おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今話題沸騰のビッグモーターなど、複数の企業の不祥事事例を使いながら、なぜ企業不祥事が起きるのか、その一般的なパターンについて掘り下げていきたいと思います。今回は業務関連の不祥事発生の典型的なパターンと、経営者の責任について解説します。
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前回までの記事
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【ビッグモーター等の事例で学ぶ】企業不祥事はなぜ起こる?経営者の責任は?(1)
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業務関連の不祥事発生の典型的なパターン(ビッグモーターの事例を題材に)
ではビッグモーターの事例を題材に、業務関連の不祥事発生の典型的なパターンについて考えてみたいと思います。
その起点となるのが、外部環境の影響です。ここ30年以上、バブル崩壊以降、日本は低成長が続いています。その結果、競争が激化していますし、大企業から取引先の中小企業に対する圧力も増しているように思います。また、「物言う株主」という言葉が示すように、株主からの企業価値の向上に対する厳しい要求も加わります。ビッグモーターの板金塗装部門が属する自動車整備業界は、ここ数年間市場規模は横ばいです。その中でも、今回問題となった事故整備関連の業界売上高は、年々減少しているんですよね。事故の発生件数自体が減っているので当然です。また、自動車整備需要は一般的にはディーラーが多く囲い込んでいるので、ビッグモーターの板金塗装部門は、競争環境上、厳しい戦いを強いられていたのではないかと想像します。
このような状況下では、経営者が業績重視の経営に向かうことがよくあります。ときには極端なコスト削減や受注拡大を目指すといった方向性を示すこともあります。その結果、各部門はより高い利益目標を設定し、企業全体が売上至上主義、拡大路線へと進むことになります。ビッグモーターの板金塗装部門では、アットと呼ばれる車両修理1台あたりの単価を14万円前後と設定していたそうです。立てた目標を達成できないような部門・個人に対しては、パワハラめいた圧力がかけられることもあったようです。目標達成した者が偉く、未達の者はゴミ扱いというように、社内で分断も進んでいきます。
そうした圧力が臨界点を超えると、不正をしてでも圧力から逃れたいという気持ちが沸いてくることもあるでしょう。こうして、企業は不正に手を染めていくというのが、よくある王道パターンだと思います。
しかし、一方で、業績を上げるというプレッシャー自体は、全ての企業や現場で当然に感じているものです。問題の本質は、そのプレッシャーが存在する中で、なぜ特定の企業や現場が品質不正に走るのかという点にあるでしょう。それはプレッシャーとともに、個々の意識やスキル、社内コミュニケーション、組織風土や組織構造、そして社内ルールや監督機能の問題などが絡み合い、最終的に不正に至る結果を生むと考えられます。
企業不祥事に対する経営者の責任
こうした企業不祥事に対して、経営者が「私は知らなかった」と言い訳をすることは可能でしょうか。
取締役は会社法や民法により、会社に対して「善管注意義務」を負っています。善管注意義務とは、簡単に言えば、経営者が直接的に不正を指示しなかったとしても、不正が行われる可能性に対する監視や監督、あるいは不正を防止する体制を整える責任を負っているということです。つまり、「知らなかった」は責任を免れる言い訳にはなりません。
個人が犯した横領のような事件とは異なり、ビッグモーターのケースでは、会社の制度や体制が未整備、あるいは機能不全であったと調査報告書でも指摘されています。外部環境の厳しさを言い訳にするかもしれませんが、ビッグモーターほどの規模の会社であれば、経営環境の厳しい自動車整備業界よりも成長が期待できる分野で新規事業開発をするという戦略上の選択肢も、経営者ならば検討できるはずです。こうした点を考えると、経営者の責任も一定程度は問われる可能性はじゅうぶんにありえると思います。