おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今、国会に提出されている「AI法案」について、「何のため法律で何が書かれているか」や「企業や国民に何が求められるか」といった疑問に答えるよう解説します。
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ご注意
注意ポイント
AI法案は、この記事の執筆時点(2025/3/27)で審議中です。国会動向次第で 内容が修正になる可能性があります
AI法案の構成
AI法案の全体像から説明したいと思いますが、この法律は、AIの研究開発や活用について、国がどう進めていくかの「基本的な考え方や仕組み」をまとめたもので、4つの章から成り立っています。
この法律では、大まかな点で何をやるかという方向性は示されていますが、「具体的にどうやるか」「どこまでやるか」といった具体的な手続きまでは書かれていません。義務がある条文も一部にとどまっていて、法律というよりは政策ビジョンのように感じます。
今後、政令が出て、より詳細なルールが見えてくると思われますが、この法律自体には罰則や直接的な制裁についての記載はありません。では、これらの条文を具体的に見ていきましょう。
AI法案 第1条(目的)
第1条では、この法律が「4つの点」を定めている、と言っています。
1つ目はAIに関する『基本理念』、2つ目は国が『基本計画』を作ること、3つ目は『その他の基本施策』を考えること、そして4つ目がAIを進めるための『人工知能戦略本部』というチームを作ることです。
この4点を実行し、AIの研究や開発、そして活用を進めていくことで、最終的には、『国民の生活をもっと良くする』こと、そして『日本の経済を元気にする』ことを目指しています。AIを社会・経済に資する形で発展させることが主たる目的のように聞こえます。反面、EUの法律に書いているような、人の基本的な権利の保護や、AIのリスクに対処するということは、ここでは述べられていませんね。
AI法案 第2条(定義)
つづいて第2条です。
ここでは、人工知能関連技術についての定義が書かれています。人工知能関連技術の意味は、大きく2つに分けられていて、一つは人間の知的な能力(つまり認知する・推し量る・判断すること)の代わりとなる技術であって、かつ、そのAIを使って、情報を処理して結果を出す仕組み(システム)に関する技術だと定義されています。
要はAIとはなにかというのを定義しているのですが、大まかに一括で定義をしているので、ちょっと具体的にはイメージが湧きにくいかもしれませんね。
なお、EU AI規制法では、AIシステムや汎用AI、生体認証分類システムなど、細かい技術についても個別に区分・定義があります。EUの定義と比べても、かなり大まかであることがわかります。
AI法案 第3条(基本理念)
第3条では、基本理念を定めています。基本理念とは、この法律に関与する全ての関係者…つまり国、自治体、研究機関、企業、国民が、AIに関して踏まえるべき大まかな方向性のことです。この方向性は、3つの法律の基本理念を踏まえて定められるとされています。
一つは科学技術・イノベーション基本法の基本理念です。簡単に言うと、調和的で持続可能なイノベーション創出を目指そう、というものですね。2つめはデジタル社会形成基本法の基本理念です。これは「誰一人取り残さないデジタル社会を実現しよう」というもの。そして3つめとして、この法律で定める4つの基本理念を踏まえて、方向性を決めるということですね。
この法律で定める基本理念は、第3条の第2項から第5項までに書かれており、概要はここに書いているとおりです。全体的には、AIは経済発展のために使うという意味合いが強く感じられます。ただし3点目の「適正な研究開発・活用のため透明性の確保等」では、AIを使うことに、国民の安心や権利に対するリスクがあることにも触れています。
次回に続きます。