おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
内部監査レベルアップ講座、今回は内部コミュニケーションについて解説します。不良の発生や法令違反など、不適合の原因を辿っていくと、かなりの確率で内部コミュニケーションの不具合にたどり着くのではないかと思います。不適合の根本原因筆頭候補ともいえる内部コミュニケーションについて、内部監査でどうやって改善の機会を見つけるかを解説をします。第2回目は「内部コミュニケーション」の要求事項とプロセスを説明します。
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【内部監査レベルアップ講座】内部コミュニケーションを内部監査する(1)
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内部コミュニケーションに関するISO9001とISO14001の要求事項
ではここで、内部コミュニケーションに関する要求事項にはどういうものがあるのか、ISO9001とISO14001の規格を見てみましょう。
まず7.4 コミュニケーションですが、これは外部・内部のコミュニケーションについての全体的な要求事項ですね。基本的にはISO9001も14001も、どんな内部・外部のコミュニケーションをするかを決めなさい、と言っています。ですので、ミーティングをいつやるか、誰が参加するか、みたいなことを明確にするという感じですね。ISO9001とISO14001で違うのは、9001は「内部及び外部のコミュニケーションを決めなさい」と言っているのに対して、14001では「内部及び外部のコミュニケーションに必要なプロセスを確立、実施、維持しなさい」と言っています。
この表を見てもらうとわかりますが、ISO14001のほうがコミュニケーションに関する要求が全体的にも多くなっています。これは、環境マネジメントシステムのほうが、利害関係者が多様で、しかもより大きなリスクが想定されるからですね。ISO14001では、コミュニケーションのプロセスを確立しなさいと言っていますから、コミュニケーションに関する基本的なルールや仕組みなどを、ISO9001以上に明確にしておく必要があるでしょう。
その他、個別の箇条で、コミュニケーションが要求されているところをざっと見ていきますが、品質にも環境にも共通しているのが、マネジメントシステムに取り組む重要性を伝えたり、品質方針や環境方針を伝えたり、役割・責任・権限を伝えたり、品質目標・環境目標を伝えたりすることですね。このあたりは誰が誰に伝えるかというと、一般的には経営者や管理職などから、現場第一線の従業員に伝えるというものでしょうね。したがってこれらの内部コミュニケーションに責任があるのは、ふつうは経営者や管理職でしょうね。ISO14001では、それに加えて、環境側面の伝達や、緊急事態への準備・対応への情報の伝達、環境パフォーマンスの伝達なども要求されています。このあたりは規格要求事項ですから、こうしたコミュニケーションのプロセスがあるか、実際にやっているかどうかを内部監査で確認する必要があるでしょう。
内部コミュニケーションのプロセス例
さきほどもISO14001を例に挙げて話しましたが、内部コミュニケーションもプロセスで考えると、内部監査の着眼点がわかりやすくなります。内部コミュニケーションのプロセスとは、一般的にどういうものでしょうか。
最初の段階として、情報特定というステップがあります。これは、どんな情報を内部コミュニケーションで伝達・報告するのかを決めることです。例えば規格要求事項にもなっていましたが、品質目標や環境目標は、内部で伝達する必要がある情報ですね。
続いてのステップは、伝達方法の特定です。いつ、誰が、誰に対して、どういう媒体や方法で伝達・報告するか決めることです。品質目標や環境目標だと、年度始めの全体ミーティングで社長から全社員に口頭で伝達する、というような具合でしょうか。もちろん伝達方法は一つだけとは限りません。印刷して冊子にして配布するという伝達の方法もありますし、全体ミーティングで話した後、各部門で部門長から従業員に対して説明をするという方法もあるでしょうね。
そして次のステップとして、決めたとおりに情報伝達・報告するということですね。
そして4つめのステップですが、情報の受信者が情報を受け取ったか、理解したか、どんな意見を持ったか等を監視・測定・分析・評価するというステップです。これはめちゃくちゃ重要です。伝わったのかどうかというのを確認せずにほったらかしにしちゃダメということですが、多くの会社ではこのステップが不十分なので、言いっ放しになっています。具体的にはどういうやり方があるかというと、監視・測定の方法としては、品質目標の伝え方はどうだった?と、現場の従業員にヒアリングをするとか、アンケートを実施するということでしょうか。直属の上司が、部下の顔色を見て、理解してそうかどうかを見る、というのも、まあ悪くはないでしょう。
そのような監視・測定をすると、情報の受け手からフィードバックが得られます。フィードバックが得られれば、内部コミュニケーションの改善の余地が見えてくるので、必要に応じて最初のステップに戻り、コミュニケーションの見直しをするということに繋がります。トラブルが置きてから「いや、そういうのは聞いてなかった」とか「聞いたけれども忘れていた」と言われても遅いですよね。なので、コミュニケーションに対する監視・測定・分析・評価はとても重要です。
これに加えて、内部コミュニケーションのサブのプロセスとして、リーダーシップや文書化があります。リーダーシップには、トップ自らコミュニケーションを実践することや、トップが管理職のコミュニケーションを支援すること、そしてトップが、コミュニケーションに必要なツール類を導入・整備することなどがあります。そして文書化ですが、必要に応じてコミュニケーション内容を文書化します。例えば品質目標や環境目標はISOの規格としても文書化の要求がありますが、こうしたものは文書化されてないと、忘れてしまったり、間違えて覚えてしまったりしますよね。そうならないように、必要なものを文書化します。
前回の例でも触れましたが、上司がなんでもかんでも口頭でコミュニケーションするのがいいわけではなく、場合によっては失敗事例や過去トラを文書やデータで参照できるようなしくみを整えることも有効でしょうね。コミュニケーションプロセスとは、概ねこういうイメージで理解すればいいかな、と思います。