つの推測ができます。
一方、ものづくり補助金では、飲食業だけの申請者の割合はわからないのですが、製造業以外の業種ではどれも割合は10%にも満たないです。ここから推測できることは、事業再構築補助金では、飲食業の申請が、ものづくり補助金よりも多いのではないかという推測もできますね。
事業再構築補助金は製造業にとって非常にハードルが高い
事業再構築補助金はものづくり補助金ほど製造業受けしないかも?というデータが出てきたわけですが、私もですね、事業再構築補助金は、製造業にとって非常にハードルが高い補助金だと思っています。
というも、事業再構築補助金では、製造業はすべて「製品の新規性要件」というものを満たさなければなりません。「製品の新規性要件」にもたくさん細かい要件があるんですが、そのなかでも「過去に作った実績がない製品を作ること」と「新しい製品を作る上で主要な設備を変えること」2つは製造業、特に加工の一部を請け負っているような下請形態の製造業にとっては非常に満たしにくいと思います。
この要件を素直に読むと、例えば、これまで自動車部品の機械加工をしていた企業が、全く製造をしたことのない産業用装置部品の板金加工をするというイメージです。そう聞くとほとんどの製造業の方は「そんな無茶な事業の展開を、普通はしないだろう」と思うでしょうが、これが補助金の要件です。
仮に「製品の新規性要件」を満たしたとしても、他にも要件はたくさんあります。製造業として満たしにくいのが、事業再構築補助金はコロナ後のニューノーマル(新しい生活様式)等に対応する事業でないといけない、という点です。公募要領の冒頭にある「事業の目的」のところにも明確に書いていますが、コロナと共存しなければならない時代での、新たな生活様式やニューノーマルに沿った事業であることが前提になっています。飲食業だと、デリバリーやテイクアウトに対応するというイメージが湧きやすいのですが、製造業で「ニューノーマル」やら「新しい生活様式」と言われてもピンとこないのが普通だと思います。
こうした理由から、製造業、特に加工の一部を請け負う下請形態の製造業が事業再構築補助金に申請し採択されることは、コロナの影響を直に受けている飲食業などと比べると、かなり困難だと思うんですよ。そうしたところが、大阪の信金さんのデータに現れているのかもそれません。ただし、一つのデータだけしか参照していないことには注意をしないといけません。
事業再構築補助金はたしかに補助金の額面が大きく、魅力的な政策に映るかもしれません。しかし自社がやろうとしていることがこの補助金の要件に本当に沿っているのかということは、指針や公募要領を熟読して判断をしてください。