おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001:2015 箇条8.4では「供給者評価表」的なものを作って運用することが一般的です。しかし規格は本当にそれを求めているか?を考察します。3回目の今回は、リスクに応じた供給者管理の具体例の続きを説明します。
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ISO9001:2015 8.4における「供給者評価」では何が求められているか&具体的運用例の考察(1)
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ISO9001:2015 8.4における「供給者評価」では何が求められているか&具体的運用例の考察(2)
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「リスクが高い」場合は、何をすればよいのか?
では「リスクが高い」場合は、何をすればよいのでしょうか。当然、リスクが低い場合よりも、詳細で厳密な評価をしないといけないでしょうね。
具体的には、供給者の能力、過去の実績、市場での評判、管理体制の強固さなどを考慮に入れた評価を「供給者評価表」などを用いて行います。その上で、定期的なパフォーマンスの監視(不良率や納期遵守率、これらの供給者起因による我が社の顧客のクレーム件数などのチェック)を実施し、リスクを最小限に抑えるために必要な情報を収集します。
さらには、リスクが高いことを軽減するための具体的な処置を実施します。リスクの高い原因にもよりますが、代わりの仕入先を探すとか、リスクの高い製品やサービスを調達しなくても済むように設計を見直すとかでしょうかね。
そうした高リスクの製品・サービスを受け入れる場合には具体的な検査、テスト手順、品質基準などを決めておき、受入検査を徹底します。さらには供給者とのコミュニケーションを強化し、期待される品質基準や納期などの要件を明確に伝える必要もあるでしょう。
「顧客から指定された供給者」や「単一供給者(sole supplier)」はどう再評価するか
リスクが高い・低いだけでスパッと判断できない供給者もあります。例えば「顧客から指定された供給者」や「単一供給者(sole supplier)」ですね。
「顧客から指定された供給者」の場合はどうでしょうか。こうした供給者は「供給者評価表」で評価や再評価をしようがしまいが、選択の余地がないので、評価や再評価をするのは意味がないように思えますね。これもあくまでもリスク分析の結果次第という前提ですが、例えば、顧客が指定した供給者は、他の供給者と同じ一律の供給者評価シートを使って評価するのではなく、納入実績などのパフォーマンスを見て評価・再評価をし、パフォーマンス悪化の兆しがあれば、供給者だけではなく、顧客に相談する、というような運用ルールのほうが、現実的だと思います。
「単一供給者(sole supplier)」はどうでしょうか。「単一供給者(sole supplier)」とは、その製品・サービスを供給可能な唯一の供給者であることを指します。市場に他に選択肢が存在しないか、あってもかなり限られるというケースです。そうした「単一供給者(sole supplier)」は供給者でありながら、調達側よりも力関係が強いことがしばしばあります。こういうところも「供給者評価表」で評価や再評価をしようがしまいが、選択の余地がないといえます。
だからといって、「単一供給者(sole supplier)」は何もしないわけにはいきません。基本的には「単一供給者(sole supplier)」であること自体がリスクが高いと言えます(代わりとなる仕入れルートがないので、トラブルの発生可能性が高いから)。したがって、これも一例ですが、納入実績などのパフォーマンスを見て評価・再評価をしつつも、通常の供給者よりもコミュニケーションを強化する必要があるでしょう。場合によっては、トップ自らが供給者とコミュニケーションをし、長期的で安定的なビジネスの関係を、トップレベルで作る必要もあるかもしれません。
それでもまだリスクはあるので、例えば、供給の遅れや問題が発生した際の影響を最小限に抑えるために、自社の内部プロセスを見直すとか、この供給者から調達しなくてもいいように製品の設計を見直すとかの検討も選択肢としてはあります。さらには粘り強く、海外にまで手を広げて、他の潜在的な供給者を探索し続けることも考えられる手立てです。
以上のように、一律に供給者を評価せず、リスクに応じて個別に評価し、それぞれの付き合い方を決めるというのは、結構骨の折れる運用です。こうした運用の手間を考えると、一律に供給者を◯✕で評価してしまいたくなる誘惑に駆られるのも、ありえない話ではないなと思えてきます。(運用の手間は確かに楽ですが、リスク低減に繋がらないので意味の薄い運用なんですけどね)
箇条8.4.1考察における最後のまとめ
「供給者」といってもいろいろな種類があります。リスクの高い供給者、リスクの低い供給者、顧客から指定された供給者、単一供給者、戦略的パートナーなどの種類です。結局のところ、どういう供給者が、どの種類に属するかの基準を決め、その種類に応じた(≒リスクを出来るだけ低減・回避できる)付き合い方を個々に決める必要があるでしょう。そして、そのすべての過程において適切な記録を保持することも必要です。これは、組織が行った判断や対応の適切さを後から検証できるようにするためであり、また、将来的な意思決定のための参考情報とするためです。
以上が、箇条8.4.1の求めていることの本質ではないか、とぼくは思っています。