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『プロジェクトX』復活で改めて考える「ヤミ研はなぜ現在ではコンプライアンス的に無理なのか」

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

こないだ、NHKの「プロジェクトX」が18年ぶりに復活するというニュースを見ました。個人的に「プロジェクトX」といえばヤミ研を連想します。「現代ではコンプライアンス上、もうヤミ研は無理」というのは、しばしば耳にすることですが、ヤミ研は何のコンプライアンスに違反しているんでしょうか。

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NHKの「プロジェクトX」が18年ぶりに復活するが…

サンスポのこの記事によると、「プロジェクトX 挑戦者たち」が18年ぶりに復活するんだそうです。「プロジェクトX」といえば、2000年から2005年まで放送されたドキュメンタリー番組なんですが、個人的にはそんなに好きな番組じゃないんですよね。プロジェクトを成し遂げようとする主人公にいろいろ邪魔が入るが、信念を貫き通してプロジェクトを成功させる、というお決まりのパターンに飽きた、というのもあるんですけど、「高度成長期ならまだしも、現代ではこれはちょっと……」っていうエピソードが受け入れがたいんですよね。その代表的なものが「ヤミ研」です。

「ヤミ研」とは、会社の承認を得ず、秘密裏に製品開発を進めることなんですが、有名なところでは(プロジェクトXでも取り上げられた)、カシオのデジカメQV-10開発があります(Wikiによると、この製品の開発記はNHKのプロジェクトXの第90回でも取り上げられたそうです)。ヤミ研で生まれた有名どころの製品といえば、プラズマテレビや青色LEDなんかがあります。

壁にぶつかりながらも、こっそり開発を進めて、それで革新的な製品ができたというのは、テレビで消費をするストーリーとしては面白いですけど、2020年代の令和の時代は、もうそういう時代ではないですからね。

「もうそういう時代ではない」というのは、具体的にはどういう意味でしょうか。以下に、ヤミ研がなぜ現在のコンプライアンス的に無理なのか、考察してみたいと思います。

ヤミ研はなぜ現在ではコンプライアンス的に無理なのか

ヤミ研は高度成長期の、若く猛々しかった日本経済の光である反面、ヤミ研にはリスクもあります。プロジェクトXでは、ヤミ研の成功例しか紹介されませんでしたが、ヤミ研をやって問題になって処分されたり、会社にダメージを与えた事例も、成功事例以上にあったはずなんですよね。そうした事例は明るみにでませんけど。

ヤミ研には、具体的にどういうリスクがあるのでしょうか。考えられるものを列記してみました。

知的財産権の問題

業務の一環として発明されたものは「職務発明」として、特許を受ける権利は原則、会社に帰属します。しかし業務外に開発された製品や技術については、後に権利を巡るトラブルが発生する可能性があります。日亜化学の青色LED訴訟がこれに近い話でした。

発明者の中村氏は、会社から青色発光ダイオードの研究を中止するように業務命令を受けたそうですがが、これを無視して青色発光ダイオードの研究を継続しました(このあたりが「ヤミ研」に相当)。中村氏は「業務命令に反して行なった研究から生み出された発明であるので、これは職務発明ではない(特許は自分に帰属する)と主張しました。最終的には、裁判所が「勤務時間中に、被告会社の施設内において、被告会社の設備を用い、また,被告会社従業員である補助者の労力等をも用いて,本件発明を完成したのであるから、これは職務発明だ」という判断をしました。が、やっぱり揉めますよね。

情報セキュリティ上の問題

ヤミ研には情報の流出リスクもあります。非公式な活動であるため、会社の情報管理体制が適切に機能しない場合があります。例えば、開発内容は営業秘密として管理されないと、不正競争防止法で保護されません。ヤミ研に関する情報が「営業秘密」になるかどうかは、議論があると思います。また、ヤミ研での開発にあたって関係する仕入先や委託先とは、会社間のNDAも締結できないんじゃないでしょうかね。

労働安全衛生上の問題

労働時間の問題もあるでしょう。就業時間後にヤミで行われるわけですから、従業員の健康や労働時間の管理に関する法律やルールに反する可能性があります。もしヤミ研をした労働者が、過労死するようなことがあれば、責任の所在をめぐり、議論になるのは間違いありません。

過労死まで至らずとも、ケガや病気になったときに、ヤミ研では労災扱いとなるでしょうか。ヤミ研はおそらく、私的行為です。私的行為には業務起因性は認められないでしょうから、労災認定もされません。

業務の非効率を招く問題

ヤミ研では一般的に、会社のリソースを使って開発行為を行うのですが、そのために本業が非効率になる恐れもあります。公式の業務とは別に「ヤミ研」が行われると、会社のリソースが二重に使われることになるためです。例えば、ヤミ研に熱心な社員は、本業をおろそかにするかもしれませんし、ヤミ研で使うために設備を専有してしまうと、本業での作業が滞るおそれもあります。

株主から追求を受ける可能性も

高度成長期のときは、株式は相互持ち合いの時代でしたから、ヤミ研をしてもそれほど株主の追求はなかったかもしれません。しかし近年では、アクティビストに代表される「モノ言う株主」が力を持っていますので、上記のリスクに対して追求をする可能性もあります。アクティビストは企業価値の向上を最優先しますから、海の物とも山の物ともつかぬヤミ研が、手放しで歓迎されるとは思えません。

Googleの20%ルールや3Mの15%プロジェクトのような「サイドプロジェクト」は、いわばヤミ研を会社の正規の制度として採用したものですが、ヤミ研を現代で実践しようとすれば、20%ルールのようなことを制度化し、会社の公式な活動として認めないといけないでしょう。(とはいえ、サイドプロジェクトも、オーストラリアのAtlassian社のように失敗に終わることもありえますが)

新しいプロジェクトXに期待すること

平成から令和にかけての日本経済は、華々しい成果もなくはないですが、失敗プロジェクトも数々ありました(MRJやシャープの液晶テレビ事業など)。こうしたプロジェクトから「失敗の本質」を導き出すような内容を期待したいですね。巨額の投資を行って失敗した事例なんて、そうそうお目にかかれるものではありません。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」ではありませんが、失敗から学べることは数多くあるはずですので。

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