働き方改革という言葉を報道などで聞く時、それがなにかの制度を新たに作ることや、残業を単に規制することに終始しているのではないかと懸念することがあります。僕の意見としては、働き方改革で必要不可欠なのは「考え方」の改革だと思っています。
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制度を作り、規制をしただけでは変化は起きない
多くの会社には介護・育児休業制度がありますが、実際に男性社員で育児休暇を取得する人の割合は、わずか3%程度なのだそうです。制度はあっても活用ができていないということですよね。もっと馴染み深いところでいうと、有給休暇も同じです。有給休暇は労働者の権利であり、法律で義務付けられていますが、実際は「職場の目」を気にして有給がとれないという人が多くいます。
残業も同様です。残業時間には「時間外労働の限度に関する基準」が定められており、この基準により例えば1か月45時間、1年360時間などの限度が示されています。しかし実態は、従業員が自殺や過労死するほどの長時間残業が行われています。電通社では、女性社員がなくなったことが社会問題化したのは記憶に新しいところです。電通社はその後、残業規制を打ち出しましたが、実際は家に持ち帰ったり、電気を消した暗いオフィスで仕事をした人もいたという報道をみたこともあります。
制度や規制が役に立たないとはいいませんが、これだけでは「働き方改革」には結びつきません。
働き方改革は考え方改革
僕にも身に覚えがあります。20代の頃に働いていた会社では、表向きは「早く帰っていいよ」と言われていました。しかし早く帰ると翌日の朝礼で嫌味を言われることもありました。制度や規制を運用する、人間の考え方を見直さなければ、働き方改革を実現するのは難しいでしょう。
日経アソシエ2017年12月号では「働き方改革」に対する意識調査結果が掲載されていました。「あなたの会社が働き方改革を成功させるには何が必要ですか」という問に対して、77%の人が「管理者・リーダーの意識改革」と答えていました。それに続いて、60%の人が「経営者の意識改革」と答えています。
制度を構築しても、運用するのは人です。その人のもつ「考え方」を変えなければ、本当の働き方改革はできません。
「考え方改革」は何から始めるべきか
僕は「何でも話せる組織づくり」から始めるべきだと思います。
理想の「働き方」は、多様化がすすんでいます。例えば共働き世帯の場合は、配偶者の勤務シフトや残業の多寡などによって、どの程度の勤務時間が適切なのかは異なります。僕の家庭の場合、妻の勤務は残業が多いので、僕は早く帰って家事や育児をする必要が、他の男性よりも大きいです。しかし同じ子育て中の従業員でも「子どもが熱を出したときには早退できるだけでよい人」や「朝の出勤だけ柔軟になればよい人」など、いろんなニーズがあるはずです。
したがって「標準的な働き方」というものは、もはや定めるのが難しいのです。それゆえに、誰がどのような働き方のニーズを持っているのかということを、正確に把握し、個別対応をするというのが最も柔軟な方法なはずです。そしてそれぞれの従業員のニーズを正確に把握するには、そのニーズをためらいなく会社に対して話せる文化でなければなりません。
どんな要望を話しても――それが会社として実現できるかどうかは別として――批判されない、否定されない、笑われないという組織を作ることや、現場の声が確実に経営層へ届くという組織を作ることが、働き方改革のベースとして必要不可欠なのです。