おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
EUのAI規制法である"EU AI Act"に関して、5/27時点での最新情報を、かいつまんでお伝えします。(情報源は、The EU AI Act Newsletter #78です)。
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AIの定義や禁止される使い方についての関係者報告書
ヨーロッパ委員会は、CEPS(ヨーロッパ政策研究センター)がまとめた、EU AIオフィスのための報告書を公開しました。これはAI法(AI Act)に関するルールについて行われた2回の意見募集(パブリック・コメント)の結果を分析したものです。
この意見募集では、AIシステムの定義や、使ってはいけないAIのやり方について議論がされました。
報告書では、全部で88個の質問(9つの分野にわたる)についての回答が分析されました。全部で400件近い回答があり、そのうち企業や業界からの回答が47.2%と最も多く、一般の人の参加は5.74%と少なめでした。
回答者の中には、たとえば「適応性(adaptiveness)」や「自律性(autonomy)」などのむずかしい言葉の定義をもっとはっきりしてほしいという意見もありました。これらの言葉の意味があいまいだと、ふつうのソフトウェアまで間違って規制されてしまうかもしれないと心配する声も出ました。
また、禁止されているAI(例えば以下の3分野)の使い方については、懸念があると報告書では強調されています。
- 感情認識(人の気持ちを読み取るAI)
- 社会的スコア付け(人の行動を点数化するような使い方)
- リアルタイムでの顔認証などの生体識別(たとえば街のカメラでその場で人を特定する)
回答者たちは、「これが禁止」「これはOK」という具体的な例を示してほしいと求めています。
AIリテラシーに関するQ&A(質問と答え)を公開
ヨーロッパ委員会は、「AIリテラシー」についての詳しいQ&A(よくある質問と答え)を公開しました。
2025年2月2日から、AI法の第4条(AIリテラシー)が適用されるようになっていますが、それにより、AIを作る会社や使う会社は、自分たちのスタッフや関係者が十分なAIリテラシーをもっているようにしなければならなくなりました。
どれくらいのAIリテラシーが必要かを決めるときは、その人が持っている技術的な知識、経験、学歴、研修の内容などを考慮しなければなりません。また、AIがどんな場面で、どんな人に向けて使われるかも大事なポイントです。
AIオフィスは、次のような内容を含むガイド(案内)を公開しています:
- AI法と第4条に出てくる言葉の意味
- ルールを守るために必要なこと
- ルール違反があったときにどう対処されるか(取り締まりの方法)
- AIオフィスがAIリテラシーの取り組みをどう進めるか
- その他、関係者が理解を深めるための情報
主任科学顧問はまだ未決定、応募は多数
Euronews(ユーロニュース)の上級記者シンシア・クルート氏によると、ヨーロッパ委員会はまだAIオフィスの「主任科学顧問」を決めていません。すでに多くの応募があったにもかかわらず、まだ選考中とのことです。
このポジションの募集は、昨年(2024年)の11月から12月ごろに開始されたそうですが、2025年8月に予定されている「汎用AI(GPAI)規制の施行」を前に、まだ決定していません。
【筆者注:】主任科学顧問(Lead Scientific Adviser)とは、AIに関する深い専門知識を持ち、科学的な観点から政策や判断にアドバイスをする役割をもつ人。
ヨーロッパ委員会は、この重要なポジションにはできればヨーロッパ出身の人を任命したいと考えているようです。