おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今日はものづくり補助金の審査項目のうち、事業化面②について解説をします。
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事業化面とは
補助金をもらって取り組む事業について、採算に乗せる上で取り組むことのうち、技術的な事項ではないことのことです。例えば補助事業で開発したり生産性向上したりする製品を、どのように売るか(販売方法)、どの程度売るか(販売計画)といった面のことです。事業化面の審査は、技術面と異なり、中小企業診断士や税理士、大学教授などが採点をすると言われています。
事業化面② 審査項目にはどう書いているか
平成29年補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上補助金」公募要領28ページ(2)事業化面②には、次のように書かれています。
事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。
「市場ニーズ」「ユーザー」「マーケット」「市場規模」の」4つがキーワードですね。
そもそも「事業化」とは何か
さらっと読み飛ばしてしまいがちですが「事業化」という言葉はものづくり補助金の中での最重要キーワードの一つです。ものづくり補助金における事業化とは、補助事業終了後――つまり設備導入や新製品開発を終えた後5年間で――その事業を軌道にのせる(販売実績と利益を上げるレベルに成長させる)ことをさしています。
ものづくり補助金の公募要領の46ページに詳しく解説されていますが、国としては5年間で次の図でいう第3段階にまで成長することを必須目標としています。
国としては、この「ものづくり補助金」という制度による中小企業支援の目標を、事業終了後5年以内に事業化を達成した事業が半数を超えることとしています。これを目指して補助金を交付しているわけです。ちなみに過去の事業化率はあまり高くないようです。平成24年度補正予算で行われた補助金事業全体では、事業化率(第3段階達成率?)は44%だったそうで目標値を下回っています。投資回収できている企業に至っては1%という調査結果もあります。
補助金事業の効果はともかくとして、ここでいう「事業化」とは、5年間で販売・収益を上げられる状態になっているということを覚えておいてください。
顧客ニーズを明記する重要性
審査項目では「顧客ニーズを考慮する」と書かれています。ここはかなりの重要ポイントです。事業計画書(補助金の申請書)には必ず顧客ニーズを書かなければなりません。5年間で販売・収益を上げられる状態になるということは、プロダクトアウトの事業計画ではダメなのです。
事業計画書には「取引先からこういう要望があった」とか「こういうデータを見つけた」などという、顧客のニーズをはっきりと書かなければなりません。そして、その顧客ニーズにこたえるためには、新製品開発や新生産プロセス開発が必要になるというストーリーを構築する必要があります。
余談ですが、僕はマーケットインが常に最善で、プロダクトアウトが絶対にダメだとは思いませんけどね。iPhoneなんてプロダクトアウトの塊みたいな製品ですけど、天下を取りましたもんね。ただ、そういう事業計画は補助金審査の場では必ずしも高評価は得られないでしょう。たぶんスティーブ・ジョブズがものづくり補助金に応募したら、不採択になるような気がします?
ユーザーとマーケット
顧客二ーズがどこから出ているかが明確になれば、ユーザーとマーケットを明確にすることは簡単です。
機械加工業で例えると、このような感じになるでしょうか。
顧客ニーズ | 今よりも複雑形状のアイテムを、今よりももっと短納期で納めてほしい |
ユーザー | 取引先の自動車部品メーカー(Tier1) |
マーケット | 自動車市場(ブレーキ市場とかエンジン市場とか、もっと細分化できるかもしれない) |
食品での新商品開発を例にあげましょうか。
顧客ニーズ | 高齢化を背景に、健康によく、少量でおいしいものを食べたい |
ユーザー | 健康に気を使う60歳以上の高齢者 |
マーケット | 健康食品市場、中食市場 |
市場規模をどうやって調べるか
ここで定めたユーザーやマーケットが、一定の規模を持っている必要があります。規模のあるマーケットでないと、収益をあげることは難しいですもんね。国としての目標が「5年間で事業化率50%」なので、あまりにもニッチすぎるマーケットは、評価を落とす可能性もあります。
市場規模はどうやって調べたらよいでしょう。僕は下記の順番で調べています。最近は便利になったもので、インターネットでだいたいのものは調べがつきます。日本語で出てこなければ、英語で探すのも方法の一つです。(英語が苦手な人はGoogle翻訳を使ってください)
- インターネットで調べる。矢野経済研究所あたりがよく資料を出している
- その市場のトップ企業が上場していれば、その会社のIR情報などを見る。市場分析をしている場合がある
- 図書館に行って「業種別審査事典」(株式会社きんざい)を見る
- 取引先に直接尋ねてみる
当然ですが、市場規模を調べる際は、極力ポジティブな情報を使いましょう。どんな市場でもそうですが、ネガティブな情報とポジティブな情報があります。ネガティブな情報を隠す必要はありませんが、あくまでも5年間で収益を上げられるポテンシャルがあるのかということを見られるので、積極的な情報を記述するほうが望ましいのは言うまでもありません。
企業の戦略的には、衰退市場を狙うという戦略もありですけどね。たとえば開発言語の世界ではCOBOLは絶滅寸前ですが、COBOLで書かれたシステムのメンテナンス需要があるために、COBOLを記述できるエンジニアは今でもかなり重宝されています。しかし補助金審査の場では、こういう戦略が評価されるかどうかは微妙です。
まとめ
- 事業化は5年間のスパンで考える
- 顧客ニーズは、実際の顧客の声やデータを示す
- ユーザーとマーケットは、ニーズを発している顧客が誰かを明確にして記述する
- 市場規模はインターネット等で調べる。ポジティブな情報を中心に。