おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
性格の悪い人が、仕事のパフォーマンスにどのような影響を与えるかという研究があるんですって!めちゃくちゃ面白くないですか?その研究結果をちょびっとだけおすそ分けします。
スポンサーリンク
小塩真司「『性格が悪い』とはどういうことか――ダークサイドの心理学」
いま読んでいるのがこの本なんですけど、めちゃくちゃ面白いんですよ。今日はこの本からほんの一部、性格の悪さと仕事のパフォーマンスについて触れた部分をちょっとだけ紹介します。
ダークな性格特性
私たちはしばしば、自信に満ち、常識に縛られない行動力や決断力がある人を、職場における「有能な人」だと思うことがあります。しかし、これらの特性があるからといって、その人物が本当に優れた人物であるとは限りませんよね。
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学のデル・ポールハス教授が提唱した「ダーク・トライアド」という性格特性が、これに対する警鐘を鳴らしています。ダーク・トライアドとは、サディズム、ナルシシズム、マキャベリズムという3つのダークな性格特性を指します。さらに、これにサイコパシーを加えたものを「ダーク・テトラッド」と呼びます。
まず、これらの性格特性について簡単に説明します。
- サディズム:暴力的で他人に苦痛を与えることに喜びを感じる性質。
- ナルシシズム:自分が優れていて特別であると信じる自己愛の強い性質。
- マキャベリズム:目的のためには手段を選ばない冷酷な性質。
- サイコパシー:他人を思いやることができず、罪悪感や共感を感じない性質。
これらの性格特性を持つ人々は、衝動的で競争心が強く、常識にとらわれないため、しばしば強いリーダーシップを持つ人物として誤認されることがあります。しかし、彼らがリーダーなどの要職に抜擢されると、職場に深刻な問題を引き起こす可能性が高いのです。
ダークな性格特性が職場のパフォーマンスに与える影響
スペインの心理学者フェルナンデス・デル・リオらが行った研究では、ダーク・テトラッドの性格特性が職場のパフォーマンスに与える影響を調査しました。この研究では、次の3つのパフォーマンス指標との関連性が検討されました。
- 課題パフォーマンス:職務内容に直接関連する行動。
- 文脈的パフォーマンス:職務に付随する行動(チームワークなど)。
- 非生産的職務行動:職場での非協力的な行動(頻繁な遅刻や休み、不正行為など)。
研究結果は次の通りです。
- ナルシシズム:課題パフォーマンス、文脈的パフォーマンス、非生産的職務行動の全てに関連がありました。つまり、ナルシシズムを持つ人は高い課題パフォーマンスを示す一方で、チームワークの能力も高く、同時に非生産的な行動も多く見られるということです。
- マキャベリズム:課題パフォーマンスが高い一方で、文脈的パフォーマンスには関連が見られませんでした。
- サイコパシーとサディズム:これらの特性を持つ人は課題パフォーマンスが低く、特にサディズムは非生産的職務行動が多いことに関連していました。
これを見ると「なんだ、ダークな性格特性の人も、問題は起こすが結構有能じゃないか」と思えますが、他の研究結果もみてみましょう。アメリカの産業組織心理学者オ・ボイルらは、ダーク・トライアドと非生産的職務行動との関連について、200以上の研究結果をメタ分析しました。その結果、サディズム、ナルシシズム、サイコパシーはあらゆる種類の非生産的職務行動と関連が見られた一方で、職業上のパフォーマンス(課題パフォーマンスなど)にはほとんど関連が見られなかったようです。
ダークな性格特性を持つ人が成果を出すとは限らない
これらの研究結果からわかることは、ダーク・トライアドやダーク・テトラッドの性格特性を持つ人々は、一見するとリーダーシップのある有能な人に見えることがあるものの、そうした特性と成果との関連は不透明であり、しかも職場の問題を引き起こす可能性が高いということですね。
近年の組織心理学やマネジメントの研究では、心理的安全性が職場のパフォーマンスに大きな影響を与えるという考え方が広く受け入れられています。心理的安全性とは、チームメンバーが安心して自分の意見やアイデアを表明できる環境を指します。この環境が整っていると、従業員はリスクを取ることを恐れず、創造的な問題解決が促進され、全体のパフォーマンスが向上する、と言われています。
ダーク・トライアドやダーク・テトラッドの性格特性を持つリーダーは、心理的安全性とは対極に位置しますよね。みんなを引っ張る、力強い、常識にとらわれない決断力のある人は、ぼくのような昭和生まれの人間にとっては魅力的に映りますが、令和の現代では心理的安全性を高めるリーダーシップが求められています。具体的には共感力や協力性、謙虚さ、透明性などの特性が、リーダー選考の際などには重要なんですよね。
ぼくもこういう仕事をしていると、たまに経営者の方から「今村さん、もっと厳しくやってください」と言われることがありますが、厳しくやらないと成果が出ないというのがそもそも思い込みであるということに注意しないといけない、ということを、こうした研究結果から改めて思い知らされたように思います。