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デミング博士「マネジメントのための14原則」再訪(10)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

デミング博士「マネジメントのための14原則」を読み直しています。ただ読むだけではなく、2020年代の現代の考え方や最近の経営理論と比べてみたりもしたいと思います。第10原則です。

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デミング博士「マネジメントのための14原則」の第10原則

⑩「不良ゼロをめざせ」とか「一段上のレベルの生産性を達成せよ」と社員らに求めるスローガンや激励を廃止せよ。こうしたお題目は対立的な人間関係をもたらすだけだ。品質が悪く生産性が低いのはなぜか。原因のほとんどは「システム」に帰すべきものだ。つまり、個々の社員の能力の及ばぬところに真の原因があるということだ。

デミング博士は、スローガンとかポスターなどは「人が仕事をよりうまくやるうえで、誰の助けにもならない」と言っているのですが、なかなか過激な意見ですよね。こう言われて「はいそうですか」と即座に納得できる経営者はいないでしょうね。

スローガンは経営者の思い込みからきている

なぜスローガンがダメか?というと、スローガンは「悪いのは従業員だ」と、経営者が思い込んでいるからだとデミング博士はいいます。品質や生産性を阻害する要因のほとんどは「システム自体」(つまりマネジメントの責任)に起因しているというのが博士の考え方ですね。

何が品質や生産性を阻害する要因なのかを統計的手法を用いて明らかにするのがマネジメントの責任なのに、そういうこともやらずに一方的に現場の責任にすると、現場は「そんなのは不可能だ」と思い、不満と怒りを生むだけです。

システム自体の問題とは具体的にどういうものか

システム自体の問題とは具体的にどういうものでしょうか。第10原則の中で、デミング博士は「例えば、サプライヤーを絞り込んでよりよい品質のものが入ってくるようにする(筆者注:第4原則参照)、保全をいままで以上にしっかりやる、頑張って働くのではなく賢く働くことによって品質と生産性を高めるために、もっと良い訓練や統計的手法の助けを提供し、もっと良い監督を提供するように努める(監督者を正しく訓練する)、といったことだ」と述べています。

これだけではちょっとわかりづらいと思うので、もう少し具体的な例を示しましょう。以下のようなものがシステム上の問題です。

  • 不適切なプロセス設計
    • 製品やサービスの生産・提供プロセスが効率的でなかったり、不合理な手順が含まれていたりすると、不良品が生じやすくなり、生産性が低下します。
  • 不十分なリソース
    • 必要な設備や資材、ツールが不足している場合、社員がどれだけ努力しても高い品質や生産性を維持することは困難です。
  • 不適切な目標設定
    • 非現実的な目標やスローガンを掲げることは、プレッシャーを生むだけでなく、達成不可能な目標を無理に追求する過程で品質が犠牲になる可能性があります。
  • コミュニケーションの欠如
    • 組織内の部門間での情報共有が不足していると、業務がスムーズに進まなくなり、ミスが発生しやすくなります。
  • 従業員の教育や訓練の不足
    • 必要なスキルや知識を従業員が持っていない場合、どれだけ努力しても高いパフォーマンスを発揮することは難しくなります。
  • 管理の欠陥
    • リーダーシップや管理者の意思決定が適切でない場合、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

デミング博士は、このようなシステム全体の問題が潜んでいることに目を向けず、ただ一方的に従業員に対してプレッシャーを与えることを問題視しているのです。

一方的に現場の責任にするのは、マネジメントが現場の状況やシステムの問題を理解していないことから生じる

これまでのデミング博士の主張を総合的に見ると、マネジメントが品質や生産性の問題を一方的に現場の責任にするのは、マネジメントが現場の状況やシステムの問題を理解していないことから生じるとデミング博士が考えているのだろうと思います。

このようなマネジメントの誤解は、「プリンシパル・エージェント理論」でも説明が可能です。

「プリンシパル・エージェント理論」というのは、簡単に言うと、仕事を頼む人(プリンシパル)と、その仕事をする人(エージェント)の間で起きる問題を説明するための考え方です。

たとえば、社長(プリンシパル)が従業員(エージェント)に「不良を減らそうよ」とお願いしたとします。でも社長(プリンシパル)が従業員(エージェント)では、お互いの考えや知っていることが違うので、時々問題が起きることがあります。

例えば、社長(プリンシパル)は会社全体を見ているけど、従業員(エージェント)は会社の一部しか見ていないことがあります。だから社長は「不良をもっとなくせるはずだ」と思っていても、従業員は「設備が壊れている」とか「現場の負荷を考えずに仕事が舞い込んでくる」と認識しているかもしれません。でも社長はそのことを知らないので、「従業員が頑張っていない」と誤解してしまうことがあります。

要はマネジメントが現場の実態を理解するほかはないということなのですが、具体的にどういう方法でマネジメントは現場の実態を理解すればよいでしょうか。

一つは現場の管理職を通じて報告してもらうことがありますが、業務監査というかたちで(調査能力のある人に)社内の確認をするという方法も考えられます。中小企業だと、経営者自らが1on1ミーティングを実施することもあるでしょうし、外部の人(社外取締役やコンサルタント)を介して情報を得るという方法もあります。(これはぼくの仕事を正当化するようですけど、直接の利害関係のない外部の人だから、正直に話しやすいという面もあるんですよ)

ただ、こうした方法にはお金も時間もかかるので、全部を完璧に見張るのは難しいです。どの方法が最も我が社に適しているかは、試行錯誤するしかありません。これも継続的改善の一つなんでしょうけど。

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